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第53話 そこは戦慄の景色



「あれ………私、確か………」


 目が覚めたアリシアは辺りをキョロキョロと眺める。感覚はおぼろ気な意識、実感がないのか足元は何処かフワフワとしている。


───自分がいる場所は牢屋のよう所、鉄格子により閉じ込められた状態。視界に映るのは鍾乳洞のような岩肌が壁となり、天井から突き出された鍾乳石からは雫がポタポタと滴り、ジメジメとした空気が充満。


 アリシアは鉄格子を掴み、外を眺める。


───目が覚めたようだね?お嬢さん………。


「ひっ………」


 突然の声にアリシアはビッグリして鉄格子から離れる。  


 現れたのはフードを着用した男性。


「アナタは、町でキャンディーを売っていた………」


 アリシアは気持ちを震わせ、言い放つ。気持ちが震えるのは自分が誘拐されたと実感したからだ。


 男性は答える。


「そうだな………キャンディー売りは1人だけではなく、自分もいるんだよ。そして、私の正体を見せてやろう………」


 フードを脱ぎ、男性の身体がプルプルと変異する。まずは服装が破れて肉体が隆起して肌が破れ、身長が伸びる。そして額から2本の角が生え、鋭い赤い瞳に牙。ラストはコウモリのような黒い翼が後背から生え、透明な養液が全身から滴っている。


「ひっ…………」


 男性の正体は魔族。その変身過程により、アリシアの表情が歪み、恐怖で腰を抜かして尻もちを着く。


「フハハハハハハッ、私が怖いか………良いぞ気にいった、人間の女性が恐怖に歪む姿が好きだ………」


 魔族はグロテスクな牙をさらし、上機嫌に笑いあげる。


「それで………私をどうするつもりですか?」


 アリシアは震える声で質問。生で見た魔族に、恐怖で支配される。数日前、魔族を見た事はあるが、あの時は宗平そうへいがいたから何とかなったが、今は1人だから怖い。


「そうだな、アレを見るがよい………」


 魔族は後ろ向き、指を差す。


 魔族の言葉に、アリシアは鉄格子から差された先を眺める。


「なっ…………何てことを………」


 鉄格子の先の光景に、アリシアは戦慄した。


───それは複数の男女、子供等の一般町民が岩壁に宿るように全身を覗かせ、虫のまゆのような形となった水晶の卵に閉じ込められ、辺りを埋め尽くしていた。


「フハハハハハハ、怖いか?貴様もあのような姿になるのではないかと?………だが、アレは人に魔力を注ぎ込み、我が同胞を作り出しているのだ」


 魔族は怖がらせるように言う。


「同胞?」


「見るがよい、もうすぐ孵化する光景を見せてやろう」


───すると、1体の水晶の卵が不吉のような赤い光が輝きを放ち、そしてピキピキと割れる音が響き渡る。




 

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