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幻想の器  作者: 夢物語
8/59

第七器 生徒と制御

「ここがアメリカかぁ」



夜詩よし達はアメリカに到着した。



「みっともないからでかい声を出すな」



「なっ!初めての海外なんだから良いだろ!」



「ま、まぁまぁ。迎えが来てる筈なんだけど…」



ゆうー!」



ブロンドの女性が大声を出しながら、夜詩よし達に駆け寄る。



「キャロル!」



「久しぶりね!ゆうが帰ってくるって聞いて、飛んできたのよ!」



「ありがとう。私も会いたかった!」



「キャロル、早く会いたい気持ちは分かるが、僕を置いていくなよ」



寝癖だらけで白衣を着た男が、頭を掻きながら現れた。



「ごめんなさい、ロバート。ゆうに会えなくて寂しかったんだもの。

刀磨とうまも久しぶり!あら?あなた…ゆうの彼氏!」



「へ?いや、俺は違います!」



「そうよ!彼氏じゃなくて、新しい仲間よ!」



「知ってるわよ!冗談はこのくらいで、車までいきましょう 」



「はぁ(冗談だったのか…)」



夜詩よしは苦笑いを浮かべ、荷物を持って付いていく。



「俺は別行動だ。じゃあな」



「あ!…本当に刀磨とうまはせっかちね」



「キャロルに疲れたんじゃないのかい?」



「ロバート、どういう意味?」



「車へ急ごう!」



「ちょっとロバート!待ちなさい!」



そんな二人を見ながら苦笑いを浮かべる夜詩よしに、ゆうが声をかけた。



「ま、まぁ、ちょっとテンションは高いけどいい人達だから。いきましょう」



「う、うん」



夜詩よしゆうはロバート達を追いかけ、外に停めてある車に乗り込んだ。

車の中でも、ロバートとキャロルのテンションは下がらず、夜詩よしは適当に相づちを打ちながら、窓の外を見ていた。

しばらくすると、広い墓地の前で車が停まる。



「着いたよ」



「え?お墓…ですよね?」



「そっちは緊急用、あの教会が目的地だよ」



ロバートが指差した方向には小さな教会が寂しく建っている。



「(緊急用ってなんなんだ…)は、はぁ」



夜詩よし達は、教会の中へと入っていく。

教会の中は、マリア像と聖書台に長椅子が並ぶごく普通の姿だった。



「ここは何ですか?」



「秘密基地の入り口さ!」



ロバートがそう言って、マリア像の足元を押すと聖書台が沈み、地下へ続く階段が現れる。



「スパイ映画みたいだな」



「さあ、こっちだよ」



四人は階段を下り、細長い通路を進んで行くと、重厚な扉が進路を塞ぐ。



「認識番号1855623、ロバート・タイラー」



ロバートは扉に手を当て、そう言うと、ゆっくり扉が開く。

扉の先には、一つの街がある位に、沢山の建物と人がいた。



「すごい…」



「すごいだろ?ここが我らフィラルの研究地下都市、アルガードだ!」



「今日からゆう夜詩よしはここで暮らすのよ。ゆうは久しぶりよね」



「ええ、懐かしい」



「先ずは、荷物を寮に預けようか」



「寮?」



「そうさ!夜詩よしはアルガードにある訓練学校に入ってもらう」



「訓練学校?」



「僕達みたいに能力者イディルではない人間は入れない、能力者イディル専門の学校さ!

能力の使い方、基本となるエナの制御に強化。後は普通の学業もするんだ」



「未熟な俺にはぴったりか」



「確かに君は未熟だけど、実践経験もあるし、あの凶也きょうやを倒したんだ!すぐ一人前になれるさ!」



凶也きょうや…」



「ちょっとロバート!」



「あ、ごめん…」



「大丈夫です!俺は前に進まないと!」



「そうか。あ、そうそう!君に会いたいって子がいるんだよ」



「俺に?」



夜詩よし達が大きな建物の前に着くと扉が開き、人が飛び出してきた。



「お兄ちゃん!」



「アリス!」



アリスに飛び付かれ、夜詩よしは尻餅をつく。



「どうしてここに?」



「私もこの寮に住んでるの!」



「アリスは正式にフィラルの一員になったんだよ。

1から学んで、任務にも出てもらう」



「そうか。アリスが元気でよかった」



「お兄ちゃんのお陰だよ!ここの人はみんな温かいんだ。ここにこれてよかった」



「感動の再会もいいけど、先に荷物を置きに行きましょう!

