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その2 町へ

その2


オーク5体をあっさり倒した私は、収納魔法に死体を全部入れておく事にした。


オークやゴブリンなど人型の魔物の肉は基本的に食用にならない。


ただ牙や内臓の一部が何かしらの薬や道具の材料になったり、魔物の体内には必ずある魔石も使い道があるので売れたりするのだ。


大きさや質で価値はピンきりだけどね。


本来狩人や冒険者、時には商人なんかも剥ぎ取りをするけど、魔石や牙以外、何にどんな価値があって売れるのか私には全く分からない。


高位の魔物やレアな魔物なら、かなり高値がつくだろうとは思うけど、やっぱりどの部位が高いとか役立とか分かんないし。


あ、レアと言えば下手な上位種より珍しい雌のオークは高く売れるかもしれないよね?!


戦闘経験はあるけれど、それとこれとは別ってやつだね。


毛皮のある魔物なら毛皮が売れそうだよなーとは思うけど、うまく剥ぎ取れるかと言われれば無理だ。


剥いだ後の処理方法も知らないしね。


まだまだ収納魔法の空間的に余裕はあるので、冒険者ギルド辺りに持っていけば売れるっしょ?くらいの感覚でいた方が楽だった。


放置することで他の魔物の餌になるのはいいけど、オークゾンビとかになったら嫌だし。


鑑定料とか処理代は取られるだろうけど、それは必要経費だと思う。


天人と違って人種の多くは、ちゃんと学んで研鑽して技術を得ているのだから。


その人たちの技術や知識への対価を支払うのは当たり前だ。


相場以上にふっかけられたら怒るけどね。


血液や小さな肉片に水を掛けて軽く流し、再び森の外へと向かう事にした。


だいぶ森の外側へと近付いて来てるし、少しレベル上げをしようかな?と徒歩で向かうことにする。


ついでに鑑定の魔眼を使って食べれそうだったり薬草かも知れない草や木の実、キノコなんかを鑑定して収納魔法に突っ込んでいく。


家も里も分からないので生活費を稼がないとまずいし。


そーいやお財布も収納魔法に入ってたけど、確認してないなー。


どっちにしても資金は沢山あった方が良いからね。


鑑定の魔眼は鑑定スキルの上位互換と言われている。


例えばリンゴっぽい物を鑑定すると…


名称:森リンゴ

解説:森に生えているリンゴの木になる実。もぎたてなので新鮮。

食用可能だが栽培されたものより味は落ちる。



謎のキノコを鑑定すれば、


名称:魔毒タケ

解説:食べた者の魔力量を一時的に増幅させ、魔力酔させる毒キノコ。多量に摂取すると死に至ることもある。

乾燥させた物は薬品やポーションの材料になる。



みたいな感じになる。


土魔法を使えば根っこも傷つけずに引っこ抜けるので楽ちん〜


その後、別のオークや森魔狼の群れ、岩熊なんかを倒しつつ森の外へと出た。


そうそう、森魔狼と岩熊は初めて見たので鑑定してみた。


名称:森魔狼

レベル:24

解説:森に生息する魔狼の一種。

基本的に群れで生息している。

咆哮による精神攻撃をした後群れで襲ってくる。

素早く身軽に動ける為機動力が高い。

低レベルの植物魔法を使用出来る。

食用可能だが肉が硬く臭みが強い。


名称:岩熊

レベル:36

解説:岩場や森、山などに生息する魔熊の一種。

全身を岩の様な色合いと硬い毛で覆われ、物理攻撃が効きにくい。

爪、牙による攻撃やベアハッグでの物理攻撃と、低レベルの地魔法を使用出来る。

通常時はゆっくりと歩くが4足歩行時はかなり速い。

食用可能だが肉が硬く臭みが強い。



