第四十七話「謎の者たちの対談」
「崩壊がやられた」
薄暗い地下のバーテンダー。
向かい合うソファに座る二人に不気味な白い仮面のフードを被った男が壁に体を預け、機械を通したような低い声で伝える。
「え?まじ……?」
間の抜けた声でソファに座る少年は白い仮面の男を見上げ言った。死亡したという報告にも関わらず、まるで雑談しているかのような軽さで。
「崩壊魔力の消失を観測。映像記録として死体も確認している」
白い仮面の男は情報を付け加え少年に伝える。
「そっかぁ。彼が……。死体を確認したということはつまり最終章は使わなかったんだ。躊躇ったのか、邪魔が入ったのか。何にせよ一人失った所で計画に支障はないかな」
ワインの入ったグラスを揺らし、少年は不敵な笑みを浮かべる。
そして、目の前のソファに座る男に少年は目線を向けた。
壁に寄りかかる男と同様、その男はフード付きの外套と不気味な黒色の仮面に顔は隠れ、姿が見ることができなかった。
「さて、わざわざ君が生身でここまで来た。その訳を聞いてもいいかな?」
両腕を机に置き少年はバーの静けさをかき消さない小さな声で目の前に座る男に聞いた。
さっきまでのおちゃらけた表情は消え、少年は鋭い目つきで仮面の奥の瞳を見る。
黒色の仮面の男はそれに答えるように、壁に寄りかかる男を一瞥し、白色の仮面の男から束ねられた書類を受け取りテーブルの上へ置いた。
「これは?」
「各陣営のほぼ全ての所属構成員、各能力と属性が記載されたものだ。依頼通り例の二名もその中から見つけた」
「神の子か」
紙に目線を移し、少年は顎に手を当てる。
一枚目を少年は上から下へ一通り見て、次の頁をめくろうと手を伸ばす。
しかし、書類は黒色の仮面の男に引っ張られそれは阻まれた。
「だが、この情報は我々との敵対を誘発する恐れがある。それでだ。貴様らのやろうとしている神の奇跡。その条件から我々が外れるまでの数年間待つことを条件にならこの情報を渡してもいい」
「いいよ、約束する。何ならその上でこれを渡しておくよ」
少年は余裕そうな表情を崩さず即答し、ソファに背を傾ける。
少年は虚空からあるものを取り出した。
「これは?」
少年の手からテーブルに置かれた表紙が星形の一冊の本とナイフを見て仮面の男は尋ねる。
「どうしようもない状況に立たされた時に使うといい。効果は君たちお抱えの精霊種にでも聞けば分かると思うよ」
「……預かっておこう」
少しの間思考を巡らせ、黒色の仮面の男は直接手では触れず危険物を扱うようにして布で包み、自身のバッグの中へしまった。
「それで貴様は動くのか?」
「そうだね。時期に"天月光"と"砂漠の魔王"が活性化するだろうし。僕も遊んでばかりじゃいられないかな」
腕を上げ体を伸ばす少年は軽快に言った。
「精霊種のとこはいいのか?」
「あそこは攻め入るには少し厄介だからね。活性化する二つも同時期だし、取れてどっちか。君たちはどうするの?これからの方針とかさ」
少年は壁によりかかる白色の仮面の男を目を細めて言った。
「我は仲介者、中立者、傍観者。世の理に干渉せずこの世界の行く末を観測する。故にどの陣営にも与することはなくただただ命令に忠実であり続ける」
壁に寄りかかる男はそう言うと、バーを出る扉の方へと歩いていく。
それを少年は止めた。
「にしては情報を与えすぎじゃないかな」
「我は任務を全うしたまで。どちらにもつかない先述の言葉通り、次は別の陣営へ情報を流す」
「それを僕の前で言うんだね」
少年はソファに寄りかかり、ゆっくりと左手の手のひらを扉の前に立つ白色の仮面の男へ向けていく。
対する白色の仮面の男はほんの少し少年の方に体を向け、外套の内にある右手が動いた。
何もかもが静まりかえったバーの中、息を呑む瞬間、その緊張を解くのは少年の方だった。
「ま、いいよ。今はまだ、ね」
少年はそのまま手を頭の後ろに持っていき、そのままバーから出ていく白色の仮面の男を見守った。
「君は?」
正面に向き直し、黒色の仮面の男に少年は視線を向ける。
「私は例の計画を進める。民衆の前で綺麗事を詐欺師のように並べるだけの単純な仕事だがな」
「トップは辛いね。お互い」
「貴様ら教魔団に比べたらましだ」
「それもそうだね。だからこそ、お互いの未来を勝ち取るために手を取り合おうじゃないか」
握手をしようと立ち上がる少年がバーの明かりに橙色の髪と瞳、男とも女ともとれる美貌を持つ少年の顔が照らされる。
少年は手を前にさしだし、黒色の仮面の男はその手を取らない選択を取った。
「馴れ合うつもりはない。我々と貴様らは互いに有用だと判断し取引しているに過ぎない」
「僕としてはそれ以上を望みたいんだけどね」
立ち去る仮面の男を少年は影が完全に消えるまで見続け、
「メルメアス……」
誰も居なくなったバーで目を瞑り、両目を隠すように手を瞼に添えた。
その頃、第二拠点では名無しが茜とお別れの言葉を交わした一日後、神社の前に第二拠点にいる全員が集合した。
「ではこれより第三拠点に向かいます!!転送の準備を」
神社の正面に立つ島名が声を上げて言い、そのまま転送される集団の中へと入っていった。
緋狐、浅葱狐が島名の指示通り二つに分かれた集団の前に立つ。
一方は輝夜雫、カイ、勇人、名無しの四人組。一方は一般人を含めた大多数。
最初名無したちが拠点に来た時と同じ場所で皆が集まった。
「「転送を開始します」」
地面から狐の少女を覆うように真っ黒な魔力が螺旋状に上っていく。
それと同時、二つの集団の地面足元に行きと同じ特徴の魔法陣が展開される。
魔法陣が描かれた地面に亀裂が走り、そこから空間が裂けるように広がっていく。それを囲うように白く小さな雲が現れ、先の景色が地面に映る転移門が開かれた。
「「それではご武運を!!」」
二つの集団は転移門の先に落下するように、地面の先へと落っこちていく。
そして、名無しは心に決める。
いつの日か化け物をこの世界から抹消し、茜を外に連れて行くことを。
(待ってて。すぐ連れて行くから)
転送された先から名無しは狐の少女を見る。
水の中にいるかのようにぼやけて見える二人と茜の事を思い浮かべ名無しは胸に手を当て誓った。
というわけで第二章完!!一旦一区切り付きました!!
思ったよりも二章が長くなりましたが皆様が見てくれているおかげで書き続けられる事ができました。
これからも皆様の大切な時間に対する対価として期待に添えるような作品を作れるよう、そして無力な名もなき少女の進む道を見ていってください。
「終末世界で明日を見る」設定書で各話で何が起きたか箇条書きで自分が忘れないよう雑に書いています。見ていってくれてもいいですし、見ないでも大丈夫です。
作者の名前から自分が書いた作品が一覧として見れるのでその中にあります。




