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第百二十二話 地下に行く

 後で修繕するつもりだけどあまり壊さないでもらえると嬉しいなー。

 なんて思ってたのはだいぶ甘かったらしい。ぶちこがあんなのをぶっ放すとは思ってもいなかったってのはあるけど。


「直すしかなくなっちゃったね」

「だよね!」

「ですわね」


 俺のつぶやきにもしっかり応えてくれるのはいつものふたり。俺ひとりなら寂しくて拗ねてるところだ。ふたりの存在の大きさを実感する。


「早くしないと魔獣が入ってきちゃうじゃん」

「迎、獣」

「ま狭いところで戦うのは推奨しねえけどな」

「出てきたって殴ればいいだけさね」


 おっと、その他のハンターの戦闘意欲は高いままだ。興奮しちゃったのか、魔獣をウェルカムで待ち合わせに遅れてる恋人を待ち焦がれているレベルだ。

 戦闘民族ってのが実在してたらこんな感じなのかなって。まぁでも早いとこ直さないと探せないし。


「じゃーちょっと壁から離れててねー。そーれ修繕!」


 がれきになっちゃった壁と思われる物体に触れながらスキルを発動させれば、逆回しみたいに壁や天井が修復されていく。ただ、パイプ類は直っていかない。うーん、この修繕スキルは建物には効果があるけど付帯する設備には無効なのかもしれない。このあたりは検証とかしてないし、わからない部分だ。


「ねーダイゴさん、建物が直っていくけど、壁の材料ってどこから来るの?」

「そういえばそうですわ。気にしなかったのですけど」

「あー、俺も知らないから水神様に聞かないとわからない」


 ベッキーさんがフクロウみたいに首をくにゃっと曲げて、リーリさんが頬に手を当ててそんなことを言うので、俺も考えたけどわかるわけがない。そもそもスキルの原理も知らないしね。

 でも、何にもないところから修理してるんだから、もしかしたら無から有を生み出しちゃってる?

 それって【水】だけじゃできないよね。

 うーん「これ以上はいけない」って本能が告げてるから突っ込むのはやめておこう。俺がさらに「ドツボにはまってさぁ大変」になりそうな気がするんだ。


「おい。こっちに下に行く階段ができたぞ」


 サンライハゥンさんが槍の先で示した方向に分岐があって、どうやらそこに階段がある様子。


「機械室は地下に作りがちだから、ありうる」

「じゃあ行くじゃん!」

「楽、行」


 狐娘ふたりは行く気満々である。というかサンライハゥンさんはすでに階段を下っている模様だ。危険とかの前に好奇心が勝っちゃってるのかもしれないけど安全第一でお願いします。


「下は真っ暗だ!」

「暗、視」

「じゃあ明かりをつけるじゃん! ファイアーライト!」

「目! 目!」

「あー姉さんごめんじゃん」


 階下では漫才でもやっているのか。慌ててないから魔獣とかはいなさそうで、そこは安心だ。ということで俺も階段を降りていく。床は光沢のある何かでできていて、キュキュと音がする。壁には手すりもあって、安全に気を配る余裕のある文明だってわかる。

 でも、学校を思いだすなぁ。


「階段も暗いですわね」

「まっくら!」

「そういえば、明かりの魔道具も直っているのでは?」


 廊下は日が差し込んでてまだ明るかったけど階段は夜の世界だ。リーリさんの言葉に天井を見る。トルエの魔法の明かりが漏れてきて天井が良く見えて……あった。天井にへばりついてる四角い野球のベースみたいな物体がある。一定の間隔で設置されてるから、間違いなさそう。


「天井につっくいてるあの四角いのって、照明の魔道具じゃないかな」

「それっぽいですわ」

「でも届かないよー」


 ベッキーさんがピョコピョコとジャンプしてるけど全く届かない。天井までは3メートルちょいあってジャンプしたところで無理がある。階段でジャンプとか怪我する未来しか見えないけど。


「どら、アタシがいこうかね」


 といったオババさんがひょいっとジャンプして天井に右腕を突き刺してぶら下がった。左腕を伸ばして照明の魔道具を掴んでメリメリっと引きはがした。やはりパゥワーイズパゥワーはすべてを解決する。