基本的に鑑定はこの位か、もうちょい突っ込んだ内容の情報が表示される。


これは人種に対しても似た感じで、能力値等がそのまま出てくる訳じゃない。


ただ職業や種族、年齢やちょっとした情報は出てくるので、かなり便利ではある。


暗殺者や密偵の人なんかは偽装か隠蔽系のスキルを持っている事が多いらしいから、完璧ではないんだけどね。


他人のステータスを見るには特殊な魔道具やレアやユニークのスキル、あとは特殊なギフトくらいだと言われている。


ただ何故かステータスウィンドウを出した時に、その本人が了承すると許可された人にも内容が見えたりするんだけど、普通家族や相当親しい人以外には見せないのが常識だ。


プロポーズの時に見せるのが流行った時期もあったなー。


物品だと贋作や偽物だとそう表示されるし、薬草と薬草もどきもこれで判別出来る。


あと腐ってたり、毒性がある時も表記されるから、暗殺対策の為に偉い人が頑張って取得している事も結構あるらしい。


3レベル以上の鑑定スキルがあれば、都市部なら生活するのに困らない程度には稼げる超人気スキルだ。


戦闘時も特徴がある程度参考になるし、例えばアンデッドと書いてあれば光や火の攻撃が効果あるなーとかイメージ出来るように。  


そんなこんなで森の中を歩いていたら、夕方前には森の外の草原地帯へと出られた。


ここならそうそうドラゴンに襲われる事もないだろうと、ある程度高度を取って町や村を探してみた。


幾つかの村と大きい町が見える。


記憶が間違っていないならば、この辺を領地にしている辺境伯の領都が結構でかくて発展していたはずだ。


見た記憶とか全く無いけども。


町や村によっては暗くなると門を閉めてしまう所もあり、辺境や魔境の類が近い所なら余計にその可能性が高いので、ちょっと急いで飛んでいくことにした。


町の手前の街道近くに人影がないのを確認して降りると背負い袋を取り出した。


天人族はエルフ以上に人里に姿を現さない。


そうなると何かしら問題が起こることもある。


拐われたりとか、あと天女の伝説なんかがあったりすると、違う意味で面倒な事が起こり得る。


そこで私は人間の女性に変身し、隠蔽を使って天人であることや年齢なんかを誤魔化した。


天人族が生まれた時から持っている能力変身は、人種に化ける事が出来る。

 

天人は作りとしては人間と変わらないんだけど、エルフ同様容貌が美しい者が多く、それに加えてなんかこうキラキラしているらしい。


そこで本人をベースにちょっとキラキラとか天人ぽい容貌を人間に近付ける事が出来るのだ。


体型を大幅に変えたりとかはそこそこレベルが必要だけど、見た目年齢通りの女性になるだけなら2レベルでもギリ問題ないはずだった。


私は髪の色は濃い茶色、瞳の色は紺色の見た目17〜8歳に見える女性になると町の門へと早足で向かった。


町は切り出した石を積み上げて作った高さ十メートルほどの城壁に覆われていて、門も石と金属で作られたかなり頑丈そうな代物だった。


思わず立ち止まり、ぼけーっと城壁を見上げていた私に、複数居た兵士の一人が私を見つけて近付いてきた。


所々金属で補強された革鎧を着て、槍を持った20代前半の若者だった。


「間もなく門を閉じる時刻になります。

町にご用でしたら急いで下さい」


「あ、はい!」


門の前まで慌てて行くと、長テーブルや椅子が置かれた簡易的な受付が作られていて、そこで氏名を名乗ることと身分証明証の提示、そして町に入る理由を求められた。


商人なら商人ギルドの、冒険者なら冒険者ギルドの会員カードを持っているし、町民は門の外へ出る時に仮の住民証を渡される。 

 

