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少年とJKと不思議な図書館  作者: 喜郎サ
最終章 異界巡り編
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第四十二話 お菓子とハニートラップ



夜の世界で磨かれた鉄壁のハートは大抵の皮肉を容易(たやす)く打ち返した。面の皮が厚いとはこの事か。誰もモトコを止められる者はいない。


当初はマサヤを先生とした各年代の成績トップ同士の勉強会という名目で作戦が始まった。それは撹乱(かくらん)作戦だ。しかしモトコにそんな茶番は通用しなかった。マサヤを狙い撃ちにし。質問攻め会にその趣旨をすり替えられてしまう。


「まさやくぅんわぁ。かのじょとかぁ。いるのぉ?」


マサヤにフィアンセがいるかなど今日はどうでも良い。後ろの方でタブレットPCを渡されて暇を潰していた5歳児ガイアは母の豹変した言動が気持ち悪くて仕方ないようだ。合いの手のように変顔をして「おえー」や「気持ちわるー」などの言葉でモトコを困らせた。


それをミネコがクスリと笑うと険しい表情で彼女を睨んだ。恐らくライバル認定しているのだろう。マサヤとの距離の近さに女の感が騒いたのだ。若さで負ける。女のプライドを最も傷つける行為かも知れない。けれど勝利したのならこれ以上の優越感はないだろう。モトコの際限ない欲望は己の理性を失わせた。


数々の強敵と戦い厳しい試練を乗り越えてもバカには敵わない。モトコはこのメンバーでは手に余る相手らしい。今日はお開きだな。そんな空気が流れた時。ようやく助け舟がやってきた。少年の連れてきた爆弾を処理するには千手家当主の力が必要だった。父ナオスケが(にこや)かに登場した。


「これはこれは良くいらしてくれた。リクトくんのお母様ですね。ご存じかも知れませんが私は千手家当主のナオスケと申します。子供達の勤勉な様はいかがでしたかな?」


ナオスケはモトコを別場所に誘った。優秀な少年を育てた子育ての秘訣。大人同士親同士で話し合いませんか?ワインと共に。そういう提案だ。モトコはどんな甘い汁を吸わせて貰えるのか。心を躍らせ下心満載でその提案に乗る。しかしガイアが駄々をこねた。


「えぇ!?ママー!行くの!」


5歳の子供だ。当然の反応である。モトコは溜息を漏らす。しゃがみ込み愛息子と目線を合わせた。その肩に優しく手を置くと少年を睨みつけて苦肉の策を取る。


「ほら!アソコに…お兄ちゃんがいるでしょぉ?良い子にしてここに居なさい。わかった?」


少年に向かって「宜しく」それだけ言うとナオスケと共に何処かへ行く。ガイアは泣きじゃくる。皆ドン引きである。とてもハラハラする展開だ。多方面に心配があるがそれは()えて言うまい。


少年が仕方なく弟の元に行く。一応兄貴であるがこれまで兄弟らしい関係は築けていない。正直こんな時に何をすればいいのかサッパリだ。


それを見かねたミネコがガイアのお守りに参戦してフォローする。他の人には秘密にしてあるがミネコは幼い男の子を得意分野としている。扱いは熟知していた。


「ねぇガイアくん。これなーんだ?」


何処に隠し持っていたのか両手にはネルネルするお菓子やヤンヤンなお菓子が握られている。それに気を取られた弟くんはいつの間にか泣き止んだ。


「お姉ちゃんと一緒にこれ食べて遊ぼうよ」


何だろう。微かに危険人物の気配がする。けれどそれを悟られる事なく巧みな話術で幼児を懐柔(かいじゅう)する様は見事だ。初めは嫌がっていたガイアもいつの間にかミネコの虜になる。うまく手懐けられていた。


少年並びにマサヤはその手際の良さに既視感を覚えた。恐ろしい女である。手遅れかも知れないが自分も気を付けよう。男子2人はそう思った。


その頃、父ナオスケはシックでこじんまりとしたおもてなし部屋でモトコの相手をしていた。


歴史を思わせるアンティークな家具に間接照明。1人掛けのソファーが向かい合って2脚。サイドテーブルにはワイングラスが置かれていた。そこに執事のポロシェンコが給仕をしに現れる。手には年代物のワインを持っていた。


モトコはグラスに注がれる赤いワインが間接照明の淡い光に揺らぐ様をウットリと眺めていた。彼女は勝利を確信する。この男は必ず私を落としにくる。私はガードの硬い女を演じ時には彼に共感を見せる。次第に虜になって私に夢中になるわ。モトコは余裕の笑みを浮かべる。


すると部屋の扉がノックされた。ナオスケが「何だ?」と用件を聞く。扉越しの使用人は「お楽しみのところ申し訳ありません。お急ぎ伝えたい事がございまして…」と急用を知らせに来た旨を伝えた。特に咎める事なくナオスケは「入れ」とそれだけだ。


入ってきた使用人は誰もが目を奪われる絶世の美男子であった。顔の彫りが深く彫刻のように整った黄金比である。凛々しさと清潔感溢れる容姿と程よい肉付き。実に良い男だ。それは神が創りし奇跡と言っても良い。西洋男子に免疫がないモトコはもうメロメロだった。


男は耳打ちをする。するとナオスケは直ぐに立ち上がりスーツの上着を羽織った。そしてモトコに対して申し訳ない表情を作る。


「モトコさん。申し訳ないが急用が出来てしまいました。勉強会が終わるまでここでごゆるりと楽しんで下さい。では私はこれで」


ナオスケは去り際に男に向かって「彼女の相手をしてやってくれ大事な客人だ」と命令する。男は畏まりましたと頷いた。そしてモトコと目が合うと爽やかなウィンクをして見せる。それは貫通力の高い弾丸となって彼女のハートを貫いた。モトコのHPはもうゼロなのである。


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