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終末世界で明日を見る  作者: がみれ
第三章「欺瞞の渦と波乱の予感」
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第五十七話「濃ゆい人物」

「なーんか移動楽ちんだね」


「でも、これ魂喰霊に感知されそうじゃ」


「それはほぼ、ありえない」


 ガタンゴトンと揺れる車内、座席の端の方で窓の外を眺める名無しと姿勢を崩し楽にするリリス。


 それにカイが二人の前に立ち言った。


「なんで?」


「魂喰霊に目という機能は存在しない。黒いもやで視界はふさがり、霧に近い魔力で対象を捉えるものが大多数。この特製列車はその霧を一般的な建物同様に魔力を受け流すことで探知を阻害可能。対象と距離を取れさえいれば、気づかれず安全」


「そうなんだ」


(それでも、万が一魂喰霊がぶつかったらビリってくるし確実に安全じゃ)


 その時、対面でバンッと窓が叩かれる音が聞こえ名無しは視線を向ける。


「なぁなぁ、着くまで時間あんだろ?お互い、自己紹介しようぜ。名前呼べねぇのは不便でしかねぇ」


 対面の座席の端、座席に足を伸ばしている賊のような風貌の紫髪の男が手の甲を窓につけたまま目つき悪く言う。


「まぁまぁ東谷とうや、そんな言い方だと新人怖がっちゃうからさ」


 その男のそばにいる整った顔立ちの長剣持ちの美青年が優しく言う。


 すると、どこかチャラそうな雰囲気のその男は前に出た。


「まぁ、でも自己紹介は必要かな。僕たちまだ会ったばっかだし」


「カイってやつ。今いるのが任務に当たる全員でいいよな?」


「混沌を名乗る者以外はこの場に集合済み」


「よし。俺様は東谷。こいつと一緒に世界を半分俺様たちのものにする夢があってここにいる。能力は戦闘特化だ。詳しくは信用してから言ってやる」


 どこまでも上から目線に親指を自分に指さし、傲慢に言う。


「僕は天翔てんしょう。よくわからないこの世界でだからこそ何でもできると思って東谷と同じ目標を持ってるよ。ちなみに能力は秘密。あるかもしれないし、ないかもしれない」


 片目を閉じ、人差し指を口元に近づけ言う。


「じゃあ、次にわたしー。ルプスー。ここにいる理由は死にたくないから。何が何でも生き残るために力強く頼もしい仲間を盾にしようと思ってるからよろしくねー」


 手を上げ、明るくにこやかに悪気のないルプスは平然と言う。


「私は名無し。私含めてみんなが笑えて仲間が死なない理想の世界を作るためここにいる。戦闘はからっきしだけど人を癒す力はあるから頼ってほしい」


「輝夜雫。先祖が残したこの力を今度は人を救うためここにいる。以上だ」


 名無しの列の座席で少し開けて座っている輝夜はそう言うと目を瞑った。


「おいおい、ビッグネームじゃねぇか。七英傑が来るのかよ!」


 身を乗り出すように東谷が言う。


「私をあまり頼りにするな。今回はただの調査任務と勧誘だ」


「あんたが来て、混沌が来る任務がただの調査任務かよ」


(確かに輝夜が来るのは少しおかしい。戦闘があると明記されてはいないのに)


「では、次にわたくしの名前はリスウェルと言います。ここにいらっしゃるアリア様のメイドでございます」


 相変わらず薄目のリスウェルはそう言うと、名無し達の列の端、近くで座る少女に手を差し伸べ立たせる。


「俺はアリアだ。かっこいいことならなんだってしてやる、れっきとした信念がある。元は男だ。能力を得て変わった。よろしく」


 赤髪の見た目は可愛らしい、パーカーを着る少女は言った。


「あと、俺はリスウェルをメイドだとは思ってない」


「な、何故ですか……」


 ショックを受けたように手すりに寄りかかるリスウェルの手をアリアは掴む。


「それが分かるまで俺と付き合え」


 真っすぐ瞳の奥を見て言うと、腕を引きずりリスウェルを隣に座らせた。


「後は……」


「当機は最後に」


「ってなるとそこの君かな」


 天翔が視線を向ける。

 そこには名無しとその対面に座る皆の中ただ一人だけ、違う列で座り両手を組み合わせる目の熊が酷い男がいた。


「別にいい。俺は。そもそも馴れあうつもりでここに来たわけじゃない。誰が死ぬか誰が仲間かも判断つかない。そもそも互いに利害の一致だけで動いてる身だ。個々の信念、信条が嘘の可能性があるとしたらどうする?」


 トンネルに入り窓の外が黒くなる。

 落ち込むように話すその人に釣られ、名無しも少し重く受け止めた。


 メニャの言う通りなら、その言葉には一利あるからだ。


「知るか。んなこたぁどうだっていい。名前教えろ。じゃねえと根暗野郎って呼ぶぞ」


「それでも構わん。俺はその程度の人間だ」


「そうかよ。妄想好きの根暗野郎」


「ははは。他者に強く当たることで自己優位性を高める君らしい愛称だな」


 乾いた笑いで口元を上げその者は言う。


「あ””?」


 瞬間、車体が何かにぶつかったように衝撃が走り揺れる。

 名無しは前に押し出され床にぶつかり、下からその光景を見た。


「止めんな!天翔!!」


「止めるさ。君のために」


 まったく動かないその男の前、東谷の拳を割って入り天翔が手のひらで止める。その動きは一瞬だった。魔力を用いず単なる身体能力で常人なら見えない速さを引き出していた。


 力は拮抗。

 しかし、すかさず東谷の片方の空いた左拳が男に振りかかろうとしていた。


(もしかして本気で殺そうとしてる!?)


