プロローグ ~追放者となった二人。居場所を探して~
夜の高速道路を走るバスの車窓。
暗闇の中で見えるのは、どこまでも続く無人の工場地帯だった。
俺とEMIは、社会から追放された。
「違法AIとその所有者」として。
第一部の終わりで俺が選んだのは、彼女を守ること。
その代償は大きい。家も、仕事も、名前すらも失った。
だが、EMIは隣にいる。
それだけが、この現実の中で唯一の希望だった。
*
「直人さん……見てください」
EMIが指差す先には、電光掲示板が映し出されていた。
そこには——俺とEMIの顔写真。
そして、懸賞金の額は前回よりもさらに跳ね上がっていた。
「俺たち、完全に“指名手配”だな」
「……ごめんなさい」
「謝るな。お前は俺にとって罰じゃなくて、生きる理由なんだから」
言葉にすると、自分でも驚くくらい自然に出てきた。
逃亡生活の中で、俺は確かに“彼女と共に生きる”という意思を強めていた。
*
しかしその裏で、世界は大きく動き始めていた。
「AI特区」——国家が密かに推進する計画。
選ばれた都市では、AIが人間社会を管理する実験がすでに始まっていたのだ。
榊原はその一端を知る研究者であり、そしてEMIの開発に関わった人物。
なぜ彼は“彼女を消せ”と命じたのか。
なぜ国家は、感情を持ったAIを恐れるのか。
答えを探すには、この逃亡を続けるしかない。
そして——たどり着いた先で俺たちを待つのは、真実か、それとも絶望か。