あんまりベタベタしてると、ゆうが拗ねるわよ!」



「ちょっ!なんで私が拗ねるのよ!キャロル待てー!」



逃げるキャロルを追いかけるゆうを見て、笑いながら夜詩よし達も寮の中へ入り、それぞれの部屋に荷物を置いた。

夜詩よしが部屋を出ようとした時、ロバートが真剣な表情で話掛ける。



夜詩よし、後で君の体を調べたいんだがいいかな?」



「え?構わないですけど…」



「ありがとう。それと、この都市…いや、フィラル全体に君の事は知れ渡っている」



「俺の事?」



「多くの能力者イディルを殺してきた凶也きょうやを倒し、二つの能力を扱う。

珍しく、そして恐れを抱いてる人もいる…もしかしたら、嫌な思いをさせてしまうかも」



「平気です。俺はこの力に感謝してます。周りにどう思われようが、やるべき事をやるだけですから!」



「強いな、君は。何かあったらなんでも相談してくれ!

ゆうの事も相談に乗るよ!あ、アリスもいるんだったね!こりゃ大変だ」



「そんなんじゃないですから!行きますよ」



夜詩よし達は、訓練学校へ見学しに向かう事にした。

訓練学校は大きな校舎と、グラウンドは分厚い壁に囲まれている。



「登校は明日からだ。今日は旅の疲れもあるだろうから、寮で休むのが一番だね!」



一通り見終わり寮へ向かい、夜詩よしとロバートは検査のために途中でゆう達と別れた。

研究所で徹底的に調べられ、終わった頃に夜詩よしは魂が抜けたように項垂れる。



「お疲れ様。検査は終了したから、食事と行きたいんだけど、僕はまだ仕事があって行けそうにないんだ。

地図を渡すから、一人で行ってくれるかい?ここでは無料で食事や買い物が出来るから安心していいよ」



「は…あ…」



夜詩よしは地図を受け取り、ふらつきながら研究所を出ていく。



「だ、大丈夫かなぁ…」



夜詩よしは地図を見ながら何とかレストランにたどり着き、お腹一杯食べて寮の部屋に戻った。



「あー疲れた…明日は…学校…に…」



ベッドに倒れ込んだまま夜詩よしは眠りに落ちていく。

翌朝、アリスに揺さぶられて起こされる。



「お兄ちゃん!学校行かないと!起きて起きて!」



「あと10ぷ…ん…」



「すぅー…起きろー!!」



アリスの大声で、夜詩よしはベッドから飛び起きた。



「鼓膜が破れるって!」



「早く着替えて!遅刻しちゃう!」



「分かったよ…」



「きゃっ!目の前で脱がないでよ!お兄ちゃんのエッチ!」



その時、部屋の扉が開く。



「夜詩?すごい声がしたけど、何かあっ…た…」



「へ?」



しばらくして、顔が腫れ上がった夜詩よしゆうとアリスは学校に向かって走っていた。



「全く!疲れてるのは分かるけど、しっかりしないと任務こなせないわよ!」



「しゅびばぁぜん」



「これからは自分で起きてね」



「ばい、ぜんじょじまず」



夜詩よし達は何とか間に合い、教室の前にたどり着く。



「じゃあ私はここで」



ゆうは違う教室なのか?」



「何言ってるの?私は教師よ」



「教師!?何で?」



「私はとっくに訓練を終えてるの。頑張ってね」



ゆうは何処かへと歩いていった。



「さすが優等生」



「アリスがいるから大丈夫!ね?」



「よろしくお願いします」



「おい!」



教室にいた金色で短髪、蒼い瞳の男の子が話し掛ける。



「俺?」



「さっきから騒ぎやがって。誰だお前?」



「え?ああ、騒がしくして悪かった。俺は今日からこの学校に入る事になった神塚夜詩かみつかよし、よろしく」



「いきなりこのクラスかよ」



「?」



夜詩よしが不思議そうにしていると、黒髪でおかっぱの小さな女の子と目が合う。



「は、初めまして、黒崎涼子っていいます。彼はロック・アームストロング君です」



「勝手に紹介してんじゃねぇ!」



「ひゃっ!ご、ごめんなさい」



「い、いちいち怯えんな。ったく」



「よろしく。1つ聞いていいかな?このクラスって、俺を含めて四人だけ?」



「そ、そうです。この学校のクラスは能力を扱う段階で分けられてます。

このクラスは実戦可能な生徒だけなんです」



「なるほど。実戦可能なら何を学ぶんだ?」



「それは授業を受ければ分かるさ」



後ろから急に声がして、夜詩よしは驚いて振り返ると、目の前にはジャージを着た無精髭の男が笑顔を浮かべている。



「さあ、席につけ!」



「アリス、あの人は?」



「担任のホランド先生よ」



「転入生の神塚かみつか!」



「は、はい!」



「よろしくな!」



「よろしくお願いします!」



ホランドは歯を輝かせながら夜詩よしに笑顔を浮かべる。



「さて、まずはエナの扱いの復習にするか。

じゃあ…神塚かみつかエナを高めてみろ」



「へ?高める?」



「そうだ。お前なら簡単だろ?」



「えーっと…分かりません…」



夜詩よしの言葉に、クラス中の全員が驚き、固まってしまった。

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