 名無しがその事に気づくと、瞬間、刀が鞘から抜かれる音とともに、東谷は左拳をすぐに引き戻し、首元に手を当てた。


 その手を降ろすと首元には薄皮一枚の切り傷がつき、赤い血がついていた。


「当列車内での暴力行為は安全性観点により控えることを要請」


「……チッ。今日の所は見逃してやる」


 拳を戻し、威圧する目で彼を見ると、東谷は素直に元の席に戻った。

 それを確認し、天翔は男に振り向く。


「あなたも刺激しないでください。東谷は本気で人殺そうとするから」


「ああ」


 相も変わらず同じ調子で男は言う。

 トンネルを抜け街中に。視線が一人の人物へと向く。


「じゃあ、最後に」


「当機カイについて」


 そこから話されたのはマスターがダブレス・アールムトであること。

 カイ自身は機械人によって作られたものではなく、退廃した荒野である禁足地カリュエラで見つかったとのこと。

 今回は資材運搬による対価として魔力発電者やその他もろもろ調査する許可を前進隊が得ているというものだった。


「じゃあ、おまえは何なんだ?」


「存在としては機械に近く、思考は人間に酷似。理解不能。未知であるとマスターは言っていた」


「やはり人ではないじゃないか。信用できるのか?そもそも機械人側の指示に従って本当に」


 虚ろな男の言葉を遮り、名無しは喋る。


「それでも、協力するのが最良。形だけでもそうするべき。調査任務だから」


 名無しは立ち上がり、扉に近づく。

 そこからは建物が何軒も薙ぎ払われ、宙に瓦礫が舞う光景が遠くに見えた。


「俺も賛成だな。考えても仕方ねぇ」

「僕もやれるならやってみてほしいかな」


 余裕そうに笑みを浮かべ二人は言う。


「アリア様は?」

「ここは何も言わない方がかっこいいぞ」


 目をつむり腕を組むアリアにリスウェルはニコッとした。


「私も賛成ー」


「………」


「そうか。何を言っても無駄そうだな。着いたら起こしてくれ。俺は寝る」


 顔を背もたれに向け、その者は悠長に寝った。

 警戒していた言動とは嘘のように隙まみれに。


 そのまま列車は駅に止まることなく走り続けた。

 そして、海辺が見えた頃。


「まもなく到着」


「お。やっとか!!」


 窓の奥、隣接する多数の施設と立ち昇る煙が目に入る。

 そして、ある地点から宙に浮く手に収まる程度の金属球がよく見かけるようになった。


(旧式探査補助のあれと似てる)


「なんか見張ってるみたいだね。うちら」


「でも、その分外からの攻撃に気づいてくれる。それに相手は私たちの能力をすべては把握してないと思う。だから、情報取集は当然」


 二人だけに聞こえる小さな声で話すと、列車が減速。停止し、ホームに到着した。


 当然そこは何の変哲もないホーム内。

 終末世界以前のものと同じだった。


 駅から出て敷地内に入り、開けた場所でカイが止まる。


「この先、魂喰霊に見つかる危険が存在。魔力を用いない全速力で当機に」


「いや、名無しとルプスは私が連れていく」


 名無しとルプスの後ろに立ち、輝夜が二人の頭に手を乗せ言う。


「承認。警戒用のを一つ、輝夜様に。マスターのいる場所に案内します」


 窓から見えた金属球が二人の前に飛んできた。


「なんで別行動?」


「メニャから気配の断ち方を外で学ばせるよう伝えられた」


「あー」


 その間、ルプスは話を聞かず、目の前の金属球に触ろうと腕を伸ばす。

 が、避けられ、素早い幾度もの連打も触れることすらできなかった。


「では、また会いましょうねー。皆さん」


 爽やかな笑顔で天翔は言うと、皆は行ってしまった。曲がり角で見えなくなった頃、名無しは輝夜に尋ねる。


「それで本当はなんなの?」


(わざわざグループを分けなくても修行は出来る。それに、そもそもなんで輝夜は来た?やっぱり普通の任務じゃ)


 名無しの問いかけに数秒沈黙する。

 すると、二人の間を通り過ぎ刀を鞘から外す。


 ゆっくりと何もない正面に輝夜は剣先を向けた。


「───いるんだろ?ダブレス」


 その言葉に目を見開き、二人は半歩下がる。

 名無しは魔導書を、ルプスはクナイを手に持ち、両者同時に膜を展開する。


 しかし、


(見えない)


 名無しの感覚ではそこには何もないと告げていた。

 それでも、ルプスは違っていた。


「こりゃ普通は気づかないや……」


 冷や汗が頬を流れ、クナイを持つ握る手ががさらに閉まる。


「驚いた。まさか、私のこれを見破るなんて。それも二人も」


 感心するように拍手し青年の声が聞こえると、目の前に靴からきれいな少女の足へと透明だった場所に人の姿が映り始める。


「やはり、技術ではまだまだ遠く及ばない。だからこそ、可能性は高みへ。私の夢は届き得る」


 高ぶった声で言う当人の全身が目に映る。

 その衣装に名無しは突っ込まずにはいられなかった。


「なんで、アイドル衣装なの?」

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