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終末世界で明日を見る  作者: がみれ
第三章「欺瞞の渦と波乱の予感」

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第五十一話「残焔の七英傑」

 カイが金属性の球体を取り出すと、その上にノイズ混じりの映像が投影された。


「これが終焉災害……」


 映しだされたのは一つの街。

 しかし、もはやその光景は名無しの知っているものではなく非現実な星の光景に言葉を失った。


 空は辺り全体に亀裂が入り、不気味な緑の色をつける。大地からは炎や水が噴き上がり、雷が辺りに降り注ぐ。


 それだけではない。場所も大きさも千差万別。空や地上、無数に存在する先が見えない円形の黒いゲート。


 それらが建物を飲み込み、辺りを飲み込んでいく。


 名無しは思わず不気味なそれを指さした。


「なに、これ」


「世界の歪みと呼ばれる、数百の対を成すゲート群。これら世界の歪みは次第に大きくなり辺りの地形を飲み込もうとしていた」


「うわ!?喋った…!!」


 カイの体から知らない男の声が聞こえ、名無しは驚いて声を上げた。


「霧による眠りの影響で意識のある人類は当時観測上七名のみ。しかし、迫りくる終焉災害と魂喰霊に彼らは勇敢に戦った。そして、最終的には世界の歪みを一つ残さず消し去り、終焉災害を終わらした七人を我らは敬意を表し「残焔の七英傑」と呼んでいる」


 以降話されたのは当時の記録。

 世界に希望という名の残焔を灯し続けた七人についての功績と呼び名についてだった。


「都市そのものを喰らった特殊型魂喰霊「都市を喰らいし者」を"機械人"とともに撃破。空に"合わせ鏡の都市"を築いた、"虚世の巫女"「りん」」


「夜闇を覆う異空間を斬り裂き、特殊型魂喰霊「暗影帝」から星の魔力回路を奪還した"輝夜家7代目当主"「輝夜雫かぐやしずく」」


「幻夢の声で人を欺き周辺5か国を支配、犠牲者を最小限に収めた"治安隊副隊長"幻操の「アルジェ」。魔力準位レベル4クラスの膨大な魔力の奔流を一点に制御。数千の魂喰霊を終焉の谷に落とした"治安隊隊長"「カルトラ」」


「禁足地カリュエラに位置する天悪の神殿を守り抜き、特殊型魂喰霊一体を常世の闇に鎮めた"不動の守り手"「ゼリアル」」


「世界に起きた魔力異常現象から魔素の特性、様々な能力に関する研究を行い世界初の魔力発電所を創設した元セルトンネアス研究所所属"機械人"「ダブレス•アールムト」。虚世の巫女と協力し特殊型魂喰霊「都市を喰らいし者」を二人で撃破。そして、当時六人の指揮担っていた」


「世界中に出現した百三十もの世界の歪みほぼ全てを一人で消滅させ、カルトラと共に星を崩壊させる隕石の軌道を変えた"世界の救世主"名を「レイナス」。他に例を見ない単騎で特殊型魂喰霊二体を撃破という功績を所持。後に単独で研究所に向かったが現在は消息不明」


「以上が当時観測された「残焔の七英傑」に関する過去記録である」


 映像が途切れ過去記録の投影は終了した。


「これが過去に起きたこと……。って、輝夜雫?」


「私もかつてはこの内の一人だった」


「かつて?」


「あの時、刀が吸収した全ての魔力を奴にぶつけた。先代や先々代、もっと前の魔力も。今の私には七英傑のように魂喰霊を足止め出来るほどの実力はない。それでも、今は仲間がいる」


