第七話:忍び寄る影
キャラ紹介1
ビット・アークライト
主人公である謎の少年、ビット・アークライト。その正体は?極点に至る魔力10の魔術師。あらゆる魔術に精通しているものの、内なる魔力の少なさから、扱える魔術はない。しかし……?
使える技
・極点障置あらゆる攻撃を受け止め、弾くことができる最大10点の極点を任意の場所に設置する技。
・極点動薙受け止め、弾き飛ばす極点を高速で動かし、防御と同時に攻撃も行える技。吹き飛ばすことしかできない為威力はそこまでない。
・指刃圏指で描いた魔力の刃を空中に固定し、総べてを切り裂く絶対領域を展開する技。
学園に覗く怪しい影が脳裏を離れない。
――――――――――
入学試験を経て、模擬戦、そして上級生セリオスとの死闘――。
激しい戦いの日々がひとまず落ち着き、学院は表向きの平穏を取り戻していた。
だがその空気は、どこか張りつめていた。
「よし、今日の基礎訓練はここまで!」
教師の号令で、生徒たちは一斉に魔力を収束させ、術式を解く。
アミシアは息ひとつ乱さず炎の剣を消し、ルインは冷たい蒸気を払った。
一方ビットは、指先にわずかな光を宿らせたまま立っている。
それは誰が見ても頼りなく映るが、彼の仲間だけは違っていた。
「ビットの光……今日もやっぱり揺るがないわね」
アミシアが微笑むと、ルインは腕を組んでそっぽを向く。
「いつも通り、弱々しいだけだろ。だが――」
彼は言葉を切り、口を噤んだ。
セリオスを退けた事実が、今も胸に引っかかっているのだ。
その日の昼、食堂では別のざわめきが広がっていた。
「聞いたか? 学院の外壁近くで“魔物”が目撃されたらしい」
「またか! この前、学内でジェリーが大量発生したばかりだぞ!? どうなってるんだ……」
その声に、食堂中がざわついた。
あの事件――数え切れないほどのスライムが学院を襲った大騒動は、記憶に新しい。
生徒たちは恐怖よりも困惑の色を濃くしている。学院の結界は強固なはず、そう簡単に魔物が入り込めるはずがないのだ。
「誰かが結界を壊してるんじゃないか?」
「まさか、内部に裏切り者が……?」
小声の会話が飛び交う。
アミシアはスプーンを置いてため息をついた。
「学院の結界が破られるなんて、普通じゃ考えられないわ」
ジェイルは豪快に肉を頬張りながら言う。
「だが、実際にジェリーは溢れ出したんだ。結界が“完全”じゃない証拠だろう」
ルインは低く呟く。
「……もし結界が本当に破られているなら、この学院そのものが戦場になる」
ビットは水を飲み干しながら、黙ってその言葉を噛みしめた。
あのジェリー事件で見せた極点動薙――あれは守りの技の応用だった。
だが次に来るものが、同じ程度で収まる保証はない。
日々の授業や訓練は滞りなく続いた。
だが、ビットの周囲では違和感が積み重なっていく。
深夜、廊下を歩いていると、誰もいないはずの書庫から物音がした。
扉に手をかけた瞬間、気配は霧散した。意を決し扉を開くが、そこにはただ冷たい静けさが残るのみ。
別の日、訓練場の隅で魔術具が壊されているのが見つかった。
「老朽化、だそうだ」教師は言ったが、破片には鋭い斬撃痕が残っていた。
そして――またあの声。
「……アークライト」
誰もいない廊下で、不意に耳の奥を撫でるように囁かれた。
振り返っても影すらない。
ぞくりと背筋を走る寒気。
だがビットは、自らの心を落ち着けるように指先の光を見つめた。
「……大丈夫だ。俺にはこれがある」
一方その頃。
学院の最奥、円卓の間では教師たちが集い、声を潜めていた。
「結界のゆらぎが増えている。封じられた魔獣の影響か?」
「いや、何者かが内部から干渉しているとしか思えん」
「もし解き放たれれば……大陸規模の惨禍になるぞ」
重苦しい沈黙が降りた。
その中で一人の教師が、ためらいがちに呟く。
「……“アークライト”の名が、古文書に記されていたのを思い出した。あの少年と関わりが……?」
その言葉に、誰もが息を呑んだ。
夕暮れ。
訓練を終えたビットは、仲間と別れてひとり校舎を歩いていた。
ふと視線を感じ、振り返る。
外壁を駆け抜ける黒い影が、茜色の空を切り裂いていた。
一瞬で消えたその残滓は、幻だったのか。
しかし、確かに心臓が跳ね上がるのを感じた。
「今の気配、確実に近くにいた。それは間違いない、けどあれは一体何だ――」
ビットは拳を握りしめた。
迫り来る嵐をまだ知らぬまま、夕陽の中に立ち尽くす。
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キャラ紹介2
教師(担任)
最近低魔力でも扱える魔術についての研究を始めた。
アミシア・リューゲルト
魔剣士の少女。魔剣士なのに気配に疎い。勘は鋭いのに。
ルイン・エネモア
魔弾の魔術師。肉ばかり食うわりに頭を使う魔術はどうやって動かしているのか謎。おそらく食中に飲むミルクに砂糖をたくさん入れているに違いない。
ジェイル・ファーラン
俊足の魔術師。自らが仕留めた肉、その命には毎回きちんと感謝している。実は”いただきます”という儀式を一分かけて行っている。