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少年とJKと不思議な図書館  作者: 喜郎サ
最終章 異界巡り編
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第六十三話 遺産と可能性



暴君という二つ名は生前に呼ばれたものではない。歴史の中で結果的に国民からそう思われるようになったのが殆どだ。何故なら台頭した頃の指導者というものは国民の人気も高く。信頼されてきた英雄だったからだ。それでこそ臣下(しんか)はついてきた。それが何故(うと)まれる存在になってしまったのか。その理由はいつの世も同じである。欲望に呑まれた人間の業は深いのだ。


侵略戦争を繰り返して。国土を広げて。国を豊かにする考え方。それを悪と思える感覚があるのならばそれはとても平和的で安定した国の生まれの者なのだろう。時代と環境が違えばその感覚も違ってくる。


想像して見てほしい。隣の国も、またその隣の国も、かつては我が国の領土でそこに暮らす民は略奪者である。或いは隣国の民は元々同じ民族で同じ文化を共有している。訳あって分かれてしまったがまた一つの国家として一緒になるべきだ。


そんな想いが母国に暮らす国民にあるのならばその国に生まれた指導者が侵略行為を正当化するのに何の躊躇も示さないのもそう言う感覚を彼らと共有しているからだ。


その行為は見方を変えれば民の宿願を叶える救世主のようである。熱狂と興奮が正しい判断を鈍らせる。やがて指導者は思うのだ。「私こそが世界なのではないか」と。


担ぎ上げられ。邪魔をするものは力で捩じ伏せる。誰もが自分を讃え高らかにその名を叫ぶ。そこから見える景色はさぞかし気持ちのいいものだろう。


国民は全て自分の所有物。更なる野望のために彼らを戦地に放り出さす事は当たり前のことだ。そこで散っていく命の価値など自分のと比べればゴミのようなものである。そんな世がいつまで続くか。溜まりに溜まった不満が爆発する時。暴君は撃たれ権力の座から退()かれる。そんな時代がバカの一つ覚えの如く繰り返されてきたのだ。現代でもそれは人ごとでは無い。


マサヤはこの世界の問題を一度預かり館内に持ち帰った。全員でこの件について話し合うためだ。考えは二つの意見に分かれた。


一方は容赦なく青鬼を殺し心臓を手に入れる案。もう一方は異界を復興してから殺さずして秘宝を手に入れる方法を模索する案。


前者にはナオスケとモトコが賛同し、後者はそれ以外が賛同した。大人と子供の意識の差のようにも見えたが。大人の意見はごもっともだ。それをナオスケが説明する。


「その青鬼は死なないと言ったのだろう。ならば一度殺して心臓だけを頂くのに何の問題もないじゃないか。それで任務は完了だ。他の世界の問題に首を突っ込むのは正直良い事とは思えない」


ごもっともな意見である。誰も反論が見つからない。同じくモトコにも考えがある。


「それに復興するって言ってもそこにはもう何も無いんでしょ。叶わない希望を見せても後が辛くなるだけ。私たちの世界も時間がないんだからね。わかるでしょ?」


しかしそう言われても納得できないものはでいいないのだ。駄々をこねる気はないがミネコは素直な気持ちを伝えた。


「確かにできる事は少ないかも知れない。けどここで見捨てたら私絶対に後悔する」


複雑な想いである。いざ手を差し伸べたとして助けられなかったとしたら。それはそれで後悔が残るだろう。それに妖精の女王の忠告がマサヤと青鬼に殺し合いをさせないためのものだったとしたら。今起きている事は目を仰向けてはいけない気がした。マサヤもカエデも同じ思いである。


一方少年だけは難しい顔で何かを考えていた。一つ引っかかるワードがあったのだ。それは召喚の儀である。それを先祖のネットワークを通じて検索をかけた。するとゲレルの生まれた世界がヒットした。もしかすると「大群の襲来」はご先祖様の故郷である可能性が出てきたのだ。少年はそれを皆に伝える。


「あの。もしかしたら魔法使いが封印した装置を復元すればその世界を救う事ができるかもしれません」


魔法使いの装置。それはこの異界のあらゆる場所に隠され封印されている。召喚の儀もその装置の一つだ。けれど普通ならそれを見つけるだけでも途方もない時間を要する。しかし隠した本人がいれば話は別だ。少年は様々な装置の中から大地を再生させる事にに特化したものを知識から探す。


そして一つだけヒットした。それが緑の魔法使いシータが生涯をかけて生み出した究極の魔法。「深緑の苗」というものだった。そのことを伝える。するとカエデが話に食いついた。


「リクトくんそれってつまり君が行って探すってことかな?」


少年は「そうです」と答えた。するとカエデは自分も行きたいと立候補する。そうなれば我も我もとナオスケを除いた者達が自分も行きたいと名乗り出た。それぞれで理由を持ち寄る。マサヤはカエデを守ると、ミネコはマサヤが心配だと、モトコも少年が心配だと。そう言った。


ならば誰が司令塔になるのだ。皆の視線がナオスケに向いた。まさかそうなるとは思ってもいなかっただろう。冷や汗が頬を垂れる。ナオスケは咳払いをしてせめての抵抗に不安要素を伝えた。


「カエデならまだしも私ではそう長く持たない。条件をつけるならばまず一度にどれぐらい長く制御が出来るか。それをためしてからにしてくれ。やると決めるのはその後だ」


なんだかんだ反対するつもりはないらしい。今後の千手家のために魔法使いの装置に興味があるのかも知れない。異界を救うための大捜索が始まった。

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