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少年とJKと不思議な図書館  作者: 喜郎サ
最終章 異界巡り編
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第四十八話 霧と竜王



8冊の本が書見台の上に置かれた。それぞれが別世界を封じ込めている。一般的な宇宙や次元の概念など通用しない理の超法則で成り立つ神の領域だ。


その全てを一部解放する時が来た。あくまで制御化の上だが言う事を聞くかは別の話だ。司令塔に立つのはカエデである。ゲレルが封じ込められていた「迷う者」に手を置き意識を乗せた。思考が超加速をし始める。トランスモードに入った。これで7冊の本を同時に制御できる。最後の試練は今開始された。


妖精、ドラゴン、悪魔、蔓、迷路、大群、精霊、石化。その全てが発動した。けれど今までとは性質が全く違う。世界は一時的に混ざり合い新しい領域を構築した。ここからは本当のサバイバルが始まる。8つの秘宝を手に入れるまで試練は続く。そしてマサヤが前に出た。


「よし俺の出番だな」


トップバッターはマサヤだ。彼の求める宝は竜の逆鱗。それも竜王の特大サイズが必要だ。カエデの全力サポートのもと異界へと転送される。


「マサヤくん。向こうに着いたら近くにロッカーがあるからその中の装備を着てね。標的の位置は私が常にアナウンスするから気をつけて」


マサヤは「了承した」と理解を示す。前もってのシミュレーションは数十回に上る。抜かりは無い。やがて彼は光に包まれて消えた。次に目を覚ましたのは霧の濃い草原だった。月明かりが唯一の光源である。すぐにカエデからアナウンスが鳴った。


「マサヤくん聞こえてる?」


「嗚呼。ちゃんと聞こえるぞ」


世界を跨いでの連絡も無事に確認できた。装備の説明を一通り受ける。今回重要になってくるのはなるべく標的に気付かれないで接近する事だ。そのため戦いに特化した装備では無く隠密に特化している。それを着込んだマサヤは忍者のような装いに姿を変えた。


「本当にこれで大丈夫なんだな?」


「そのはずだよ。絶対に走ったらダメだからね」


マサヤは装備が持つ特殊能力がいまいち実感できない。質感は布にしては固く着心地は最悪だ。皮膚が直接触れる部分が擦れてかぶれてしまいそうだ。けれど我慢して進むしかない。


この草原に漂う濃い霧が竜の隠れ里と呼ばれる所以(ゆえん)だ。計り知れないほど広く何処までも同じ平野が続く。視界は奪われたに近い環境だ。特に恐ろしいのがドラゴンが当たり前のように転々と寝そべっていたりする事だ。そしてそんな視界の悪さをものともしない。何故なら広範囲で高性能な索敵能力を持っているからだ。マサヤがやって来ている事などとうにお見通しである。


すぐに偵察役が霧を掻き分けてやって来た。体長8メートル程度のコモドドラゴン系である。嗅覚も優れているのか犬のように地面を嗅ぎ回っている。しかし近くのマサヤに一切気付かない。一応効果はあったようだ。


それを横目にカエデの指示する方向へ歩く。霧に隠れて様々な種類に遭遇した。肝を冷やしたのは突然馬鹿でかいドラゴンが目の前を横切った時だった。初見ではそれが体の一部とは思いも寄らない。勘で立ち止まらなければ踏み潰されていたとこだ。


やがて竜王の反応がするエリアに到着した。ここからは目視で探すしかない。そう思っていた矢先。野太い声がした。


「フォフォ。来たのう」


見えぬ。聞こえぬ。感じぬ。それがこの装備の力だ。けれどその何者かはマサヤがここに来たのを勘づいているようだ。


「また同じ手は通用せんぞい。どれここかえ?」


すると大きな尻尾をあらぬ方向へ薙ぎ払った。突風が巻き起こり霧に隙間が空いた。その凄まじい全長を計測するのは不可能だ。けれどマサヤには当たらない。


「なんじゃ。違ったかい。ワシの鱗が欲しけりゃもっと近う寄れ。つまらんわい」


どうやら完全にお見通しというわけでは無いらしい。けれどナオスケが考案(こうあん)した作戦はもう通用しないようである。マサヤは自分なりに考えてみた。しかしどうにかして取りに行きたい気持ちが早まる。


竜王らしきドラゴンは首を下ろしあえて逆鱗が見えやすい位置で誘っている。完全に罠だが自分の瞬発能力には自信があった。ギリギリまで近づき掴んで瞬時に転送してもらう。それしか他に思いつかない。それをカエデに見透かされる。


「マサヤくん無理はダメだよ。どうするか決めるから待っててね。」


無鉄砲な兄を止めようとするが言っても聞かない。とりあえず待機。その指示を完全に無視して勝手な行動を取り始める。お目当てのモノが見上げる位置にきた。助走を付けてジャンプ。それしかない。マサヤは自分でタイミングを計り走り出した。


「出よったな虫ケラめ!!」


ドラゴンの首は持ち上がり距離が離れていく。見上げるマサヤに鋭い爪が襲いかかった。けれど逆に踏み台に使われる。マサヤの類稀(たぐいまれ)なる身体能力は今も健在だ。竜の爪と首で二段跳びを決めてそれを見事掴んで見せた。触れているモノがその他の鱗の中で唯一逆さを向いている。紛れもない逆鱗である。


「取ったぁ!!」


宣言と共にカエデは急いで逆鱗ごと回収する。突如、隠し部屋に車の車輪ほどの大きな鱗が現れた。けれどそれは支えなく床に転がった。何故ならそこにマサヤの姿はなく黒く焦げた燃えカスだけが宙を舞うのであった。

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