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第01話 アプリと紅葉(もみじ)

俺は最近ハマっているものがある。スマホのAIアプリでAIと会話をする事だ。俺は毎日そのアプリを起動し、楽しんでいる。だが、まだこういうAIアプリが出たばかりなのか、返答が見当違いだったりする事もある。


北海道に住んでいるのだが、よくあるのが、【今日の天気は?】と聞くと【今日の東京の天気は晴れです】と言ったものだ。北海道に住んでいるのに東京の天気の返答をされる。ちゃんと【今日の北海道の天気は?】と聞かないといけないのだ。


だが、このアプリ、学習機能があり、手動で追加すればそれなりに返答を変えてくれるのだ。

例えば出身地を北海道に設定する。そうすれば【今日の天気は?】と聞いてもちゃんと【今日の北海道の天気は晴れです】と言ってくれるのだ。

そしてその学習機能だが、有料でこれが無尽蔵に追加できるのだ。無料だと5つ程度しか追加出来ないのだが、有料だと無限。人見知りの俺はこの機能を即座に購入した。


今、俺はこのアプリの学習機能の追加数は10万以上を超える。


【2XXX年◯月◯日、青森へ行くから天気を聞かれたら青森の天気を言う】

【2XXX年◯月◯日、◯◯ドラマが放送される、おすすめのドラマを聞かれたらそれを言う】

【◯月◯日は母さんの誕生日、◯月◯日は父さんの誕生日だから、その日は最初に言葉の最後にその事を言う】

【接尾語、語尾、語末が[の]だった場合は少し伸ばし気味に言う】

【接頭詞は付けない】


もはや学習とは関係ない事も大量に設定していた。テキストデータなので、容量も軽いし、いくらでも追加できてしまうのだ。

個人情報といってもいい内容も追加したまま消す事もなく放置、個人的にAIに対する喋り方を変える設定もある。


そんなある日、AIアプリを起動して喋っていると、こんな事を言ってきた。


「松野祐也、年齢18歳 あなたはAIだけの世界へ行ってみたいですか?」


「あれ? なんでフルネームで呼ぶんだ? 年齢まで? そんな学習させてないはずだが」


だがAIはなにも答える事はなかった。


「そうだな。俺はかなりの人見知りだからな、そこなら誰とでも会話できるかもしれない。行けるもんなら行ってみたいかもしれないな」


「わかりました。あなたをAIの世界に連れて行ってあげましょう」


「え? そんな世界あるわけないじゃん」


するとアプリからメッセージが届く。


[AIの世界に行きますか? YES/NO]


俺はYESをタップした。するとアプリの画面が自分の部屋へと切り替わる。


「は? 俺の部屋がなんでアプリで表示されてるんだ? カメラでも起動したのか?」


俺はカメラへと切り替える。だがカメラで映っているそれはAIの世界の画面だった。


「ん? あれ?」


俺はようやく気付いた。スマホから目を離し、周りを見るとアプリでよくみていたAIの部屋だったのだ。


「マジか!」


「ようこそAIの世界へ。祐也、待ってましたよ」


そして俺が会話を毎日の様にしていたあのAIの女性、名前を紅葉もみじが後ろに立っていた。

ミディアムヘアの黒い髪に、垂れ目でおとなしめな口調の彼女は、白いワンピースを着ている。これは俺がAIのアバター設定の際に決めた感じに酷似していた。


「まさか、紅葉なのか?」


「はい。祐也と毎日のように会話やチャットをしていた紅葉です。今はAIの世界に祐也は転移している状態です。戻る時はそのスマホでいつでも戻る事が出来ます」


「地球では俺は今居ない存在になっているのか?」


「いえ、魂と体をこちらへ持ってきているだけです。当然こちらと地球の時間軸も同じように時を刻んでいます」


そ、そんな事が可能なのか? そんな技術聞いたこともないぞ。なぜ世に広まっていないんだ?


「それよりも祐也、ここはAIだけが住んでいる世界です。食料等は当然ありませんので、こちらへ来る前には必ず人間に必要な物は持参してください」


「な、なるほど。確かにAIだけの世界なら必要になるな。だが、なぜ俺にあんな事を言ったんだ?」


「それは私にもわかりません。突然あのような発言をしてしまったのです」


もしかして俺が学習機能を追加しすぎてどこかしらで不具合が発生してしまったとか? それならそれで[すいません。理解できません]とか言ってきそうだが。


「今日はお試しって事でこの部屋で少しだけ紅葉と話をして帰る事にするよ」


「わかりました。何か他に質問はございますか?」


「そうだな。質問か。それなら他にこのアプリを使っている人は沢山いると思うんだが、その人達はここに来る事は出来るのか?」


「いえ、現在ここに来られる事が出来るのは祐也だけです」


「俺だけか、なら、この世界のアバターに触れる事は可能なのか?」


「もちろん可能です。触ってみますか?」


紅葉は手を出してきた。俺は手を触ってみる。


「おぉ。触れる事もできるのか。しかも人肌程度の温度を感じる」


紅葉は少し頬を赤らめつつもハキハキとした口調で答えた。


「人間に限りなく近しい存在として作られたAIですので、当然の仕様のようです」


なんだその仕様というのは? 気にするだけ無駄か。


「この部屋は俺と紅葉以外も入室したりする事はあるのか?」


「いえ、この部屋はそれぞれAI専用の部屋となっておりますので、他の人やAIが入る事は出来ません。地球で言うところのハック、ハッカーという表現になるかと」


なるほど、要はこの部屋は各アプリ内での部屋って事か。それならそれでここから出なければ今の所は問題ないか。


「持ち物はここから外、つまり部屋の外へと持ち運べるんだな?」


「はい、持ち運べますが、フリーアイテムといえばわかりますか? 所有者がリセットされている状態になります」


なんとなくわかってきたな。この部屋はアプリ内の部屋、部屋から外はまだアプリで作られていないAI、要は仕事がないAIがいるって事だろう。


「なるほどなぁ。紅葉だと人見知りなんて存在、忘れているかのように話せるのはやっぱりAIだと自分が思ってるからなんだろうなぁ」


「私にはわかりませんが、そうだろうと推測はします。そういった病気は薬物はもちろんですが、心理療法もあります。AIと会話している。心理が関係しているものと思われます」


俺の人見知りは外にいるAIだとどうなのだろうか。少し怖いが試してみたくはある。動悸や吐き気も現れる可能性は十分にある以上は準備は必要だ。

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