第86話 情報を提供される宗平(そうへい)
───気を取り直し、リディクラは宗平にある質問を投げかける。閑散とした店内、まばらまばらにくつろいでいる客と、厨房で調理している店主に注文を受けて店内を行き交うウェイトレスらは、奥のテーブルに掛けている2人の会話には興味はない。
まるで2人が見えていないかのように………。
「とりあえず、周りの人達からは俺達の会話を遮断させる異能を使わせてもらった。内容が内容でな、聞こえないだろう」
「魔族のくせに随分と用意が良いんだな?」
と、皮肉を言う宗平。
「魔族は人の心の闇に入り込み、陥れる種族だからな………。それで本題なんだが、お前はここ最近、変わった事に気づかないか?」
リディクラは尋ねる。
「変わった事?………わからん」
宗平は言った。何故なら普通に暮らしているから。宗平の答えに、リディクラは呆れた様子で。
「………まぁいい、魔族が多く出没するようになった事だよ。分からないか?」
「そうだな………知り合いのクエストに手伝ったりすることもあるが、確かに魔族の出没が少し多いように感じるな………」
宗平は言った。初めの頃、確かアリシアを乗せて町に向かう途中で遭遇した事、次はイーストカロライナタウンでの誘拐事件、そして山岳の町ガレスで討伐クエストだ。そこでカラス型の鳥獣人の魔族と遭遇した事だ。
するとリディクラは言う。
「魔族の俺が言うのも何だが、魔族はあまり人里には出ない。普段は人間界に不可侵の領域を作り、ひっそりと暮らしている。ま、悪さをするのは一部の魔族だが、基本は悪事は働かないのが普通だ」
「けどお前は、人を誘拐してそれを使ってモンスターを生み出そうとしたじゃないか?」
宗平は指摘。
「アレは反省しているし、もうしない。魔族の俺が言うのも何だが、それは信じてくれ」
リディクラはお願いする。しかし宗平は不粋な表情を浮かべる。
「どうかな。この前、アリシアに変な色目を使っていたよな?」
「アレはその時のノリだ、本気にするなよ………とりあえず、友好の証として何か情報を教えてやるから、それで勘弁してくれないか?」
リディクラは提案する。リディクラの提案に、宗平は言う。
「ま、いいだろう。その情報とは何だ?」
「この前、お前達が山岳の町ガレスで討伐クエストをしていた時、そのモンスターの骸に呪印があった。この呪印は魔族しか出来ない特有のモノで、主に操る異能だ」
「つまり、工作があると?。まず、驚いたのはあの時、お前いたのか?」
「偶然、遭遇したからついな。別に危害をするつもりも無いし、咄嗟に後をつけただけだからよ………」




