第5話 始まりはトマト
───そして………生のとうもろこしを食べて決意してからは行動は早かった。
イーストカロライナタウンに一足先に戻り、ギルドで依頼達成の報告してから俺は、町の不動産屋に走った。
「広大な自然に囲まれた広地?」
受付カウンターにて、不動産のスタッフは眼鏡を整え、尋ねる。
「お金はいくらでもある。何処でもいい、何か紹介してくれ」
宗平は前のめり気味に言った。
「そうですね〜〜〜………」
不動産のスタッフは書類のカウンター席に持って来てパラパラとページを開いていく。
───宗平のオーダーに、不動産スタッフはとある書類の束から物件情報が記された1枚の紙を取り出した。
そして、馬車に揺られて連れて来られたのは打ち捨てられた土地だった。イーストカロライナタウンから西の方角、林道を抜けてその先にある広地だ。
「この土地が一番、オススメな立地となります。難点は、町からだいぶ離れている所ですね………」
「うん、これにしよう」
宗平は即決した。
───それから、改築作業に取り掛かる宗平。ボロボロ状態の家屋をまず、独自に建て直し、それからは雑草まみれの広地を耕し、とりあえずは人一人が住めるようにはした。
「ふぅ~…………」
建て直した家屋の中、装備を解除し、半袖長ズボン姿の宗平さ天井に吊した灯りを点け、大の字になって寝転がる。
こんなにも疲れたのは久しぶりだ………昼から勢いに任せて作業をしていたら深夜だ。
「とりあえず、寝よう。おやすみー………」
いびきをかいて就寝する宗平。
───次の日、宗平はクワを片手に、土を耕すのである。
しばらく耕し、良い具合い土となる。
「とりあえず、野菜を育ててみるか………」
まずは、町まで戻って野菜の種を買う事にする。
「何、野菜を育てたい?」
雑貨屋の主人は言う。
「そうなんだ、初心者から出来る野菜の種とかないかなって………」
「そうだな、今は夏だからトマトなんかどうだ?」
「良いな、それを買うよ」
宗平はトマトの種を買う。そして自宅の家屋に向かう。
自宅に帰還した宗平は、耕した土に種を蒔き、水を与えるのである。
「まずは、スローライフの第一歩だ」
願いを込め、期待する。どんなトマトが育つのか、楽しみだ。
───それからは家屋に家具を置き、町で買った食料を備蓄し、必要最低限の生活は出来るようにする。貯金は無くなると思っていたが、土地を買った時に多少は余っている。
「これで、良し。と………」
作業の中、宗平は汗を拭う。これから、大変だけど充実した生活が、今幕を開けるのである。