第三話:極点動薙
キャラ紹介1
ビット・アークライト
主人公である謎の少年、ビット・アークライト。その正体は?極点に至る魔力10の魔術師。あらゆる魔術に精通しているものの、内なる魔力の少なさから、扱える魔術はない。しかし……?キャラ紹介
・極点障置あらゆる攻撃を受け止め、力を蓄え放出し、あらゆる攻撃を弾くことができる。最大10個の極点を任意の場所に設置する技。
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突如、魔術学園に警鐘が鳴り響いた。
訓練用のダンジョンから、異常発生したジェリーの群れが溢れ出したのだ。
数えきれぬほどのスライムが校庭へ押し寄せ、生徒と教師総出の大規模な迎撃戦が始まる。
「炎の魔術師は前へ! 数を減らせ!」
「剣士は下がるな! 斬った直後に増えるぞ!」
必死の抵抗にもかかわらず、ジェリーは分裂し、再生し、波のように押し寄せる。
焼き切っても、砕いても、次から次へと湧き出てくる。
その戦場の片隅で、ひとりの少年に視線が集まっていた。
「お前は下がってろ!」
「昨日は剣を指で止めただけだろ。あれじゃ群れは止められない」
生徒たちの言葉に、ビットは肩をすくめた。
確かに彼の技は“点”だ。防ぐことはできても、広がる波には無力に思える。
だが、彼だけは静かに戦場を見つめていた。
「……ふむ。あれじゃ持たねえな」
前衛の剣士たちが押し返され、魔術師たちの炎も数に押し潰されていく。
突破されれば、学園は壊滅だ。
「くっ、ビット! せめて時間を稼げ!」
教師の叫びに、ビットは指を弾いた。
――光点が十個、空間に並ぶ。
極点障置。
透明の壁のようにジェリーを押し返し、仲間を救い出す。
だがすぐに囁きが聞こえた。
「やっぱり守るだけか……」
「どれだけすごくても、それじゃ戦いは終わらない」
その声に、ビットは笑った。
「……だな。守るだけじゃ、終わらない」
指先に再び光を宿す。
だが今度は違った。
障置のひとつが――走ったのだ。
「なっ……動いた!?」
光点が稲光のように線を描き、ジェリーの群れを横一文字に薙ぎ払う。
ぶつかったスライムは一斉に吹き飛び、地に叩きつけられ、動きを止めた。
「極点……動薙」
彼の呟きと同時に、光が戦場を奔る。
固定された点はもはや障害ではなく、刃の群れ。
幾度も、幾度も薙ぎ払うたび、数百のジェリーが宙を舞い、跡形もなく消し飛ばされた。
「す、すげえ……」
「防御じゃない……あれは、攻撃だ!」
教師でさえ言葉を失った。
アミシアは目を見開き、そして笑った。
「やっぱり……ビットは只者じゃない」
ルインもまた、唇を噛みながら苦笑する。
「クソ……。また俺の想像を超えていきやがった」
やがて、残ったジェリーは総攻撃で殲滅され、戦いは終わった。
静まり返った校庭の中、ビットはただ指を見つめていた。
「……これが、俺に残された道だ」
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キャラ紹介2
・アミシア・リューゲルト
魔剣士の少女。抜刀術と、至天六法による攻防両面の戦術で学内でも一位二位を争う麗姫。入学試験で自らの魔剣を指一本で止められ、ビットへの恐怖と尊敬を抱く。それを「恋」と錯覚しているが、自覚はない。度々後方彼氏ヅラをするところがある。
今回は前衛の剣士が討ち漏らしたジェリーを一人で処理していた。
・ルイン・エネモア
魔弾の魔術師。大量の魔弾を同時展開し、物量で押し切ることを信条としている。省エネルギーかつ正確な極点で迎撃してくるビットを「小細工」と嘲るが、心の底では認めざるを得ない。いつか完全な同時攻撃を成功させ、勝利を掴むことを新たな目標とする。
アミシアとはライバルであり親友でもあり、互いを高め合う存在。
ビットが前衛に出て蹴散らすのをみて、後衛から魔弾を撃つしかなかった自分を恥じている。