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その10 ラルと眷属魔法

その10


オークジェネラルは物凄く元気になったらしいけど、私は肉体面はともかく精神的にはかなり疲れていた。 


「サラ様ハ休ンデイロ」


眷属から微妙に命令っぽく言われたので巨大な穴の中にテントを張り、その中で休む事にした。


勿論オークの死体は避けて少し離れた所にだ。


2時間ほどゴロゴロしてたらかなり楽になったので、テントから外へ出るとオークジェネラルがオーク達の死体を掘り返して集めていた。


埋葬したいのかな?と思って聞いたら、


「コレハ、サラ様ガ狩ッタ獲物。

ダカラ集メタダケダ。

放ッテオクト危ナイ。

デカイ魔物クルカラナ」


と答えてくれた。


かなり破損して原型を留めていないものもあったけど、殆ど傷がない死体もそれなりにあった。


オークアーチャーやオークメイジの他に、オークウォリアーなど上位種の死体もある。


崩れ落ちた森の中にもオークたちは居たらしく、血の臭いに惹かれた他の魔物も含めて複数の死体が山積みになっていった。


私は普通のオークの死体からは牙と魔石を取り出し、上位種はそのまま収納する事にした。


オークジェネラルも手伝ってくれたので、結構早く処理が出来た。


何でもオークは同族意識はあるものの、死んだら肉と認識するのだそうだ。


オークジェネラルともなると庇護すべき劣等種として他のオークたちを見ていた節があり、死んだら死んだで仕方ない位の気分らしい。


どちらかと言うと庇護すべき者を守れなかったと言う、自分の至らなさの方が気になっている様だった。


普通のオークの討伐証明部位は40体ほど集まっていた。


森魔狼や角兎、コボルトにゴブリン、槍角鹿などの死体もあり、魔石と槍角鹿以外はご飯として全部オークジェネラルにあげて、オークの死体は燃やしてみる事にした。


まずは収納から薪やいらない布を出し、それを適当に山にした。


「何ヲシテイルノダ?」


オークジェネラルの問に、


「精霊魔法を使おうと思って」


と答えつつ生活魔法でボロ布へ火を付けた。


薪だけだとちゃんと火がつかない事があるので燃えやすい布は大事だ。


オークジェネラルは興味津々といった様子で森魔狼を食べながら私のする事を見つめている。


ちゃんと火がまわり焚き火状態になった所で、精霊魔法を使う。


前回の失敗を糧にして、詠唱をちょっと変えてみる。


「風に舞う小さき火の粉。

熱き火の幼子たちよ。

私に力を貸しておくれ」


決して大物狙いじゃないですよ?と強く主張する事で、低位の火精霊へと声を掛ける。


仰々しさを出来るだけ取り払い、「ね、そこの君。

ちょっと火を貸してくれない?」みたいな気軽な感じで精霊魔法を行使してみたのだ。


精霊魔法は決まった呪文がある訳ではなく、精霊に通じます様にと言う気持ちと魔力を込めて発動させる。


前回はちょっとやり過ぎたに違いない。


オークのオの字もないのにあんなのが出てくるとか、ちょっと焦ってたしね。


焚き火からパチッと爆ぜる音がして、無数の火の粉が舞い上がった。


〈あれ、燃やす?〉


〈燃やしていいの?〉 


幼さを感じる子どものような声ならぬ声が訪ねてきた。


おっし!成功だ!


「ええ、お願い。

不浄なる者になる前に、みんなの炎で浄めてあげて」


私の願いに応えるように、焚き火の炎が勢いを増す。


〈不浄なる者を浄化?

それなら俺たちに任せな。 

消し炭にしてやるぜっ!〉


〈汚物は焼却だ!〉 


〈ヒャッハー!〉


いや待って?


何だか嫌な予感がする。


燃え盛る焚き火の上で火の粉が集い、グルグルと渦を巻く。


いつしか火の粉だったものが炎の柱へと変化して、自らの意思がある蛇の様に身をくねらせオークたちの死体の山へと巻き付いた。


熱気が私達の方へも届いてめっちゃ熱い。

 

冷気に対する耐性はあるけど、熱さには人間並に弱いのだ。


いつしか炎の小山がそこに生まれ、私とオークジェネラルを煌々と照らす。


「精霊魔法トハ恐ロシイモノナノダナ」


いいえ違います。


違うんです…


あっという間にオークたちの死体を燃やし尽くした火の精霊たちは、またな〜と手を振って消えて行った。


僅かな消し炭だけを残して。




収納魔法が6レベルになったお陰で巨岩による圧迫も感じなくなったので、魔石や討伐部位、オークの上位種等を詰め込んでいく。


勿論スキルレベルが上がって新たに増えた時間停止も忘れない。


「そう言えばオークジェネラル、あんたには名前ないの?」


一応眷属なのでため口で声を掛けると、とっても嫌そうな顔をした。


「将軍ト呼バレテイタ」


それ名前じゃなくて種族とか階級だからね?


