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終末世界で明日を見る  作者: がみれ
第二章「霧の街の失踪」

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第三十七話「最後の対人作戦」

 拳を握りしめ炎弐は前に詰めた。

 それに合わせるようにアルストも動く。


「流槍爆!!」


 大きな炎の槍が放たれ前方で爆発し霧が晴れ、拳銃を構えるアルストが露わになる。

 そして感じる風系統の魔力の気配。


(魔力弾!!)


 属性付きの魔鉱石を加工した特殊弾が放たれ、空中で爆散し暴風が炎弐を襲う。


「チッ……」


 相性的に炎を生み出したところで風向き的に押し返されるのが分かっている炎弐は、防御に徹する。対して外傷はないが暴風とともに風の刃が炎弐を襲い、布地が切りさかれ全身に切り傷が刻まれた。


 暴風が止み、前を見るとアルストの姿は消えていた。すぐさま炎弐は無線を手に取った。


「茜、一階の扉を全て開けろ」


 その瞬間、階段の方向から部屋の扉が次々と開けられる。

 風の魔力から気配が掴めず見失った炎弐は探知するため、今いる通路だけでなくフロア一階全てに炎を廻らせるため全力で炎を放出した。


 片目を瞑り、放った自身の魔力とアルストの魔力の微細な反発を読み取ろうと駆け抜けながら意識を集中する。


「流石の手際だな」


 目の前に二つほど、魔力の反応を感じる。おそらく罠をしかけたのだろう。よく見ると鉱物の破片が散らばっていた。

 魔力を込めた足で踏めば、ただではすまないだろう。


「これほどの速さじゃ瞬足は使っていると踏んだが……」


 炎弐の額に汗が流れ、呆れたような笑みが浮かぶ。


「いくらなんでも速すぎんだろ」


 魔力の足跡は既にこの一階全てから感知出来た。暴風で二秒その後を合わせれば約四秒で一階全てを駆け巡ったのがわかる。


 瞬足の際の魔力で居場所を予測するには、痕跡が多すぎてアルストを辿れない。どこにいてもおかしくはないという状況だけが理解出来た。


「扉を開けんのは悪手だったか?」


(それか俺の作戦があからさますぎたか……)


 さっきから無駄に炎をばら撒いていた理由を察知されているかもしれない。その考えがよぎるも、たとえそれが分かっていたとしてもここで勝負を放りなげるような人ではないと炎弐は次の手を予測した。


「俺がいんのは通路の真ん中。通路の分かれ道、死角から現れ銃を使ってもぎり間に合う」


 そのことが分からないアルストではないだろうと炎弐は考察する。


「あいつの考えはなんだ?」


 昔を思い出しやりがちな手段や考えを振り返る炎弐。


「固定観念を利用した視野の縮小。戦略は己の見ている、想像の範疇からでしか予測できない。何度もそう言ってたな。今ある固定観念はなんだ?」


 能力の性能の虚偽。武器の所持数。仲間の数。

 考えればいくらでも感覚で相手の情報を決めていたことが分かる。


「いや、アルストの居場所?あいつが一階にいる保証、いやそもそもあいつの狙いは俺ではなく」


 その時天井が粉々になり、二手持ちの鎌のような大きな刃を持つ槍が現れ青白く光る。アルストが二階から突き出る姿が露わになる。


重夢世界かさむせかい


 光がより輝きを強め武器が重なったようにぶれる。その輝きは一度目よりも強く、魔力量は先ほどの3倍近くある。当たれば確実に死ぬその攻撃に炎弐は全身に危険信号が走るもその場で魔力を操作した。


 両手、両足それぞれに手は炎による推進力、足は瞬足に意識を集中させ魔力を最大まで濃縮した。


(焦るな)


 いつだってアルストは頭を動かせと言っていた。どんな時でも心が揺れ動揺していながらも思考の一つは常に冷静にと何度も。


(まだだ)


 コンマ数秒の刹那。互いの魔力は更に高まり刃は近づく。緊張で心臓の音がするも、集中はただひたすら刃と自分の距離を正確に把握することに専念し、聞こえなかった。


 自身の魔力が最大まで高まり、攻撃が通らないギリギリまで炎弐は引き付ける。早すぎても遅すぎても余波と直撃で体がバラバラに爆ぜるこの状況は一歩間違えれば死に至る


 体勢を低くし、刃が服を切り裂いた瞬間炎弐は足に力と魔力を込め急加速。爆発による炎とアルストの技の威力を利用し、前方に体が回転しながら宙を飛んだ。


 辺りの光景が一瞬で過ぎ去り、爆音が遅れて聞こえてくる。


 炎で体勢を制御しそのままの勢いで空中を飛びながらアルストがいる通路を見た。


「周囲の温度も上がってる。やるなら次だな」


 炎弐の通り道が風で炎が強まり周辺の空気の温度は約1200度にまで達していた。炎弐は炎に耐性があり、アルストも内側の魔力で死ぬ恐れがあるレベルにまではいかない。だが、それでも温度が上がり続ければ焦りはする。