 でも、建物を壊さないでほしいなー。


「オババ、壊してはダメですわ」

「壊したって、ささっと直せるんだろ?」

「それでもですわ!」

「まったく、うちの姪っ子は甘やかし屋さんだねぇ」


 なんてことを言ったオババさんが俺を見てくる。甘やかされてる自覚はないけど、この世界だと俺は甘ちゃんだろうからその批判は甘んじて受け止める。批判ってわけじゃなくって揶揄ってるだけだろうけど。


「おかげさまで甘やかされてデレデレですよ」


 と返せば天井にぶら下がってるオババさんはにやにやしながら「ほうほう」」とオババさんが手を放して飛び降りてくる。

 えぇ、ご馳走しましたとも。


「魔力を流せば、ほら明るくなるじゃないか」


 降りると同時にオババさんが魔力を込めたらしく、平たい魔道具がピカっと光る。かなりの光量で非常にまぶしい。天井から光を落とす照明器具って実は強力だから近くで見ちゃうと某映画のM大佐みたいに「目が、目が」ってなりがち。俺も経験があるから間違いない。

 それはそれとして。


「魔力って触らないとだめなの? こう、うりゃって飛ばせないの?」


 魔法は飛ばせるんだからそのもととなる魔力を飛ばすことだって可能なのでは?という持たざる者の嫌がらせのような提案に、ベッキーさんがにぱっと笑った。


「できるかも!」


 ベッキーさんが天井に手のひらを向け「うーーーん、でろ!」というと、ぼんやりした何かがすーっと発射された。ぽやんと天井の魔道具に当たるとぴかっと明かりがともる。


「おおおおおついた!」

「わ、できちゃった!」

「ベッキーさん、実は天才?」


 俺とベッキーさんで盛り上がっていると、リーリさんが手のひらからバシュッという感じでナニカを飛ばして魔道具を点灯させた。


「わたしだってできますわ!」


 ばっと振り向きどや顔なリーリさんが割り込んできた。そうね、仲間外れはだめだね。


「あんたたちは仲がいいねぇ」


 呆れ顔のオババさんがボソッと呟いてた。

 で、地下の照明の魔道具を点灯させまくって探索を続ける。地下空間は、あっさりしてた。

 階段を降りると廊下があるけど突き当りに扉がある袋小路だった。扉は見た感じ重厚で俺が設計の時に見たことがある防火扉がちゃっちく見えるほどの金属って扉だ。

 俺の直感があそこが機械室だと騒いでる。


「突き当りの扉しかないな」


 サンライハゥンさんが槍で扉をコンコン叩いてる。丈夫そうな扉だから中に入っているものを守るためだろうって予測が立つ。もしくは中のものが暴走しても出てこないようにとか。でも不用心に叩くのはよくないと思うよ。


「なんにせよ、中に入ってみよう」

「開けちゃうよ!」

「開けますわ!」


 俺が開けようとしたらベッキーさんとりーりさんに先回りされた。オババさんの顔が「甘やかされてるねぇ」とにやけてる。

 いいんです。これでうまく回ってるから。

 重厚そうな扉はキィっと軽い音ですんなり空いた。まぁ新品だしね。


「中は……真っ暗だー」

「地下ですから、窓もないでしょうし」


 府ベッキーさんとリーリさんが真っ先に覗いたけど、当然ながら真っ暗だ。廊下の魔道具から差し込む明かりで見える入り口付近の床は廊下とは違って砂をまいたかのようにざらついて見える。結構キツメのすべり止めだ。油でも扱うところなのかなぁ。


「魔法で明るくするじゃん!」

「ちょっと待って火はだめ!」

「なんでダメじゃん?」


 トルエが不満げな顔を向けてくる。


「可燃物があるかもしれないから火だと燃えちゃって、最悪大爆発だよ」

「え、爆発は困るじゃん」


 トルエのしっぽがへにょりと垂れ下がった。

 なんてやり取りをしてたらベッキーさんとりーりさんが魔力を飛ばして明かりをつけまわってた。

 明るくなったこの空間は、ともかくだだっ広い空間だった。

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