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目覚めと失われた記憶

「来ないで!いやだ!死にたくない!誰か助けて!」


「娘がまだここにいるんだ!頼むから!止まってくれ!」


必死に叫ぶ声が町中から聞こえてくる。家屋の瓦礫に押しつぶされ動けなくなった者、強風でとばされて意識を失った者。


空を覆う、どす黒い強大な魔力渦が轟音をたてながら、町を飲み込みこもうとしていた。


それは、人々の絶望と悲鳴を朝笑うかのように、さらにその力を増していく。町は壊滅的な被害を受け始めているところだった。


丘の上で、町が飲み込まれる様子を見ていたアザレア一行は、ただ、町が飲み込まれる様子を呆然と見ていることしかできなかった。


「これはいかん!魔力渦がここに来る前に逃げるぞ!」


レスターが、必死の形相で叫ぶ。しかし、ニゲラは、その場から一歩も動けずにいた。


「なんで…なんで僕の町が…誰か!!誰か!!」


ニゲラの悲痛な叫びが、轟音にかき消される。もはや、止める手立てはないと誰もがあきらめていた。


しかし、アザレアは、静かに、しかし、強い決意を秘めた碧眼で、どす黒い強大な渦を見据えていた。


「私が止めないと。」


アザレアはゆっくりと魔力渦に向かって歩みを進めた。しかし、カトレアがそれを制止した。


「アザレア。行ってはいけない。」


しかし、師の制止をよそに、手を払いのけ、アザレアは歩みを進めた。


「アザレア!!」


カトレアの声が轟音にかき消される。


「先生。立派な弟子になれなくてごめんね。」


アザレアは、ゆっくりと手をかざし、その身に、邪悪な魔力を吸い込み始めた。四肢を引き裂くような激痛が全身を駆け巡る。強大な魔力が急速に窄み、アザレアの体に取り込まれていく。アザレアの意識は遠のき、走馬灯のようにアザレアの脳裏を旅路の記憶がよぎる。


―― 楽しい旅だったな...


「アザレア!死ぬな!アザレア!」


必死に叫ぶ、ニゲラの嗚咽まじりの声がかすかに聞こえる。


―― ごめんね。ニゲラ。でも、守れたね。あなたの町。


アザレアの意識は、闇へと落ちていった。



*******************************



 瞼をゆっくりと持ち上げると、ぼやけた視界に、見慣れない天井が映った。夢の残像が、まだ、心の奥底で揺らめいている。


―― 私は...一体...


夢と現実の狭間を彷徨っているような不思議な感覚の中、アザレアは、ゆっくりと体を起こし、周囲を見渡した。


そこは、簡素な作りの、小さな部屋だった。木製のベッド、古びた机、そして、壊れたままの時計。見慣れない風景が広がっている。


ベッドの横には誰かが椅子に腰かけ、本を開いたままうたた寝をしている。


「先生?...」


カトレアがうたた寝から目を覚ました。


「アザレア?...起きたのかアザレア!」


そう言うと、カトレアは急いで部屋を飛び出してしまった。


いつもと違うカトレアの様子にアザレアは困惑した。依然としてアザレアは自分の状況を把握できないままだった。


しかし、突然、瞼が重くなる。眠気に耐えかねたアザレアはもう一度ベッドに倒れこんだ。


―― 一体何が起きたんだろう...



*******************************



ゆっくりと瞼を開いたアザレアを、温かい眼差しが迎えた。


カトレアとレスターが、アザレアの顔を心配そうに覗き込んでいた。


「アザレア、気分は悪くない?」


カトレアが優しくアザレアの頬に触れた。

アザレアは、頭がぼんやりとしていたがうなずいた。


「アザレア。あなたは、70年前の魔力災害の日からずっと、深い眠りについていたの」


カトレアが、静かに説明する。しかし、アザレアは、その言葉の意味を理解できなかった。


「魔力災害…?私、何も覚えていない。」


アザレアの言葉に、カトレアとレスターが顔を見合わせる。

すると、レスターが恐る恐る問いかけた。


「…俺のことは分かるか?」


レスターの問いかけに、アザレアは首を横にふった。


「あなた、誰?知らない人。」


レスターは焦りを隠せない様子でアザレアに詰め寄る。


「まさかだが...ニゲラのことは覚えているだろう?」


しかし、カトレアがレスターを制止した。


「レスター、落ち着きなさい。アザレアは、おそらく、記憶を失っているわ。」


カトレアが、レスターを諭す。レスターは、唇を噛み締め、苦悶の表情で部屋を飛び出してしまった。


「先生…?彼は、誰?それと、ニゲラと言っていたわ。」


アザレアがカトレアに問いかける。


「レスターとニゲラは......いいえ、いいのよ。今日は、ゆっくり休みなさい。明日の朝、また迎えにくるわ。そしたら、一緒にお茶でもしましょう。」


カトレアは、そう言い残し、どこか寂し気な表情で部屋を後にした。


アザレアは一人、部屋に残された。

窓の外はどんよりとした重い空気の中、雨が煙る。

70年前の魔力災害、レスターというドワーフ、そしてニゲラ…。

一瞬の出来事でアザレアは混乱し、疲労した。


―― 一体、何があったの…?


アザレアはもう一度、眠りについた。







最後まで読んでいただきありがとうございます!

まだ、文章構成や心理描写、シーンの作り方などつたない部分もありますが、お手柔らかにお願いします!

コメントやポイントなどリアクションいただけますと執筆に励みになります!

ぜひぜひ、ご意見いただければ幸いです!

よろしくお願いします!

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