第二話:極点障置
キャラ紹介1
ビット・アークライト
主人公である謎の少年、ビット・アークライト。その正体は?極点に至る魔力10の魔術師。あらゆる魔術に精通しているものの、内なる魔力の少なさから、扱える魔術はない。しかし……?
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入学試験を突破した翌日。
訓練場に足を踏み入れたビットに、既に集まっていた生徒たちの視線が一斉に注がれた。
小声で囁き合う声が耳に届く。
「魔力値がたった10で合格したんだってな」
「不正じゃないのか? 昨日はアミシアの剣を……指一本で止めたらしい」
「ありえないだろ、そんなの……」
ビットは何も言わず、ただ肩をすくめて歩みを進めた。
だが、その道をふさぐように立ち塞がる影があった。
「……お前が、ビット・アークライトか」
鋭い目をした少年――ルイン。
彼の周囲には、魔力の光がかすかに瞬いている。
「昨日の試合、俺は見ていた。アミシアを――俺が認めているあの剣を、貴様が折ったのをな」
ルインの声は低く、しかし怒気を帯びていた。
アミシアと彼は以前から競い合う仲であり、その剣技を心から尊敬していた。
だが、それを“無名の魔力値10”があっさり打ち破った――許せるはずがなかった。
「魔力値が10……? 笑わせるな。そんなやつがアミシアを超えるなんて、あってはならない!」
「……で?」
ビットは視線を逸らさずに応える。
「信じられねぇなら、試してみろよ」
その一言で、場の空気が一変した。
教師の一人が前に出て腕を組む。
「新入生同士の実力確認か。……いいだろう、模擬戦として認めよう」
開始の合図と同時に、ルインの指先が閃く。
「行けぇぇぇっ!!」
無数の魔弾が、嵐のようにビットへと殺到した。
観客席がどよめく。
「速い!」「あの弾幕は防げない!」
だが、ビットは静かに指を掲げた。
「……極点障置」
瞬間、空間に光点が浮かぶ。
それらは見えない障壁となり、襲いかかる魔弾を次々と弾き飛ばした。
炸裂音だけが虚空に響き、ビットの立つ位置には傷一つ付かない。
「なっ……!? 俺の魔弾が、一発も……届かない!?」
ルインの顔に驚愕と焦りが走る。
ルインはさらに魔力を注ぎ込み、最後の連射を放った。
空を埋め尽くす光弾が、一直線にビットを呑み込もうとする。
だがビットは動じない。
「終わりだ」
光点が一斉に解放される。
蓄積された魔弾の衝撃が逆流し、光の奔流となってルイン自身を襲った。
「う、ぐああああっ!!」
爆煙が訓練場を覆い尽くし――やがて静寂が訪れる。
煙が晴れると、ルインは地面に膝をつき、荒い息を吐いていた。
教師が手を挙げる。
「勝者、ビット・アークライト!」
歓声が爆発する。
「信じられない……!」「魔力値10が、弾幕を完封した……!」
ルインはうなだれながら、悔しげに笑った。
「……クソッ、やられたな。
だがな、ビット。俺はお前を認める。だが同時に、お前を越える存在になる!」
ビットは淡々と頷き、指先を見つめながら答える。
「上等だ。……ならこれからは、ライバルだな」
ルインは苦笑し、立ち上がった。
「ライバル……? ハッ、いいだろう。
ただし友達面はまだ許さねぇぞ」
観客席からアミシアの声が小さく響く。
「……ふふ、素直じゃないんだから」
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キャラ紹介2
アミシア・リューゲルト
魔剣士の少女。抜刀術と、至天六法による攻防両面の戦術で学内でも一位二位を争う麗姫。入学試験で自らの魔剣を指一本で止められ、ビットへの恐怖と尊敬を抱く。それを「恋」と錯覚しているが、自覚はない。後方彼氏ヅラをするところがある。
ルイン・エネモア
魔弾の魔術師。大量の魔弾を同時展開し、物量で押し切ることを信条としている。省エネルギーかつ正確な極点で迎撃してくるビットを「小細工」と嘲るが、心の底では認めざるを得ない。いつか完全な同時攻撃を成功させ、勝利を掴むことを新たな目標とする。
アミシアとはライバルであり親友でもあり、互いを高め合う存在。