村人なら村長から通行証が渡されるし、貴族なら家ごとに身元を証明する物を持っているものらしい。


ただし農家の跡を継がない子供などは特に身分証が出ない事もあるし、紛失する人だってゼロではないから、門前払いをされる事はない。


大抵は保証金を払えば一定期間町の中へ入れるはずだ。 


問題を起こすと捕まる上に、二度と町には入れなくなるけれど…と当たり前のように知識が浮かび上がってきた。


「名前はサラと言います。

冒険者になる為に辺鄙な村から出てきました。

身分証は持っていません」


適当な理由を話すと案外ありがちな事なのか、受付をしてくれた先程の青年兵士の一人が、


「わかりました。

それではサラさん、こちらの板に手を置いて下さい」 


と長テーブルの上に20センチくらいの石版を置いた。


私は言われた通りに右手を乗せる。


「これは嘘を見抜く魔道具です。

今から幾つか質問しますので、全てはいと答えて下さい」


青年兵士はそう言うと、私に犯罪歴はありませんね?とか、町の不利益になる事はしませんね?等幾つか質問をしてきた。


私は先程言われた通り「はい」と答えた。


石版には何の変化も起きなかった。


「ご協力ありがとうございます。

問題はないようなので仮の身分証を発行します。

有効期間は今日から3日間です。

その間にギルドで登録するか、商店など身元のしっかりとした方に保証人になってもらってこちらへお知らせ下さい。

また、期限を超えると更新する必要があり、更新をしない場合、逮捕され町から永久追放となります。

それと仮の身分証発行には銀貨5枚が掛かるのですが大丈夫ですか?」


兵士は慣れているのか淀みなく説明してくれた。


「はい、大丈夫です」 


そう答えつつ背負い袋から出す振りをして収納魔法で財布を取り出した。


なめした革の巾着袋で、他にも幾つか財布が収納空間に突っ込んであった。


落とした時対策で複数入れた記憶がある。


西大陸は一部の国を除いて共通通貨が使われている。


中には国民は国内通貨、外国の人は共通通貨をメインで使っている国もあるらしい。


私は巾着の紐を緩めて中身を確かめた。


大陸共通貨幣の大金貨が1枚、金貨10数枚、大銀貨と銀貨、それに銅貨も10枚くらい入ってる。


銀貨1枚で食事なしの安宿に泊まれるくらいなので、5枚ならそこそこの宿に一泊できちゃうね。 


「こちらでお願いします」


と銀貨を5枚渡し、氏名と有効期限の書き込まれた仮身分証を受け取った。


「はい、確かに。

アルディーヴァ辺境伯領領都ディーアへようこそ!」


「ありがとうございます」


青年兵士がにこやかに門の中へと送り出してくれたので、軽く微笑みかけつつ町中へと入った。


門はメインストリートに面していて、左右に様々な店が並んでいる。


一般的な町ならメインストリートではまず見掛けない武器屋や防具屋、ポーションや備品を扱う店も幾つか見掛ける。


あとは生活用品や飲食店、食料品店や古着屋、雑貨屋、所々に串焼きなどの軽食を扱う露店もあった。


兵士に冒険者ギルドの場所を聞き忘れてしまったが、兵士や騎士よりもちょっと崩した感じで武装している人や魔法使いっぽい人の流れがある方に行けば大体辿り着ける気がする。


そんな感じでぶらぶらとメインストリートを歩いていると、5分程で通りの右手に見覚えのある大きな看板が見えてきた。


脇目も振らず冒険者ギルドへ真っ直ぐ向かえば3分も掛からないだろうね。


縦の前に剣と杖が交差する図柄で、全国ほぼ同じ構図の冒険者ギルドの看板だった。

 

木造のその建物は魔物が多い辺境らしく横幅が30メートルほどで、三階建の建物だった。


通りに面して大きな両開きの扉があったので、私はそこからギルドの中に入った。


夕方だった事もあり、結構混雑しているようだ。


正面から右側は用途ごとのカウンターがあるようだった。


総合案内兼依頼受付が正面に二人分、その右隣には衝立で隔ててある冒険者向けカウンターが6つある。


そして一番右隣には買取専門の頑丈そうな広めの長テーブルカウンターがある。


あとドアの右側の壁は大きな掲示板のようになっていて、様々な依頼が貼られていた。


冒険者用のカウンターには金属鎧を着た大男や革で出来たベストの様な軽鎧を着た男、魔法使い風の女など様々な装備の男女が多数並んでいる。


扉から向かって左側は酒場になっており、そちらにも大勢の人が居るのが見えた。


どちらからも好奇の視線や値踏みするような視線が複数向けられてきた。


私は視線を無視するように板張の床を堂々と歩き、まずは総合案内の受付嬢の前に立った。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。どのようなご用件でしょうか?」


