復活の炎
そのころ、ハーカとイルレは、未だノラスを待っていた。
「くそ……、まだか」
ハーカは苛立っていた。先程から何も変化がないからだ。
「シャルスさんたち、大丈夫でしょうか」
「……もう我慢できんっ!」
ハーカは立ち上がり、家から出ようとした。
「ま、待ってください!」
「待てるか!ガルアスがすぐそこまで来ているのに……」
と、ハーカの耳が動いた。
「……ようやくか」
そして、ハーカは奥の方を見た。
「え?」
イルレはハーカの動きを見て、同じく奥を見た。
そして、扉が開く音が聞こえた。
「久しぶりだ、ハーカ」
ノラスだ。
「待たせすぎだ」
ハーカは呆れたように言った。
「これで再びノラスは魔法を使えるようになったはずだ」
ノラスの後ろからカイレがそう言った。
「あと、これも持っていけ」
カイレはノラスに腕輪を手渡した。腕輪は朱色染めの革でできており、宝石が埋め込んである。
「これは?」
「魔龍合体の際にそれをつけておくと、より強大な力を発揮できる。だが、その分合体時間は短くなるから気を付けて扱ってくれ」
「ありがとうございます」
ノラスは腕輪を装着し、改めてハーカ、イルレの方を見た。
「2人とも、待っててくれてありがとう。さ、行こう!」
「ようやく暴れられるな」
「シャルスさんたちを助けにいきましょう!」
3人はカイレの家を飛び出し、ハーカの手のひらに乗ってルレオ要塞の方に向かっていった。
「頼むぞ……。ロンツ王国は、お主にかかっている」
カイレはノラスたちの後ろ姿をみて、そう呟いた。
そして、スレードと対面しているシャルス。
恐れをいだきつつも、戦うしかないことは明らかだ。
「ふん。来ないのか?ではこちらからだっ!」
スレードは左手に氷の件を作りだし、シャルスに向かってきた。
シャルスはすぐに電気に変わり、攻撃をかわしてスレードの後ろに回った。
「見えてるぞ!」
スレードは体を捻って右手から氷のトゲを放った。
「うっ!」
シャルスの体をトゲがかすめ、血が垂れた。
「その程度か」
「まだだ!」
シャルスはすぐにスレードに接近し、電気を纏わせた拳で殴った。
スレードはそれを剣で防ぎ、逆にシャルスを斬ろうとした。
シャルスはギリギリでかわし、左手から電流を発射した。
電流はスレードに直撃した。
「ぐ……。はあっ!」
スレードが気合を入れると、簡単に電気が消えてしまった。
「な……」
シャルスは驚き、動きが止まった。
「隙あり!」
スレードはすぐに斬りかかった。
「くっ!」
シャルスは何とか避けたが、スレードは剣を捨て、殴りかかってきた。
シャルスは避けきれず、もろに食らってしまった。
「ぐふっ」
スレードは手を緩めずそのまま殴り、蹴り、次々攻撃を繰り出した。
「最初はやるかと思ったが、やはりこんなものか」
「はー、はー……。まだだっ!」
シャルスは今度は翼に電流を纏わせ、連続で羽ばたいた。
扇のようになった電気の塊がいくつも飛んでいく。
だがスレードは氷の盾を作りだし、それを防いだ。
「ふんっ!!」
氷の盾を水流で加速し、凄まじい速さでシャルスにぶつけた。
「がはっ…」
シャルスは重い一撃を受け、動けなくなってしまった。
その間にスレードはシャルスに接近し、蹴りで地面に叩き落とした。
「ぐっ……」
「ここまでだな。さらばだ。お前の弟には悪いがな」
「クソっ……」
ごめん、ノラス……。
スレードはシャルスに氷の剣を向け、とどめをさそうとした。
が、次の瞬間。
遠くから炎が放たれ、氷の剣を溶かした。
「誰だ!?」
「姉さん!」
「ノラス!?」
そこにはハーカの手から降りるノラスと、イルレ。
「来たか。ロンツ王国元王子、ノラス」
スレードはノラスを知っているようだった。
ノラスを睨み、不気味な笑みを浮かべた。
「お前は!?」
ノラスはスレードを知らない。
ドラサも知らなかったのだから、当然といえる。
「俺はスレード。ガルアスの真の幹部だ」
「真だと?」
ハーカは聞き返した。
「そうだ。今俺と合体しているドラスは表の幹部でしかない」
「表……」
主に行動するのはドラサ、万が一に動くのがスレードということか。
「そんなことよりも、だ。俺はお前と戦いたくて仕方がない」
スレードは不気味な笑みを保ち、ノラスを睨んだ。
「さっきから、何かが近づいてきているのは分かっていた。そして、それは貴様らだった」
「……俺も、お前を倒したくて仕方ないさ」
ノラスの口調は落ち着いていたが、スレードを睨むその瞳には、強い怒りが見えた。
「魔龍合体だ。ハーカ、イルレ」
ノラスはスレードを見据えたまま、言った。
「……分かった」
ハーカはノラスの怒りに気づいていた。目の前の敵の強さにも。
ここは魔龍合体しかないと、確信していた。
「はいっ」
イルレもノラスの怒りに気づき、自分のできることをすることに決めた。
ハーカは人間体に変身し、ノラスの左に立った。
イルレは右に。
「行こう」
ノラスは手を差し出し、ハーカ、イルレは手を置いた。
カイレからもらった腕輪が輝き出し、3人を炎の渦が包み込んだ。