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少年とJKと不思議な図書館  作者: 喜郎サ
最終章 異界巡り編
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第五十九話 思い込みと自己解決



進化とは過酷な環境下に適応するために種が上位の存在にアップグレードされる。それは大きな間違いだ。本当はその困難な環境の変化に適応出来なかった種が絶滅によって淘汰され、それに耐え得る個性を獲得していた幸運な個体が奇跡的に生き残り子孫を残した。ただそれだけだ。


かつてこの世界の人類はそんな悩みに追い込まれていた。早すぎるテクノロジーの発展に体が適応出来る個性を獲得しなかったからだ。絶滅と進化のメカニズムを理解する一部の人は思った。人間の選別は近いと。だから生き残るための力を持たねばならないと。


そんな世の中で発光するこの粘体生物はあらゆる環境下で生き残る力を持たされた人造人間だった。つまり元は人なのだ。その名残りで人型を最も安定した形態だと思い込んでいる。そして人類を滅ぼす思想を持つ人間を敵だと思い込んでいる。憐れな生き方を永遠に続けていた。


マサヤはそれとの交渉が決裂したのを確認するとすぐに行動した。相手の攻撃を待たずして取り出した拳銃で弾丸を粘体生物に撃ち込んだ。それは一瞬の出来事だった。ゴウザブロウが開発した粘体生物用凝固弾は説明通りの効果を発揮して標的を戦闘不能へといたらしめたのだ。


ゼリー状に固形化したそれの胸に赤い何かがあった。マサヤがそれをくり抜いて赤い球を取り出す。紛れもなく「思い込みの塊」だと理解した。もうこの迷路に残る理由はない。カエデに連絡を入れて救出を要請した。


ミネコは元の世界に帰った後でも納得出来ない気持ちでいた。あの生物はどうして自分を危険な存在だと言って聞かなかったのか。どうしてすぐに攻撃もせずに躊躇(躊躇)して見逃してくれようとしたのか。その真意は確かめることができない。


ただ彼らが人間のように思考し目的を持って生きていたのは事実だ。自分とは違う生物と出会うことはほぼ不可能な世界でそれを得た感動は少なからずともあったのだろう。逆にその機会を失うのは耐え難い苦痛なのかもしれない。


そんなことを考えているとマサヤが食事を持ってきてくれた。いつもと様子が違うミネコに気を遣って彼なりに励ましに来たのだ。


「ミネコは良くやったさ。他に方法はなかった。だからじゃないが、俺はアソコでお前を守れて本当に良かったと思ってる」


この結果は作戦立案の時点で予想されていたものだ。けれど粘体生物を生かしたまま塊だけを手に入れる方法も確かにあった。だから悪ではない存在の命を簡単に奪う行為に正当性が無いのなら他の道を時間をかけてでも模索したかったのだ。それを間髪入れずに始末した。マサヤが悪いわけではない。ゴウザブロウの記実によると本気を出したあの生物に勝つのはほぼ不可能に近いと言う。まだ油断を見せていたあの瞬間に最も勝機があったのだ。それも無視できない事実だろう。


「私、実は少しホッとしてるんだ。あの生物も1人は寂しいって思ってたと思う」


その気持ちは主観に過ぎない。けれど、もし自分が他者の存在を知った上で永遠に誰とも会うことが出来ない現実を突きつけられたのなら死んでしまいたいと思ったはずだ。そんな寂しい思いを無限に味わい続けるなど普通は耐えられない。だからその人生を終わらせてくれるかも知れない存在と出会ったなら希望を持ってしまうかも知れんない。その後で再び永遠に生き続けるなどもっと堪えられない。だからその思いから解放してあげたのなら少し安心できた。


結局自己解決するしか前に進めないのだ。自分達の行ないに正義がないのは明白だ。明らかな虐殺行為をしてしまったのだ。それは一方から見た感想だけれど生き残るために仕方ないのだと思い込む事で道は開ける。自分の行動に価値を付けるのは他者ではない。最後にそれを承認するのはいつも自分だ。


ミネコはそれ以上何も言わないマサヤが何だかんだ自分を一番理解してくれていると思った。最後にはこうして沈んだ気持ちにケリをつけられる女なのだと彼は知っていたのだ。けれど、だからほっておくわけでもなくいつも側に居てくれる。伊達に幼馴染はやってない。ミネコは元気を段々と取り戻せる気がしてきた。それは自分のためでもあるが彼のためにも成る気がしたから。その立派な肩に頭をもたれ掛けて言った。


「マサヤはさぁ。私のこと好きでしょ…」


マサヤはドキリと一瞬体が跳ねた。喉仏を上下させて唾を飲み込む。下から覗き込んだ彼の耳は赤く染まる。固まったように視線は前を見ていた。そしてその重い口が開く。


「…当たり前だ」


照れと気まずさと本心が複雑に絡んだパッとしない返事である。もっともロマンチストでない彼に気の利いた言葉など求めていない。そこにマサヤらしいさが詰まっている。それ以上に良いところが沢山浮ぶ。そんな彼が好きだ。そう思い込ませてくれる素敵な人だ。

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