第31話 家には帰らない
外には小鳥のさえずりが響き、ヨハーソン邸専用馬車が駐留。そして褐色の毛並みをした馬はブルブルと身体を震わせて唸り声を上げ、地面に広がる草花をムシャクシャと食べる。
───そして、自宅の居間には宗平とミラ、リアーナが集合していた。一方のアリシアはイスに腰掛け、テーブル越しにセバスチャンをムスッと睨み付けている。
「そうですか…………全ては私の早とちりでしたか…………このセバスチャン・スミス、安心しました」
執事セバスチャンは上品にテーブルに腰掛け、スゥ…………と、瞳を閉じて紅茶を口に含む。あれから、何とか誤解が解けた…………理解するのに30分は掛かったので面倒臭かった。
(誰ですか?あの執事?…………)
ミラはヒソヒソと、リアーナに尋ねる。
(アリシア殿の館に仕える執事らしいぞ…………)
リアーナはヒソヒソと、答えた。
「父と母の命令で、私を迎えに来たのでしょう?私は帰らないわよ」
アリシアは言う。セバスチャンは紅茶を口に含み、冷静な口調で言う。
「そうはいきません、お嬢様を館に戻すことが、私に課せられた使命なのです。さ、早く帰りましょう、父上殿も心配しています」
セバスチャンは立ち上がり、アリシアに手を差し出して訴えかける。しかしアリシアはさらに言う。
「嫌よ、お父様は私と顔を合わす度にあれやこれやを言って何も考えていない…………私の人生は私が決めるし、やりたい事があるのよ。だから色々と口出ししないでっ」
アリシアの言葉に、セバスチャンは言う。
「お嬢様…………しかし、父上殿はお嬢様の事が心配で…………」
「その心配が、コレよ。小さい頃から、あの子がどうだとか、この本は読むなとか、他の子が遊んでいる物に、私だけ遊ぶなとか。そして何より、結婚相手も勝手に決めて…………」
アリシアは感情的にヒートアップさせ、今での不満を一気に爆発させる。
「確かに、色々と過保護過ぎるかな…………そりゃ、帰りたくないのも無理はないな…………」
アリシアの気持ちを何となく理解し、宗平は腕を組み、納得するしかない。貴族は金持ちで領地運営も出来るから憧れは少なからずあるが、アリシアのような過保護行為をされたら自分でも嫌だ。
「お父様に伝えておいて、私の気持ちを尊重するまで帰らないって…………」
アリシアは言った。
「ですが、アリシアお嬢様…………」
「帰らないったら、帰らないっ」
セバスチャンの言葉に、アリシアは強い声ではっきりと答えた。
「そうですか…………分かりました。父上殿に伝えておきます」




