プロローグ
農作業をしている青年。年齢は20代後半、髪は黒髪、衣類は麻布製の長袖シャツに作業用ズボンとブーツ。
「ふぅ………」
俺、山下宗平は額から流れる汗を拭い、野菜を収穫していた。時刻は朝、時間帯は10時過ぎくらい。か………。朝早くから畑作業をしているが、かれこれ何時間経過したか分からない。
辺りは広大な自然に囲まれ、青い空に壮快な雲が流れ、神々とした山々がそびえている。
───収穫しているのはじゃがいも。それだけではない、カゴに入ってるのはカブとにんじんなどなど。ただいま、季節は春真っ盛りだ。
「うむ、今年も良い具合に育ってくれたな」
鼻に付いた土汚れ、宗平はじゃがいもを持ち上げ、満足な表情で微笑むのである。
自分が住んでいる場所、町から遠く離れた山間部だ。初めはただの荒れ果てた土地と空き家付きの土地を有り金を払って買い、そして自分なりに家を改築を施し、さらに荒れ果て土を耕し、こうして自由気ままにのんびりスローライフを送ることにしたのだ。買う決め手となったのは、空気の良さと静かな所だ。
さて、次の作業に移ることにしよう。と、宗平は別の棟に足を運ぶ。
───金網の建物の中はニワトリの鳴き声が耳をつんざくほどやかましい位に響き渡る。建物の中の地面にはワラが広がり、埃っぽい空気が充満し、金網には羽が散乱。
「はいはい、ごめんよ~~~」
宗平は軽い口調で、足元を動き回る複数のニワトリ達に言い聞かせるように作業に取り掛かる。
そしてニワトリ達が寝ている場所に手を伸ばし、卵を頂戴する。卵を頂戴しようとすると、ニワトリ達の鳴き声がさらに増し、怒っている。が、そんな事はお構いなし、宗平は黙々と卵を頂戴し、収穫していく。その後は餌やり、餌置き場にコーンなどが入った鳥の餌を撒く。
「うむ、卵も良い具合だ」
卵を頂戴し、頭に付いた羽を拭い、外に出る宗平。カゴには沢山の卵、色味と形が良く、出荷には最適な状態だ。ちなみに、宗平が育てた卵は町の食材屋などに出荷される。
(こうしてのんびり過ごしたいのだが………)
───お〜〜〜〜い、宗平っ。
と、手を振って宗平の元にやって来たのは、栗色の髪と低身長の緑のおかっぱ髪の女の子達だ。
(やっぱり、そうはいかないか………)
ハハハっ………と、苦い笑みの表情を浮かべ、宗平はやって来た女の子達の元に視線を向けるのである。
「感謝しろ、お前の安否確認をしにきたぞ」
栗色の髪の女の子は両腰に手を当て、ビシッと主張する。
「リアーナ、宗平は今日も生きているな?」
緑のおかっぱ髪の女の子は言う。
「うむ、生きている。今日も元気だな」
栗色の髪の女の子は敬礼して確認。
「俺を何だと思ってる?生きているっての………」
困惑するように、宗平はため息を吐く。ああ、せっかくののんびりスローライフが………。