 輝夜は名無しを見る。

 その目は期待と信頼を感じさせ、名無しはその重さに少し体が固まる。


 しかし、すぐに緊張は消え名無しも輝夜の目を見た。


「あらためてこれから頼りにさせてもらう」


「こちらこそ。私は特に死にやすいから頼りにする」


 名無しは手を前に差し出し、輝夜はその手を掴み握手を交わした。


「それと最後メルメアスに能力を使った糸のようなものと幽霊船から君たちの攻撃を防いだ時に見えた鐘。あれは十中八九アルジェとカルトラによるものだ」


「え?ああ、あれが。じゃあ、後で礼を言わなきゃ」


「……ああ、会えたらな」


 ほんの少しの沈黙の後、輝夜は目線を逸らし名無しの言葉に応えた。








 赤の街を抜け、彼岸花の群生が終わりを迎えるまで歩き、名無したちは第三拠点付近まで近づいた。


「この先が第三拠点……」


「初めて来ましたけど、噂通り前がまったく見えないですね」


 勇人の言う通り前に広がるのはただの濃い霧の光景。第二拠点の外層と同じで自分たちの姿しか見えない。


 しかし、第二拠点と違うものが一つ。

 この先に地面は無く、一面水面が続いていた。


「でも、どうやって行けば?」


「船を使う」


「船?」


「第三拠点は水没都市の更に下に位置。よって」


 カイが水の中を指さす。名無しがそれにつられ

水底を覗くと、水の中から真っ黒な影がどんどん大きく形がくっきりと浮かび上がる。


(これって……)


 名無しが気づくと同時、勢いよく水しぶきが上がり金属性の船が水面に浮かび上がる。


「潜水艦試作機「退魔一号」を使用。水中からの拠点侵入を試みる」


 それは名無しの知っている潜水艦そのものだった。


 全員が乗り込み、ゴォーという低い音を鳴らし潜水艦は無人で発進した。


「拠点入口は水没都市の中心。入口真上までは水上を経由する」


「そう」


(まぁ、水中より上の方が手出しされても戦えるし安全だよね)


「ねぇ、輝夜さんってあれ何してるの?」


 勇人が指さす先、輝夜は水面の上を走っていた。 

 それも鞘を抜き、刀を水面に走らせるように。


「水没都市一帯には雷の精霊が集中し分散。そこから漏出した魔力を刀に吸収してる。非効率、だけど」


「非効率?」


「触れてもビビビッてなるぐらいの魔力しか漏れ出ていない。本格的に魔力を溜めるならそれ相応の機械が必要」


「そうなんだ。静電気ぐらい?」


「常人であれば気絶する程度?」


 首を傾げ、カイは言う。


「いや、めちゃくちゃ流れてるじゃん!!電気」


「正確には電気ではなく雷と同性質に近い魔力。よって、能力所持者は内側の魔力の保護により外傷は付かない」


「あー」


 そんなこんなで第三拠点の真上まで到着する。

 そこは孤島だった。草木が生え、二棟のビルが見えるだけの水に囲まれた小さな島。


「この下に」


 砂浜に降りたち名無しは下を見る。

 風が通り過ぎるごく自然な島の地下に名無しは人類最後の都市があるなど言われなければわからなかった。


「あ、確かにビリッとしますね」


「この辺は特にな」


 勇人が水の中に手を突っ込むと、バチバチと音を立て電気を受けていた。


「それでここに上陸したのって何で?」


「周辺に魂喰霊がいるか確認を義務化されている。潜水艦では外からの攻撃に対処が困難。でも、今終わった」


 そう言うとカイは潜水艦に向かって歩き、二人を呼んだ。名無しも戻り潜水艦に乗った。


「では出発します」


 カイが出発させると低い音と振動を出し、水中の中へと入っていった。水中に潜ると同時、窓は気泡で白くなる。


「こういうの初めてでワクワクするね、名無し」


「うん」


 勇人の投げかけに名無しは淡泊に答える。

 しかし、内心はそうでさなかった。


(正直めちゃくちゃ楽しみ。だって、水没都市だよ。テンションが上がらないわけがない)


 窓の方に気を取られ、勇人の言葉に適当に返しただけだったのだ。


(どんな景色なんだろう)


 目を輝かせ名無しは外の景色に集中する。

 だんだんと気泡が減り、景色が見え始める。倒壊したビル群が。


 その時、窓は外側から閉められ、銀色の金属板が視界に入った。


「え?」


「精霊の過密による危険性から閉窓を実施」


「じゃあ、着くまで景色見れないの?」


「肯定。でも、すぐ着く」


「じゃあ、いいや」


 名無しは諦め、窓のふちから手を離す。

 体重を乗せて座り、着くのを待つと数分も待たず潜水艦は動きを止めた。


「到着。降りても平気」


 カイが言った通り、第三拠点にはすぐにたどり着いた。


 潜水艦から降りるとそこには幾つもの同じような潜水艦が浮かび、歩く事ができる足場はコンクリートでできていた。

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