第95話 惨劇の伏魔殿(パンデモニウム)
───人間界においては魔族達の住み処としている領域において、不干渉条約を極秘に結んでいる。何故なら人間界において非戦闘の魔族が安定して暮らせるように制定された条約である。基本、人間界で暮らしている魔族は気性が穏やかな者で構成され、滅多に人間に危害を加えない。
が、魔界から直接、出現する魔族は気性は荒く、あらゆる理由で人間を襲うことはあるが、それは人間とて同じ、理由は主に経験値稼ぎや素材の入手など。
もし、人間側の者が不干渉条約地帯に入り、条約を破れば死罪と見なされる。
───冒険者達は冷や汗を流し、青ざめた。何故ならこれは異常事態であり、不干渉条約違反一歩手間、依頼者が彼らに依頼したのは明らかな一方的大虐殺。
「貴様、これはどういう事だっ!!こんなの聞いていないぞっ!!」
リーダーの冒険者のレオナルドは怒りに震え、訴える。
「おや、受けないのですか?」
フードで表情を隠した依頼者は尋ねる。その口振りから見て、同じ人間としての生気が宿っているとは思えない…………。
リーダーの冒険者レオナルドは直ぐに決断。
「不干渉条約の地帯だ、前金を返すから、この依頼は取り消させてもらうっ!!」
レオナルドの決断に、パーティーはこの場から逃げるように去ろうとする。しかし。
「おやおや、前金を払っているのに敵前逃亡とは関心しないね?」
フードで表情を隠した依頼者は詠唱、来た道に魔法障壁を出現させる。
「貴様っ」
冒険者パーティーは戦闘体勢、相手はかつての依頼者、奴は人の皮を被った悪魔だ。
「まずは、私の言うことを聞いてもらおうか?」
フード付きの依頼者は指を差し、さらに唱える。すると冒険者パーティー達の足元に黒い詠唱陣が出現、同時に額には(黒羊)の形をした暗示がかけられる。
「がはっ…………」
額に暗示をかけられた冒険者達は硬直し、自我を持たない状態であり、逆らえない。そして頭の中に浮かび上がり、炎の刻印のように燃え盛る赤い文字の(命令文字)。
この住み処にいる野蛮な魔族を…………
一人残らず皆殺しにしろ…………。
「イセス…………サァ…………」
冒険者達は武器を構えて振り返り、非戦闘魔族の住み処に身体を振り向かせ、操り人形のように1歩、1歩と歩を進ませる。
「さて、仕事を始めようか?」
フード付きの依頼者は、表情を隠しながら口元に笑みを浮かべ、皆殺しに足を運ぶ彼らを見守るのである。
───そこから響かせるのは、穏やかに暮らす魔族達の断末魔の叫びである。戦闘を好まない彼らはただ、斬り殺され、矢を射貫かれ、燃やされ凍らされ、槍で突き殺され、一方的に虐殺されるだけ。