20代前半に見える赤毛の女性がサッと頭を下げてから、ハキハキと訪ねてくれた。


「はじめまして。

私はサラと申します。

要件は3つあるのですが、まずはこれを」


と背負い袋から取り出す真似をして5人分の冒険者カードを取り出した。


それを見た受付嬢の顔が一瞬曇ったけど、すぐに表情を柔らかなものに戻して私の目を見つめて話を促した。


「こちらは冒険者ギルドの会員カードですね。

これを何方で入手されたのでしょうか?」


「魔封じの森にある洞窟で5人の方々の遺体を発見しました。

本来なら遺体も運びたかったのですが、状況的に難しかったのでせめてカードだけでもと思い届けにきました」


私の言葉に受付は深々と頭を下げた。


「ありがとうございます。

冒険者ギルドを代表して、貴方様に感謝の意をお伝えいたします」


彼女の反応を見た冒険者や受付嬢たちも、何となく察したのだろう。


先程の視線が和らぎ、中には小さく頭を下げる人の姿もあった。


「遺体は神々と亡くられた方々に祈りを捧げた後、土に埋めました。

もし必要でしたら簡単な位置はお伝え出来ると思います」


何せ私には斥候スキルがあるのだ。


殆ど飛んで移動していたとは言え、簡単な地図くらいなら作成できる。


「当ギルドの冒険者にそこまでしていただけたとは。   

本当にありがとうございます。

ギルド内の規定により僅かですが謝礼をさせて頂きますので、是非お受け取りください。

また地図に関しても情報料として報酬をお支払いさせていただきます」


冒険者が依頼や探索中に死亡するケースはかなり多い。


特に新人は知識と経験、そして何より実力が不足している為に死亡率がかなり高いと言う。


そしてそれらの遺体や遺品は、アンデッドになったり、人型などある程度知恵のある魔物の武器防具となる事がある。


魔物を倒すはずが新たな驚異を生み出し、そして武具が渡ることで難易度を高くしてしまう事となる。


ギルドとして、そして受付嬢としても、そのどちらもを防いでくれた事に対して感謝の気持ちを示したいのだそうだ。


その上、例え魔境とまで呼ばれることもある場所であっても、冒険者の家族や友人などが遺体や遺品を回収出来る可能性まで示してくれたのだから有難がられるのも無理はないのかも知れない。


収納魔法に収めても良かったんだけど、正直な話知らない人を入れたいとは思えなかったんだよね。


ここまできっちりと感謝されるなら、収めてくれば良かったと反省した。


「謝礼や地図代はもし彼らにご家族がいるのでしたら、その方々に渡していただけませんか?

もしお子さんやお年寄りなどがいらしたら、きっと大変でしょうから。

もしお身内の方が居ない様でしたらら、孤児院に寄付して下さい」


出来るのに遺体を持ってこなかった事が悔やまれて、思わず謝礼をそう断ると受付嬢だけではなくて、聞き耳を立てていた一部の冒険者たちやギルドの職員までが驚いた表情を浮かべていた。


あれ?何かやらかした?


あれかなぁ?


異種族間での差異が出てしまったりしたのかも知れない。


まぁ気にしないでおこう。


私は心の中でそう決めて、別件を訪ねることにした。


赤毛の受付嬢は再び表情を戻して、


「かしこまりました。

早急に家族等の確認が済み次第、手続きをさせて頂きます」


と約束してくれた。


「あの、それとあと2つ要件があるのですが」


私は仮の身分証を提示しつつ冒険者登録を行いたい事、そして薬草などの鑑定及び買取依頼を頼みたい事を伝えたのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今日、見つけて気になり読み始めました。ステータスもチート過ぎず、文章も面白いです。これからのこの作品の更新が楽しみです。 [気になる点] 2話の部分で 門の前まで慌てて行くと、長テーブルや…
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