「毎回オークジェネラルって呼ぶのも面倒だし、適当に分かりやすい名前をつけちゃいなさいよ。

じゃないとショーとかラルとか勝手に名前付けるわよ?」


言ってて私も大概だと思ったので、もうちょっと真面目に考えてみる事にした。


「ラル、カ。良イ名ダ」


マジか。ジェネラルのラルだよ?!


「覚エヤスイ良イ名ダ」


本オークが良いと言うなら仕方ない。


次からはラルと呼ぶことにした。




ラルという名も決まって一息ついた頃、すでに日が暮れ始めてしまいトレントを狩りに行くのが難しい時間になっていた。


「ねぇ、ラル。

トレントって知ってる?

明日はトレントを狩りに行きたいんだけど、何か知らないかな?」


その辺に倒れている細めの生木を次々と水魔法で水分を抜き取って、乾燥した物を積んで行く。


知らぬ間に大剣を回収していたラルは、それをブンブンと振っては乾燥した木を薪に変えていた。


「木ノ魔物ダナ。

ソレナラ沢山アッチニ居ルゾ」


「それじゃ明日案内して貰っていい?」


「構ワン。ソレモ我ノ務メダ」


明日は群生地でトレントを狩る事を決めると、今度は太めの生木から水分を抜いて、ラルへ枝を切り落とすように指示を出した。


冒険者ギルドで売れるとは思って居ないけど、大工さんに材料持ち込みで小屋を作って貰って収納したら、テント代わりになるかな?と思いついたのだ。


出来たら他の加工もしてみたいけど、やり方全然知らないしね。


気付けば薪も丸太も山のように作ってしまい、薪を少し残して他は全部収納した。


また収納魔法のスキルレベルが増えちゃうかもしれないね?!



と言うのも開放されたギフト、【千里の道を翔る者】は、千里の道も一歩からの真逆なもので、常時発動型のギフトだった。 


ベースレベルやスキルレベル、その他諸々経験が影響するものなら何でも上がりやすくする物だった。


その分1日1時間寿命が削られるけど、ギフトが人間に宿った時の事も考慮されているのか、寿命が1200年で大半は青年期な天人族が持つ分にはそこまでキツくもない。


そもそも事故や戦闘、病気で死ぬこともあるからね。


私は収納から適当にご飯を出して食べ、ラルは先程食べたのでいらないらしく、デザートとしてリンゴをあげたら喜んでくれた。


時刻は午後8時頃だろうか?


ラルと交代で寝る事を決めて先に眠らせてもらった。


そして深夜2時頃、私は起きてラルを休ませる。


人種用のテントでは小さすぎて入れなかったけども。


翌朝7時ころラルが起きてきたので、収納からパンや焼いた肉なんかを出してそれぞれ食べた。


水は魔法出だして木のコップに注ぐ。


雑貨屋で適当に複数買っておいて良かった。


「変ワッタ味ト匂イダナ。コッチハ柔ラカイガ美味イ」


そう言いながらも美味しそうに食べている。


肉を焼いて食べる事はあるけど、味付けはほぼしないそうで、ハーブや塩胡椒した肉が気に入ったみたい。


パンは味はともかく歯ごたえがなすぎて微妙らしい。


固焼き黒パンならいけそうだね。


食事が終わると、1つ確認したい事があったのでラルに協力してもらう。


「ラル、実は昨日レベルアップしたんだけどね、その時眷属魔法っていうスキルが芽生えたんだよ」


「眷属魔法カ。聞カヌ名ダナ」 


「まぁそうなんだけどちゃんと芽生えたものだし。

自分の眷属に使える魔法って事しか分からないから試したいんだけどいいかな?」


ラルは何言ってんだと言う顔をして、


「我ノ誓イヲ忘レタノカ。構ワヌ。使ウガヨイ」


と許可をもらったので早速発動させてみる。


実は夜の番をしている時、暇なのでスキルを鑑定してみたら出来たのだ。


名称:眷属魔法

解説:眷属との繋がりを使い行使出来る特殊魔法。

眷属の位置と状態の確認、ギフトと能力値及び一部の能力以外の力を共用出来る。

テイマーや召喚師が覚える事がある。


つまり理屈だけで言えば空飛ぶオーガジェネラルになれたりするのだ! 


共用出来る数次第ではだけども。


飛行適性や飛行練度なんかがないと危ないだけだしね。


「じゃ、試すよ?!眷属魔法発動!」


発動させると頭の中にステータスウィンドウに似た光る半透明な板が浮かび上がった。


収納魔法に似てるね。


位置確認、状態確認、能力共用の3つが表示されている。


位置確認を使うと何となく方角や距離を感じ、状態確認を使うと通常と出た。


凄くアバウトだけど、これくらいの方が楽でいいね。


最後に能力共用を使うとウィンドウが切り替わり、私のスキルや種族特性がずらずらと並んだ。


文字は光っている物と光っていないものがあって、これが共用可能な物と可能な物を示しているのだろう。


残念ながら祈念魔法、精霊魔法、不老長寿や飛行系は使えないようだった。


「んじゃこれだね、変身を選択っと」


選択をイメージすると光が緑色に変わり、使用する眷属を選択して下さいと表示された。


テイマーや召喚師なら複数眷属持ちな人もいるもんね。


私は召喚魔法を使えるから眷属契約出来たけど、他の眷属って居ないかったのだろうか?


