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少年とJKと不思議な図書館  作者: 喜郎サ
最終章 異界巡り編
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第五十二話 無慈悲と青鬼



誰が本当の悪者かなど容易に決めることは出来ない。それ自体が重要ではないからだ。なぜそんな事が起きたのかその経緯を知り理解する事で同じ過ちが繰り返されないこと。その方が重要だ。誰かを責め立てたい気持ちもわかる。自分の落ち度を責め立てたい気持ちもわかる。けれど起きたことは自責も他責も関係なくただ悲しみを淡々と受け入れるほかないのだ。


尾行(びこう)者は怯えていた。死ぬのはやはり怖い。罪深い自分達は裁かれるべきであり今がその時だと感じる。それと同時に命令されてやらされたという気持ちもあった。しかし何方にせよ世界は滅びた。我が母国が飢えて死ぬのも時間の問題である。


彼らにはもう忠誠心などない。守るべき家族も友も皆死んだ。そこで初めて気付いたのだ。私たちは国を愛していたのではない。隣人を愛していたのだと。後悔は無意味だ。そんな思いなど知る由もない。ナオスケは坦々と情報を聞き出した。


「内部の情報を話してもらおう。特に戦闘員の数と配置についてだ」


この余所者に情報を与えるのは国賊に値する。けれどもう苦しみから解放されたい気持ちから彼らを救世主のように捉える。根拠のない主観的希望だ。1人が話し始めると他の2人も口を割った。


兵の殆どは地下に幽閉されている。その者たちは元々敵国の捕虜だ。恐怖、薬、魔術。あらゆる手段で押さえつけて言うことを聞かせている。軍の命令が無ければ動かない。問題は無いだろう。


地上で警備に当たっているのは貴族の出か上級国民のどちらかだ。戦闘経験が浅い者が多くナオスケ達なら脅威にはならない。だが王を守る直属の兵団には気を付けなければならない。死など恐れないぶっ飛んだ奴ら。そんな印象だと言う。


ナオスケ達の存在も既に勘付かれているようだ。不審な人物を見つけ次第尾行し情報を集めるのが自分達の役割との事だ。


けれど警備が手薄になる時間帯や侵入しやすい場所はわからないそうだ。得られた情報はそれまでだ。すると殺されると思った尾行者達が命乞いをする。マサヤも別に命まで取るつもりもない。解放して上げよう。そう提案しようとした次の瞬間。父ナオスケが拳銃を懐から出して瞬く間に3人を撃ち殺した。マサヤはパニックを起こす。


「なぜ!?何故ですか父上!」


父ナオスケはここで多くを語るつもりは無い。ただ息子に最大限の配慮をした。


「マサヤ。お前がこの者達のために悲しむ気持ちはわからないでも無い。だがな私を非難したいならば一度カエデに帰らせてもらえ。話は終わってから聞く。後は私1人でもやるぞ?」


マサヤは父の行いは間違っていると確信を持って言える。けれどこの非情な行動が取られなければ今後の作戦に悪影響を及ぼすのも理解できた。「最後まで残る」そう返事した。


2人は迅速な行動に移る。その必要に迫られた。尾行者を始末した事で自分達の情報は敵に渡らなかったが彼らが帰らないと知れば警戒は強まる。そんな時カエデから連絡が入った。


「ミネコが無事に帰ってきたよ」


朗報だった。妖精の園なら大丈夫だと父ナオスケは言っていたが心配はしていた。けれどまだ続きがあった。


「それで伝言があるの。青い鬼を見たら逃げて。妖精の女王から忠告だよ」


マサヤは「わかった」と了承する。大物からのアドバイスだ。無視は出来ない。詳しい事はわからないが肝に銘じる。


そして作戦は決行された。都に入ったのはナオスケ1人だ。貧民街に門番はいない。ここまでは問題なく入れる。そこから先は警備兵が待ち構えている。その頭を躊躇なく撃ち殺した。もちろん騒ぎは大きくなる。


狙い通り兵が集まってきた。それを次々とヘッドショットを決める。銃弾も無尽蔵だ。そう言った能力を持つ特殊装備を身につけている。つまりこれは誘導作戦だった。


その頃、騒ぎに乗じてマサヤが塀を越えて内側に侵入した。ここからはスピード勝負である。全速力でカエデの示す王の居場所まで駆け抜けた。中に入ってしまえば警備が手薄になっている。父ナオスケが十分に敵を引きつけてくれているのだ。


その隙に壁を縦横無尽に掛けの登る。それは装備の能力だけでは無い。マサヤだからこその動きだ。そしてついに城内に侵入した。その手にはナイフが握られている。必殺の一本だ。王は目の前の壁のすぐ向こう。


そこに全力で突き立てた。壁は砂のように崩壊してその先の玉座に豚面の男が見えた。それが王だと確信する。それは突然の刺客に驚き身を翻して逃げ出す。けれど逃しはしない。一瞬のうちに勝利が見える。絶対に外さない。そしてナイフは刺さった。しかしその腹は狙っていた標的ではない。瞬時に割り込んだ手練がこの場にいた。血が刃を伝って流れる。マサヤが見たその人物の肌は青色をしていた。


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