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ある男の日常

作者: 高木

 目が覚めた。冷たく硬い感触が背中にある。隣には【友人】の姿がある。 少しすると人の声が聞こえてきた。

「【俺】はいるか!」

遠くから聞こえてくる。

「確認できました!」

まったく鬱陶しい。

「おはよう。どうしたんだ浮かない顔をして。」

「おう、外が騒がしくてな。」

「お、誰か来たぞ。」

「【俺】飯の時間だ。外に出ろ。」

まったく俺は家畜かなにかか。 入ってきた男に連れられて机に向かう。 そこにはいつも通りの飯があった。

 その後、何事もなかったようなので帰ろうと席を立つ。

「早く入れ!」

飯の余韻に浸る間もなく元の部屋に戻される、

「おい、今回は随分と乱暴だったようだな。大丈夫か?」

「少し苛立ちはしたが何もなかったよ。」

「嫌だと思うんだったらやっちまえばよかったのに。」

こいつはいつも優しい。

「大丈夫だよ、そこまでじゃない。」

「そうか、ならいいんだ。」

そうして私は次の飯の時間まで待つ。 待っている間は思い思いに過ごす。例えば寝ていたり、【友人】と喋っていたり。ボーっとしていたりあんまり遅いと少し暴れてみたり。ちなみに今日は寝ていた。夢の中で【友人】が化け物に食われる夢を見ていた。起きた時に慌てて周りを見回すと、隣にちゃんといた。俺の焦りが伝わったようで

「大丈夫か?」

と、聞いてきた。

「あぁ、大丈夫だ。少し悪い夢を見ていただけだ。」

「あのう、お昼のご飯の時間となりました。」

担当者が変わったのか扉を開けた先には女がいた。

「あぁ。」

「ひっ!」

まったくなんだこいつはいちいちビビりやがって。

飯を食っている間も化け物でも見るような目で見続けてくる。

「なんだよ。」

「す、すみません!」

確かに少しドスのきいた声になってしまったかもしれないがここまでびびられると流石に傷付く。飯を食った後、あの女連れて行かれ別の部屋の中に入っていった。意味があるのかわからないようなことをいくつかすると、またあの自室に戻っていく。

「遅かったな。」

「あぁ、少し長引いてしまったかもな。」

「【私の名前】、あいつらに優しくする必要はないんだぞ。」

「別に優しくしてる訳じゃないんだが。」

「そうか、お前が我慢する必要はないんだぞ。」

「わかっている。」

そんなに悪い奴らじゃないんだがな

「外はどうだ。あいつらはどうだ。」

「外は楽しいぞ。飯が美味いしな。」

【友人】に奴らの話しをするのは気が引ける。

「お前は本当に食うのが好きだな。」

そこからは他愛もない雑談が続いた。

「おい、時間だ【俺】外に出ろ。」

荒々しい声で呼ばれる。

「おいおい、そんなに強く言わなくてもいいじゃないか。」

【友人】がそう言って怒る。

「早くしろ!遅いぞ!」

段々俺も腹が立ってきた。だが、ぐっとこらえて外に出ようとした時だった。

「なぁ、やっちまえよ。言ったよな、我慢する必要はないってよ。」

【友人】がそう言ってきた。

「なぁ、【俺の名前】、お前だってよぉイライラしてんだろ。」

そう言う間にも叫び声やドアを叩く音が聞こえる。

「そうだな、確かに俺が我慢する必要はねぇな。」

そう言い俺は扉を開けて今日3度目の食事を行った。

この記録は被検体22-16-57の暴走についての記録だ。被検体22-16-57を以下の文章では「彼」と、記述する。

我々は彼を侮っていた。大人しく、従順で危険などない存在だと考えていたのだ。彼は、人間に従順な生体兵器を作る目的で生み出された【データ削除済み】番目の実験体だった。実験は成功したと思われた。だが、失敗だった。順を辿ると、こうだ。

 まず、彼は 元死刑囚だ。脳を手術し記憶を失わせている。彼は高い身体能力を持つ人型の兵器だ。基本的には大人しいが腹を空かせると凶暴になり、周りの人を食い始める。その為一日に3度食事をとらせる。自発的な行動はあまりみられず一人の時は静かにしている。だが、監視カメラの記録によると部屋の中で一人、会話でもするかのように喋っていたようだった。その時に時々口にしていたのは彼の人間だった頃の友人の名前だった。 彼は暴れ出してから4人が死に、6人が重症または意識不明の重体、4人が軽傷を負っている私もいかねばならない。この記録は二度と同じ過ちを繰り返さないように後世に残す。

そう、次からは失敗などしないように残すのだ。


                    被検体22-16-57の記録係による暴走についての記録

    

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