召喚魔法は一次契約みたいな感じで使役出来るから、そっちメインで使ってたのかも知れない。


あれ?


表示された名前は2つあった。


フラナヴァータとラルだ。


精霊との契約って眷属化と別物なはずなのに?

 

意味不明だけど弄ると来そうなのでラルを選択すると、私の体が仄かに光ってラルへ光の糸のような物が伸び、背中にピトッとくっ着いて消えた。


光の糸はラルにも見えていて、珍しそうに見ていた。


次は何を共用しよう?


そう思ってウィンドウを戻すけど、全部光が消えてて変身だけが綠色に光ってる。


「1つだけか。まぁいいや。ラル、今私の能力の変身を共用させたから使ってみて」


「フム、サラ様モ人間ニ化ケテ居タナ」


そうでした。


眷属契約の前辺りで変身を解除しめ、そのまますっかり忘れていた。


「完全な他人になるのは難しいから、もしも自分が人間だったらーってイメージすると良いよ。

髪や瞳の色なら簡単に変えられるから、そっちは後で教えるね」


「ムゥ、我ガ人間ダッタラ…」


ラルを光が覆い、シュルシュルと体が縮んでいく。


低位の巨人みたいなサイズだったしね。


光が治まると身長180センチ以上ある筋骨隆々な姿となった。


髪の色は黒に近い茶色で、瞳の色も茶色。


顔はなかなかのイケメンと言うか、私が人間に変身した時に似ている感じだった。


私の眷属だからか、私の変身を共用しているからか、その辺の影響だろうね。


問題はどうみても成人したばかりの幼さが残った顔立ちをしていた。


人間変身して一緒に歩いたら、絶対に弟と間違われるパターンだよ。


「えっ?ラル、貴方何歳なの?」


てっきり中年男性にでもなると思ったのに。


「人間の年齢は分からんが、成人したばかりだ」


「マジかっ?!」


最近驚いてばかりいる気がするよ。


口や喉の形状が変わったからか、声が凄く聞き取りやすくなっている。


てか、腰にぶかぶかになったボロ布と革鎧の残骸がぶら下がっているだけで、ほぼ全裸。


「まぁいっか。

全裸は流石に不味いよね、ちょっと待ってて」


確か記憶にない頃に手に入れた品の中に魔法が付与された鎧がいくつかあったはず。


先日収納を整理している時、記憶にない武器防具が沢山入っていたのだ。


全部鑑定するのも面倒だし、錆びてもいなかったから再び収納へ戻したんだけど。


魔法が付与された鎧やブーツなんかは、状態保存やサイズ修正みたいな謎機能が付いている事が多い。


特にダンジョン産の物はその傾向が強くて、流石に魔法付与されていない鎧なんかにはそんな機能はないらしい。


私がお金を払って鎧や武器を沢山買うとも思えないので、きっと何処かのダンジョンに潜ったに違いない。


てか記憶の中にいくつかそれっぽいものはある。


曖昧過ぎて、一人でなのか仲間が居たのかも思い出せない。


単なる洞窟なのかダンジョンなのかも分からない。


また気分が悪くなると嫌なので頭を切り替え、魔法が付与されていそうな厚手の服上下と革鎧を選んだ。


何となく金属鎧を嫌いそうな気がしたし。


動くと音が結構するからね。


「着てみて」


と手渡すと、多少手間取りつつも身に付ける事が出来た。


厚手の服はハンターや斥候職向けの物だろう。


革鎧もサイズ調整が可能だったみたいで、問題なく着れた。


「能力共用出来て良かったよ。

召喚魔法で呼び出す形にしようかと思ってたけど、冒険者が出入りする森の中じゃ何が起こるか分からないしね」


「人種と戦った事は無いが、他所の森から流れてきたゴブリンジェネラルとその軍勢となら他の者たちと戦った事がある。

我がそうそう負けるとも思えぬな」


成人したばかりだったからねーってすげーのと戦ってたよ。


「勿論、我が勝ったぞ?」


何やらチラッチラッとこちらを見てくる。


褒めて欲しいのかな?


「軍勢を倒したの?凄いね!やっぱりラルは強いんだね!」


「うむ!ゴブリンは不味かったがジェネラルは中々の味であった。

今度狩ったらサラ様に食わしてやろう」


いや、それは遠慮しときます。


ラルはほぼ確実に私より強い。


やりようによっては私でも勝てるかも知れないけど、実は昨日の勝負も負ける可能性の方がかなり高かった。


擬似メテオ計画(高いところから岩を落とすだけ)を思いついて結果的に良かったのかも知れない。


森には大きな爪痕を残しちゃったけど、ラル相手なら仕方がないと思うことにした。


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