 アルストの姿が小さい点の状態からどんどん大きく見え、近づいてくるのが分かる。


(アルストは最大十秒まで過去の事象を引き出せる。つまり十秒間は無敵状態)


「逆に言い換えれば十秒間ぶん殴り続ければ攻撃は通るって話だよなぁ!!」


 仮に過去の事象抽出の時間精度が0.5秒刻みだった場合、理論上10秒の内に20回重症を負わせれば相手は倒れる。同性質に近い魔力の反発性質とアルストの重複を除くという言葉から過去の事象を抽出し傷が無くなったその時を未来で再度抽出することはおそらくできないのだろう。


 それに加え炎弐は周辺温度による火傷も考えていた。10秒間のどのタイミングでも継続的にダメージを入れられれば確実に傷は負うと。


 地面に足をつけそのままの勢いで滑り摩擦で床が燃焼し静止した。


「この十秒で全てを終わらす」


 炎弐はフードから手に収まる鉱物の塊を取り出し、アルストは得物を前にただ直進する。


 互いが近づき姿がはっきりと見え、声が聞こえる位置まで近づいたその時、炎弐は無線を手に取った。


「茜!!!」


 無線機によって伝わる命令のない端的な言葉に茜は応じ、アルストの目の前に通路が閉ざされるほどの大きさの扉が現れる。


「無駄だ」


 アルストは武器を振り上げ、扉は意図も容易く粉々になる。それは炎弐が投げた鉱物もろとも。


 赤色の鉱物が真っ二つになり断面が白く光る。直後、鉱物は粉々に空気が焼けるような高温とともにとてつもない爆発がアルストの身を襲った。爆風で材木はひしゃげ吹き飛び、円形の地表がむき出しの空間が出来上がる。


(爆発で一秒は稼げる。残響は残り9秒)


 炎弐はアルストに向かって飛び、そして無色透明の鉱物を取り出した。


「炎流爆!!」


 炎弐の足元から赤い線がドーム状の空間を覆うように流れ檻を形成し、12もの炎の柱がアルストに向かって飛ばされた。


 アルストはそれを全て回避、防御し一瞬で炎弐の首に近づいた。だが、アルストの体は宙を飛ぶ。炎弐の周囲を囲む魔力に気づかず踏み込み、炎の柱の圧によって上に打ち上げられたのだ。


 そして、その期を逃さず展開された炎の柱が一斉に襲い掛かり直撃する。炎の圧力から逃げるのは容易ではない。反夢を使うのにもアルストが殴ったという事象を重ねて行使していると仮定した場合、中では身動きが取りづらく魔力で押し返すにはおそらくためがいるだろうと炎弐は考察した。


「残り五秒。こっからは一か八かだな!!」


 二階の通路に隠れるある人物に視線を合わせ合図し、炎の中心がアルストの魔力の集中によって押しかえされたのを感じ、炎弐は空中に飛び出す。


(あいつに触れた瞬間、俺の敗北が決まる)


 ただの拳で意識が吹き飛びかける威力。その隙に連続で攻撃でもされたらと身震いするも、思えばいつもの訓練でもそれは同じだった。違うのは今は実戦ということだけ。そう思うとどうってことないと炎弐は笑みを浮かべた。


「一本取ってやるよ!!」


 手が届く距離まで近づき炎の隙間から青白く光るナイフだけが見える。

 アルストの姿はどこにも見えなかった。


(感触はあった。残響を囮に使ったな)


 ナイフに魔力を集中させ炎の柱を押し返したという過去の事象を残響で抽出したのだと分かる。炎弐は檻の内に意識を集中し、そして見つける。


 炎で作られた死角を使い真後ろに武器を伸ばすアルストの姿を。


 炎弐は先ほどと同じ、球体に作られた鉱物に魔力を込め、指の爪でアルストの方に弾いた。そして、後ろに体をひねり左手で空中を飛ぶ球体に再度魔力が瞬間的に込められ、微細に変質した球体の魔力と炎弐の魔力が反発し両者は引き離されるように吹き飛んだ。


 炎弐は檻を越え、三階の天井に着地し檻の火力を上げるため囲いを太くし、内部の温度を更に引き上げる。

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