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少年とJKと不思議な図書館  作者: 喜郎サ
最終章 異界巡り編
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第五十三話 不死身と新メンバー



不死身の肉体を持つ民族。それが青鬼だった。けれどそれは成人を迎えてから十数年の僅かな時間だけだ。この力を何のために使うか。青鬼の青年はもう決めている。腹を刃物で刺されるなど致命傷である。普通の生物ならば数十分も持たずに絶命するだろう。だが彼は死なない。


青鬼はマサヤを蹴り飛ばした。砂塵の山に激突して砂埃が舞う。腹に刺さったナイフを抜き取った。刃にベットリと自分の青い血が付いている。それを持って賊に切りかかった。けれど手応えは無く人影はもうそこから移動していた。


一瞬で青鬼の背後に回ったマサヤは警戒しながらも豚面を探した。カエデの報告だともうここから逃げ出していると言う。玉座の間から出たマサヤはそれを必死で追った。その背後を本物の鬼が捕まえにくる。子供のごっこ遊びでは無い。


青鬼はその間も家族のことを考えていた。何のために自分はこんな事をしているのか。自分は死ねないから。だからこそ幼い子供達が心配でならない。路頭に迷わすなど考えたくも無い。奴を排除すれば束の間の安息が再び訪れる。問題は山積みだ。


青鬼はマサヤの背中目掛けてナイフを投げた。この武器は自分には向いていない。だから捨てる。運が良ければ当たってお終いだ。けれどやはり避けれれる。それも問題ない。先の壁にナイフが突き刺さりそれで崩壊した後の砂の上に落ちた。彼は透かさず拾い上げて尚も走る。


そんなマサヤは目先に逃げた豚面の背中がようやく見えた。青鬼と同じようにナイフを投げて当てる自信は自分にもない。このまま追いついて一撃を喰らわせてやる。そう言う流れを頭の中でシミュレーションした。


オーク王は背後に迫るフードの男を見た。謎の装備で素性は全く確認できない。その得体の知れない恐怖は彼を死神と錯覚させる。ナイフの切っ先が間もなく自分の背中に届く。もう駄目だと諦めかけた。その時、寸前で刃が止まった。


マサヤは驚く。ナイフがコンクリートで固められたかのように空中に固定されてびくともしないのだ。走った勢いは急には停められない。慣性で身体が派手に転ぶ。他の近衛兵も駆けつけた。絶体絶命である。何とか起き上がり周囲の確認をした。


あれほど狼狽えていたオーク王は調子を取り戻したようだ。威勢のいい事を言った風である。しかしマサヤは何を言っているのかわからない。翻訳用の装備は父ナオスケだけが持っている。何個も用意できない貴重なものだ。


もとより話し合いでの解決は想定していないのだ。これはもうチェックメイトである。マサヤはカエデに連絡を入れた。作戦は失敗だと。それを聞いたカエデは急いでマサヤとナオスケを異界から救出した。


燃えるように熱くなった装備を脱ぎ捨てた。部屋が熱気と水蒸気でサウナのようになる。マサヤとナオスケは既に疲労困憊であった。しばらくは動けそうに無い。「大軍の襲来」は一時保留となった。1日で全ての秘宝が集まるとは思っていない。だから今日はもうお開きだ。カエデはそう提案した。


「お父様。マサヤくん。今日はもう休みにましょう。これ以上は体も心も持たないわ」


図書館を出る事は出来ない。だから館内で寝泊まりする事になる。もちろんそれを想定した宿泊設備が完備されていた。


館内の会議室には広い円卓があった。そこでささやかな夕食が用意される。殆どが缶詰やパックされたカレーなどのインスタント食品だ。全員が席に座り好きに選んだものを食べる。ただ申し訳なさそうな少年がそこにいた。


彼は皆が頑張っている間、別室で邪魔にならないように義母のそばにいてその世話をしていた。けれど何を話すわけでもない。落ち込んだモトコにかける言葉など見つからない。けれど頼られているのは気のせいじゃないだろう。だが明日もこの調子なら自分も攻略に参加した方がいい。そう思って提案する。


「あの。僕やっぱり明日から試練に参加します。お願いします」


千手家の4人は目を合わせる。別にお(あず)けを食らわせているつもりは無い。少年が参加してくれるなら大助かりだ。けれどナオスケが一つ(ろん)した。


「リクトくん。気持ちは大変ありがたい。だが君はもう復活できない。そうだね?万が一の事を考えると君を失う事は私たちの気持ちの面でも世界ためを思っても受け入れ難いんだ。どうか我慢してほしい」


すると終始黙っていたモトコがついに口を開いた。


「世界って何ですか?私の生活は?今何が起きてるの?ねぇ?ガイアは助かるの?…

説明してください…」


彼女は日常の崩壊で錯乱状態だ。その場にいた誰もがそう思った。けれど次の一言で空気が変わった。


「そうしたら私でも何か出来ることがあるかも知れないから」


モトコはずっと考えていた。これが夢ではない事はもう自覚している。意味がわからないのも変わらない。ただ息子が助かり元の姿に戻るのなら何かをしていたい。ただ不安を抱えたまま待つのは彼女も我慢の限界だった。


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