70年ぶりの再会、そして疑惑
翌朝、東通りのカフェ。アザレアは、カトレアと向かい合い、湯気を立てる紅茶をすすっていた。
「それで、私が70年も眠っていた、と」
アザレアは昨日のカトレアの話を、まだ信じられないといった口調で繰り返した。
「ええ、そうよ。あなたは、魔力災害から町を救うために、邪悪で強大な魔力を吸収したの。その影響で、70年もの間、深い眠りについてしまっていたのよ」
「ふうん。まるで、おとぎ話みたいね」
アザレアは紅茶を一口飲み、肩をすくめた。
「けれど、私と過ごした記憶は残っているみたいだから、失われたのは、眠る直前に経験していた数年間の記憶みたいね。」
「先生との記憶はしっかり覚えているわ。私の恩人だもの。でも、先生に教えてもらったその後の旅?の記憶は。やっぱり実感が湧かないわ。」
「信じられないのも無理はないわ。でも、少しだけ老けた私を見れば、時の流れくらいは実感できるんじゃないかしら?」
カトレアは、茶化すように言った。
「先生は以前と同じで相変わらず美人だわ。さすがエルフって感じ。70年ぶりでもすぐに誰か分かったし…ていうか、70年たったのに、まだその自虐ネタやってるんだ。」
アザレアは、あしらうように返答する。
「あらあら。うれしいお言葉ね。あなたも相変わらず、かわいらしいままよ。」
上品に微笑みながら、カトレアは答えた。
「うるさい...。魔女は、魔女になった日の見た目から変わらないんだもの。もう少し大人になってから魔女になれてたら...」
アザレアは少しだけふてくされた表情で紅茶をすすりながら言った。
「そんなことはさておき。昨日、掴みかかろうとしてきたあのドワーフ?あと、ニゲラっていう人?彼らは一体、誰なのかしら?」
アザレアはカトレアに向き直って聞いた。
「レスター、そして…ニゲラの事ね。彼らは、かつて、私たちと一緒に旅をした大切な仲間だったのよ」
カトレアは表情を引き締め、ニゲラの名前を口にした。
「仲間...でも、ごめんなさい。私、本当に、何も覚えていないの」
アザレアは淡々と答えた。
カトレアは悲しそうな瞳でアザレアを見つめた。
「あなたは、昔から、あまり人に心を開かない人間だったわ。唯一、あなたと気兼ねなく話せる人間は私くらいだったもの。でもね、ニゲラという青年と出会ってから、あなたは少しずつ変わっていったのよ。私以外の誰かと打ち解けていく姿を見て、本当に嬉しかったのを覚えているわ…」
カトレアは、昔を懐かしむように、遠い目をしながら語った。
「ニゲラは、本当に優しい青年だったわ。誰に対しても分け隔てなく、いつも笑顔を絶やさなかった。そして、彼は、あなたの事を、誰よりも愛していたわ…。」
カトレアはそこで言葉を区切り、少し寂しげに微笑んだ。
「そう。でも、やっぱり、魔女と仲良くしたい人間がいるとは思えないわ。」
「…そうですか。でも、ニゲラは本当にあなたを慕っていましたよ。」
カトレアは、寂しげに言った。。
「物好きな人がいるのね。魔女なんて厄災の象徴としてしか見られていないと思っていたのに。」
アザレアは、紅茶を飲み干すと、立ち上がった。
「今日は、ありがとうございました。」
「アザレア。ニゲラは本当にあなたを慕っていたわ。そして、故郷の代わりにあなたを傷つけてしまったことをずっと謝りたがっていたのよ。」
カトレアは、一人、テーブルに残り、カフェを後にするアザレアの背中を見つめていた。
その表情は、どこか、寂しげだった。
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