第83話 お姉ちゃんのクッキー
───台所にて、沸騰するヤカンの音が響かせる。
「こぉ~~ちゃさん、こぉ~~ちゃさん。みんな仲良く美味しくなぁ~~~れぇ~~~」
そして台所にて、エバは上機嫌に鼻唄を歌う。自宅のアトリエにてブレンドした紅茶葉をケトルにパラパラと入れ、コポコポと湯を注ぐ音。それは楽団を指揮するオーケストラのように…………。
テーブルに腰掛け、台所から聞こえるエバの声に耳を傾ける宗平。
「エバさん、とても楽しそうですね…………」
アリシアは、エバの鼻唄に微笑む。
「ああ、聴いていて癒されると言うか…………妹とは大違いだな」
頭の中でレイナの姿を想像し、宗平はクスクスと笑う。
「呼んだ?」
「そうそう…………こんな感じで。ってレイナ、いつの間にっ!!」
横に視線を傾け、宗平はビックリしてイスから立ち上がる。何故ならいきなり妹のレイナがいた。
「私達もいるぞ」
「そして私もですの」
追加でリアーナとミラ。3人はいつものように転移の光玉で転移してきたのだ。
「よし、生きてるな…………」
「今日も異常なし。ですっ」
リアーナとミラは、パンっとハイタッチ。
するとレイナの鼻腔に甘い香り。それは懐かしい香ばしい匂いだ。
「くんくんくん…………この香り、お姉ちゃんの紅茶…………あとこの香ばしい匂いは…………」
レイナは嗅覚をクンクンと利かせる。
「お待たせしました…………」
紅茶を淹れたティーカップ、そしてエバ特製クッキーを入れて。
「あ、お姉ちゃんだっ」
レイナはエバの後ろから抱きつき、スリスリと頬ずりをする。
「こらレイナ、くっつかないの…………」
抱きつかれるエバは頬を赤くし、恥ずかしい表情を浮かべる。
「あ、お姉ちゃん。クッキー焼いたの?頂きっ」
レイナは皿に盛り付けられたクッキー1個ににひょいっと手を伸ばし、口に運ぶ。
「コラ、レイナっ」
「イシシシシ…………お姉ちゃんのクッキー…………」
レイナは一瞬のスピードで移動し、ニシシと笑いながらテーブルに腰掛け、上機嫌に身体をゆらゆらと揺らす。
「もう、レイナったら…………つまみ食いしないの」
エバは微笑み、テーブルに皿に盛り付けられたクッキーと紅茶を置く。
「う~ん、お姉ちゃんのクッキィ~~~美味し~~~」
レイナはポリポリとクッキーを咀嚼し、量頬を押さえてうっとり。そして頭の中で花の輪をくるくると出現させる。
「まったくこの子は…………」
エバは微笑み、ため息。しかし、何処か嬉しい様子で。
「う~~ん、お姉ちゃんの紅茶、とてもうまぁ~~いっ」
レイナはティーカップに注がれた紅茶を飲み、さらに上機嫌に微笑む。




