第32話 引き上げるセバスチャン
───そして………アリシアによる帰らない宣言に、執事セバスチャンはヨハーソン邸専用馬車に乗り、引き上げていった。引き上げていくその静かな背中は何を考えているか分からない。食い下がって説得してくるかと思っていたが、それは返って不気味である。
セバスチャンを見送る宗平達。めんどくさい奴だから、早く帰ってくれて安心した。
「朝から色々と疲れる人でしたね?………」
(お前が言うか、それを?………)
宗平は心の中でツッコミを入れる。
「でも良いのですか?家に帰らなくても?」
ミラは少し心配そうに尋ねる。しかしアリシアはきっぱりと姿勢で答える。
「はい、こうでもしないとお父様は分からないのです。私なりの抗議の表しなのです」
と、アリシアは言った。
「うん、君の意見は父君にしっかり伝わっていると思うぞ。あとは向こうがどのようにして君と向き合うのかだな………」
リアーナは腕を組み、ここから離れていくセバスチャンの馬車を見送り、言う。
「多分、父上だとここに直接来て、説得すると思います、そんな人ですから。その時は、思い切り自分の意見を伝えたいと思います」
「なら、俺はしっかり見守るよ。必要あればフォローもしるし」
宗平は言った。
「………でしたら、せっかくですからソーヘイさんの畑作業、手伝わせてください。居候させていただいているから、働かせてくださいっ」
アリシアはパンっと両手を合わせ、宗平に視線を送って希望する。
「えっ………」と、アリシアの突然の希望に、驚く宗平である。
───そして。
「それでは、私達はこれからイーストカロライナタウンに戻ってギルド活動をしてきます」と、ミラ。
「ソーヘイよ、間違っても手は出すなよ。アリシア殿は年端もいかない無垢な貴族の娘、もし手を出したら分かっているな?」
リアーナは表情を険しくさせ、グサッとクギを刺してくる。
「しないって、そんな事を………。それと君達にこれを渡しておこう」
宗平は、2人をにある物を手渡す。
「何ですかコレ?」と、ミラは聞いてくる。
「それは召喚の札って言って、もしギルド活動でモンスターと戦っていてピンチの時、それを使うとどんな場所でも俺を召喚し、駆け付けられる便利な道具だ」
宗平は言った。ちなみに召喚の札は前世でやり込んでいた時、所持品のアイテムボックスに100枚ほどある。
「ニシシシ………なら遠慮なく使わてもらいましょう」
「うむ、ぜひとも使わせて頂こう」
ミラとリアーナは企みある笑みを浮かべ、見つめ合っている。いたずら目的で使われない事を祈ろう………。




