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少年とJKと不思議な図書館  作者: 喜郎サ
第二章 心の悪魔編
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第十七話 おんぶと地下水路



粉砕骨折は骨が複数の破片状に割れた状態を言う。それは完治後に骨の形が変わりやすく後遺症が残るケースが度々あるとされていた。少年の片足は今そんな状態であった。


「痛かったら言ってね」


「いっ…大丈夫です」


散らばった手頃な枝を二つ拾い骨折した少年の足に布で括り付けて動かないように固定した。


「滑り落ちて骨を折るなんて…気をつけてね」


カエデは4冊目の本を手に取った時からの記憶を無くしていた。覚えているのは試練は既に始まっていることぐらいだ。


何故自分が地下水路で横たわっていたのか少年からザックリとは教えてもらった。けれどそこにどんな危険が待っていて、どうやって切り抜けたのか少年は話さなかった。


「すみません。僕、運動はそんなにでした」


照れ隠しをして笑う少年をカエデは実の弟のように頭を撫でて可愛がった。まるで子犬のようだと思う。いなくなってしまった自分を一人でこんな怪我をしてまで探してくれた事が嬉しかった。これが終わったらご褒美をあげなくてはとそんな風に考えるのであった。


その頃、地上では大変なことが巻き起こり無事に助け出せた事を悠長(ゆうちょう)に構えている暇はないと彼らは知らない。


物陰に隠れるマサヤとミネコ。それは生身の人間には太刀打ちできないほどの追手が近くを彷徨(うろつ)いているからだ。図書館の見取り図を手にした2人は出会い頭にその化け物に遭遇した。その姿に驚く猶予も与えず襲い掛かってきた。加えられた攻撃は壁や柱を余裕で破壊しその一撃の重さを思い知らせた。


ドラゴンの時のような奇跡はもう起きない。マサヤ1人ならこの場を逃げの一手で凌ぎ地下へ続く隠し通路まで走って辿り着けるだろう。だがミネコには荷が重かった。


2人は決断を迫られていた。もうあの方法しかない。マサヤの体力を鑑みてギリ可能だと思われる。敵はちょうど行きたい通路から一番遠い位置にいる。行くなら今だった。


「ミネコ、行こう。今しかない」


ミネコは頷きマサヤの首に腕を回した。いつぶりの事だかもう思い出せない。まだ幼かった時代に何度かその方法で遊んだ覚えがある。しかし2人はもう立派な大人だった。


「これは高くつくからね」


マサヤは苦笑いし「しっかり捕まってろ」と一言だけだった。ミネコを背負い仄かに良い香りと柔らかい感触にマサヤは気付いていたが気にする素振りは一切見せず全力疾走で駆け出した。


追手はそれを見逃すほど甘くない。瞬時にその動きを捉え後ろについた。それは敵側の間合いの少し外側だ。あと1メートルでも追いつかれれば四肢が吹き飛ぶ。ゾッとする話であった。


隠し通路まで道は入り組んでいる。案内はミネコの担当だ。今さら見取り図を読み返している暇はない。記憶の中に残ったイメージを必死に思い出す。覚えは悪くない方だ。きっと思い出せる。それを信じて進むマサヤを失望させたくなかった。


「そこを右!」


目指すは北だ。良いペースで追手を(かわ)している。あと数分もすればお目当ての場所に辿り着けるだろう。理由は分からないが調子が良い。このまま一気に突っ走ってやると2人はアドレナリン全開で頑張った。


その角を曲がった時だった。もう一体の詩客がそこにいたのだ。


「カエデ!?」


それはどう見てもカエデだが上半身だけだ。下半身は花びらである。後ろには上半身だけの少年。意味不明だった。しかしこれは似た別の何かであることはわかる。


カエデの姿を真似たことがマサヤの逆鱗に触れる。だが今それを晴らす時ではない。むしろ絶体絶命であった。


だがカエデ似の方はマサヤをするりと抜け少年の方に一直線に向かった。理由は分からない。だがこれはチャンスだった。二体がその後どうなったかは見ている余裕はなかった。その足で地下への入り口に辿り着いた。


「俺に任せろ」


ミネコを下ろしただの壁を前にする。何か仕掛けがあるのだろう。千手財閥の御曹司であり次期当主と言うだけある。こんな仕掛けは織り込み済みだという様である。


「早く開けてよ」


マサヤは「嗚呼」と一つ返事をした。ものすごい気迫である。野太い息を吐き何かの構えをとった。そして空道黒帯の真の実力が今発揮された。


「った!!」


渾身の中断蹴りを壁にお見舞いし一撃で蹴破った。破片が内側に飛び散る。覗く中は非常灯の灯りで何とか確認できるようだ。それは下へ向かう階段になっていた。


2人はカエデと少年の無事を信じて地下に向かうのであった。

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