第58話 1週間後、秋の季節
───そして1週間後、時刻は朝。
あれから町は元通りの平穏な日常を取り戻した…………。季節は本格的に深まる秋、生い茂る木々からは枯れ葉が地面にヒラヒラと落ち、涼しい風が吹き付けるのである。
宗平は、いつも通り農作業。耕した畑から土を掘って苗を引っ張り、じゃがいもを収穫。
「ふぅ…………」
宗平は額から流れる汗を拭い、空を仰ぐ。頬に就いた土、吹き付ける秋の風に、心地よい感覚が全身に行き渡る。
「ハァっ…………うん、大きいサツマイモね」
アリシアは苗を引っ張り、さつまいもを掘って収穫し、カゴに入れる。
───その後、宗平とアリシアは馬車に乗り、町に向かう。枯れ葉が広がる森林道、秋の雰囲気が漂い、馬が歩く際に踏み鳴らす落ち葉の音がパキパキと響かせる。
「アリー。身体はもう、大丈夫なのか?」
宗平は尋ねる。
「はい、大丈夫ですよ」
アリシアは言った。
「その…………もし何だったら、実家に帰ったって…………」
宗平は頭を掻き、心配な様子で言う。それは1週間、誘拐事件に巻き込まれ、怖い目に遭った。彼女にしてみれば、恐ろしい体験であり、下手すれば塞ぎ込んでしまっても不思議ではない。
「ソーヘイさん、そんなに私がいては邪魔ですか?」
ムスっと表情を浮かべるアリシアは、圧を掛ける。彼女の圧に、宗平は申し訳ない様子で。
「いや、すまない。心配し過ぎだな…………」
「うん、分かればよろしいっ」
アリシアは笑顔で言った。
タカタカと揺られる馬車の中、宗平は、何か思い出したかのように口を開く。
「そういえば、君の両親への挨拶がまだだったな」
「えっ!!………両親への挨拶って!」
宗平の言葉にビックリし、アリシアは思わず頬を赤くして視線を向ける。両親への挨拶、それは違う意味の形と受け止めてしまう。
アリシアの表情に、宗平は微笑み、答える。
「いや、違うよ。ただ、預かっている保護者として両親に安心させる為に挨拶をしなくてはいけないから、君はまだ十代、心配するかと………」
宗平は言う。
「何だ………私は、てっきり」
アリシアはホッと胸を撫で下ろする。しかし………何処か、ほんの少しだけ残念な気持ちになる自分がいる。
「何だと思った?」
「いっ………いえ、何でもありませんっ」
アリシアは額から汗。そして両手をパタパタと振り上げ、気が動転したかのように答える。
「そうか………」
───それから数時間後、イーストカロライナタウンに到着。表通りなどに貼っていた数々の行方不明者のポスターは無くなり、平和な町に戻った。




