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 さなかは途方に暮れていた。

 右も左も、前も後ろも見ることが出来ない。

 真夏、一番高い所にいる太陽は、突き刺すように輝いている。なのに、さなかの周りだけ、ずどんと大きな雲に覆われている気がした。

 ポトリ ポトリ

 アスファルトに影を落とす雫が、汗だけでないことはわかっていた。

 ただそれは認めたくなくて、誰かに顔を見られたくなくて、俯いてふらりと足を動かす。行くあては、特に考えてない。

「つらい…」

 喉から掠れた音が漏れる。

 そういえば朝からちゃんと水飲んでない。

 意図せず体内から水分が逃げていく。

(水、買お)

 かろうじて見つけた、一時的な目的の為に少し前を向いた。

(眩しいな)

 都会のど真ん中で、流れる人と正反対のペースで、少し怪訝そうなサラリーマンとぶつかりながらも歩を進めた。都会の人は、歩くのが早い。


 さなかは、今日、人生で初めて振られた。

 田舎から新幹線に乗り、遠路はるばる東京まで来て、カラオケ店で振られる。という、なんとも虚しい出来事だった。

 相手は年上、ネットで出会い遠距離恋愛、付き合って3ヶ月。通話越しでは、とても包容力のある人だと思っていた。なんなら顔も良かった、ような気がしていた。


 立ち寄ったコンビニで水を買った。

 ぐちゃぐちゃな顔を一瞬目にして、ギョッとした店員の顔にむしろ救われた。笑ってくれ。


 「あーあ。なんかいい人いないかな」

心にも無い言葉だった。今朝振られたショックで、次に行く気持ちもまだない。

 あるのは公園のベンチでひとり、脱水直前だった18歳の少女の姿。

 さなかが手にしていたペットボトルから、たらりと水滴が流れた。

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