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少年とJKと不思議な図書館  作者: 喜郎サ
第三章 光の魔法使い編
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第三十三話 疑惑と希望



祖父が達成した歴代最速の試練攻略。それにはカラクリがあった。千手家が培った禁断の技術は殆ど表に出ない。その一つに死を超越した力があった。ゴウザブロウは死による試練の失敗から復活を繰り返す事によって経験を積み上げた。自分をモルモットにした命知らずな実験で試練に革新的な攻略法が幾つも生み出される。攻略速度が速い裏に歴代最高の死亡回数をも叩き出す狂戦士でもあったのだ。


父ナオスケはそのメリットとデメリットを身をもって教え込まれた。出来ることなら死の経験などするものではない。まともではいられなくなる。けれど少年を救うにはそれしかないのだ。その亡骸を大切に抱き抱えようとするカエデをナオスケが制止した。手に持った箱を見せつけて話し出す。


「その少年はもう抜け殻だ。気の毒だがここに置いて行け。埋葬するなら後にした方が良い。君たちは急いでこれを手に入れてリスポーンポイントに向かうべきだ。この意味がわかるかい?」


リスポーンポイント。カエデ達はそれが何処か何となく察することが出来た。マサヤが利用しようとして使えなかったあの設備の事だろうか。そこには起動させる鍵がなかった。ナオスケが持っていると推測したがその通りらしい。


まだこの男を信用したわけではない。だから聞きたいことが沢山あった。ミネコが(いぶか)しげに質問する。


「ナオスケ叔父さん。なぜここにいるのですか?捕らえられていたと聞きましたが?」


ナオスケは言葉を詰まらせる。日頃の行いの悪さがどんな答えを用いても信用させないだろう。だから誤解を利用するところから始める必要があると考えた。


「ミネコちゃん。そしてカエデ。私は君らを(おとし)めに来たわけじゃない。知っての通り私は人質だ。助かるために取引がしたいだけだ」


真っ赤な嘘である。本当は素直にこの鍵を持たせ直ぐにリスポーンポイントに連れて行きたい。しかしこの子達が私の話をまともに聞き入れる事はないだろう。悪巧みをしてきた人間はその個性を貫いていくことでしか一定の信用を得られないのだ。


カエデはその通りの印象を抱いている。一度深呼吸をして父と対峙する。その視線は疑いを含んでいた。実の親をこんな眼で見る子供に育っててしまった事をナオスケはすまなく思う。それは表情に出ない。張り付いた笑顔がどんな感情をも漏らせはしない。そして数年ぶりに父と娘は会話をした。


「お、お父様。お久しぶりです」


律儀なものだ。初めましてから始まる会話よりも他人行儀な関係性が(あら)わになる。ナオスケの返事はハリボテな父親感を演出するのに精一杯だ。


「そうだなカエデ」


カエデは深く考えすぎていた。それが返ってナオスケの思う壺とは思いもよらない。少年を助けるために力を借りる必要がある。けれど上手い話には裏がある。それが何なのか推理する必要があった。


魔法使いとグルになって何かを企んでいる可能性は低いと見た。何故なら彼は恐らくこの試練を楽しんでいる。わざわざこんな真似はしない。ならどうして父を逃してこの場に来させたのか。それは私たちを館内に入れさえすればその役目を失い父の必要性が無くなったからだろう。そう推理した。


ならば父は用済みと解放されて魔法使いの慈悲で私たちに合わされた。そして危険溢れる試練で生き残るには頼る仲間が必要なのではないか。人質と言ったのは何故かわからない。そこの真相を確かめなければと思う。その考えはナオスケが敷いたレールの上を通るようなものであった。


「私はお父様を助けに来ました。それは本当です。ですが私の大切な…仲間が命を落としてまで助けようとは思いません。ですのでお父様が今どう言う状況か説明してください」


ナオスケはその質問が来ることを予感していた。そこが自分の言動を信用するかしないかの一番重要なポイントだと考えていた。答えは簡単だ。


「知っての通り私はこの図書館の攻略法を全て把握している。だが君らに言う必要はないと考えていた。しかしだ。5冊目と6冊目の本を同時に始める事態は想定外だ。ここから出るには君たちの力が必要不可欠になった。まぁ、そう言うわけだ…」


カエデはその説明では未だ不十分だったらしい。もっと詳しく話せと眼で訴えていた。ナオスケは咳払いを一つして更に続けた。


「…それと。この館内での死人は1人までだ。2人目からは復活できない。正直に言うとその少年が死んでいる状態が邪魔なのだ。これで良いか?」


それは本当だ。リスポーンポイントで復活できるのは1人までだ。未登録なら死亡した最初の1人が復活できるが特定の者を登録すれば自動的にその人物だけがその恩恵を受けられる。そういうシステムだ。


未だ完全に納得はいかないが、今は信じるしかない。カエデとミネコは端の方に移動する。どうするかの話し合いを聞かれないようにするためだ。そして結論を出した。


「お父様。今はあなたを信じましょう。ですが私にはニーナの力があります。変な動きを見せたら承知しません」


カエデはニーナのランスを突き出し脅して見せた。ナオスケが「怖い怖い」と降参をジェスチャーで見せる。白々しいが(とが)める気にはなれない。2人は父を先頭にしてリスポーンポイントを目指した。


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