第55話 駆けつける宗平(そうへい)
───そのとき、鍾乳洞の全体に響き渡る轟音。その衝撃により、天井に尖らせる鍾乳石からはパラパラと塵が発生し、地面に滴る水溜まりに吸い込まれるように落下する。
「何だ?人がせっかく楽しみしようとする最中にっ!!」
楽しみを邪魔された魔族は怒ってぴたりと動きが止まり、後ろを振り向く。
「アリシアっ!!」
鍾乳洞に駆けつけたのは宗平。そして仲間のミラとリアーナ。アリシアは宗平を見て、勇気がある限り声を張り上げる。
「ソーヘイさん、助けて下さいっ!!」
アリシアは思い切り泣き叫ぶ。
「そこか、今助けるからなっ!!」
宗平はアリシアの声に反応し、猛ダッシュして駆けつける。
「あ、貴様っ」と、魔族。
「アリシア、大丈夫か?」
宗平はロングソードを片手に、尋ねる。
「ソーへ…………」
アリシアが声を出そうとした時、魔族はアリシアを片手で取り押さえ、拘束する。
「おっ…………と、動かない事だ。もし、少しでも動けば、この娘の命がどうなってもいいのか?」
魔族の卑劣な行為に、宗平は険しい表情を浮かべる。
「クソ、卑劣な…………」
最悪な状況だ、このまま人質にされたまま立ち去れば、助けられない。
「離してください」
アリシアはジタバタと抵抗し、訴える。しかし、魔族の腕力は人外であり、彼女に振りほどける力はない。
「離すと思うか?」
魔族は意地悪な笑みを浮かべ、言う。するとアリシアはムスっと表情を浮かべる。
「離してくれないと私、嫌いになるから」
「何っ…………」
アリシアのムスっとした表情に、魔族は思わずビクっとなる。さらにアリシアは言う。
「私、乱暴な人が嫌い…………だから、離してください。でないと、アナタの事が嫌いになるから…………」
アリシアは言った。視線をプイッと反らし、ぷくっと頬を膨らませる。
「わかった、わかったから離すから。だから嫌いにならないで…………」
アナタの事が嫌い…………と、魔族はアリシアの言葉に思わず従い、彼女をパッと解放する。
「ありがとうございます…………」
アリシアは笑顔で頭を下げ、スタスタと宗平の隣まて歩み寄って行った。
「ハハハ、どういたしまして…………あっ」
魔族は親切に手を振って見送り、ハッと気づいた、不意に従ってしまった彼女の策略を。
(バカだな、コイツ…………)
魔族の行為に、宗平は思わず困惑する。
「貴様、何て悪い女だ」
「さっき私を人質にしようとしたアナタに言われる筋合いはありません」
「ムムムムムム…………覚えていろ、俺は貴様を諦めたりはしないからな」
魔族は地面に転移の詠唱陣を描き、この場から消えた。




