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電撃、氷と水

 ロインとシャルスは超高速でルレオ要塞に向かい、すぐにたどり着いた。


「あれだ!もう攻め込まれてる!」


 ルレオ要塞は堀がなく、城壁で城を囲ってある。城壁の上には砲台が置かれており、また弓兵もそこから攻撃している。

 しかし、城壁には2つの攻城塔がとりついており、またロインたち2人が見える反対側にも2つあるようだ。

 攻城塔からはガルアスの兵士が次々なだれ込んでいる。


あるじ、行きましょう!」


「おう!」


 ロインは一つ目の攻城塔を見据えると、翼を羽ばたかせた。

 すると電流が発生し、翼に溜まっていく。


「はぁっ!」


 ロインが羽ばたくと電流が放出された。

 電流はいくつもの束になり、出現と消失を繰り返しながら一つ目の攻城塔に命中した。

 攻城塔は焼け焦げて倒れた。


「私もっ!」


 シャルスは右手のひらを上に向けた。

 すると小さな電気の球ができ、どんどん大きくなっていく。


「くらえっ!」


 シャルスが球を投げると、球は高速で攻城塔に向かい、命中。

 球からは激しい電流が放射状に放たれ、ガルアスの兵士を軒並み倒した。


「あとは反対側ですね」


「おう!」


 ロインとシャルスは反対側に回ろうとした……が。


「おっと、今度はあなたですか」


 ドラサが目の前に現れた。

 ドラゴンの姿だ。


「ぐ……なぜここにいる」


 シャルスは怒りをあらわにした。

 自分の弟を苦しめた相手を許すことはできない。


「どうやら普通の兵士では手に負えないドラゴンが出たとのことで。急いで駆けつけたのです」


「行くぞ……。ロイン。魔龍合体だ」


「……了解いたしました」


 これほどの怒りを見せたシャルスを、ノインは見たことがなかった。

 シャルスたちは地面に降り、ロインは人間体に変身した。

 シャルスの手にロインが手を乗せると、2人が輝いた。

 辺りにはぴりぴりした空気が立ち込め、ロインは光となってシャルスと一つになっていく。

 シャルスの体は光に包まれながら空中に飛び出し、光が薄くなってくるとその姿がよく見えた。

 髪は黒く、長くなった。

 目はノラスが合体した時と同じ形に。

 服はだいたいシャルスのままのような感じだが、身長は伸びている。


「さ、行くよ」


 シャルスは冷静さを取り戻したが、目の奥には強い怒りがにじみ出ていた。


「2人の合体くらいでは、相手にも……」


 ドラサが挑発する暇もなく、シャルスは懐に飛び込んできた。


「だあっ!!」


 シャルスはドラサに拳を叩き込み、地面に向けて吹っ飛ばした。

 吹っ飛ぶドラサを電流となって追いかける。

 追いつくたびに実体に戻り、殴る。殴る。

 ドラサが地面に落ちると、シャルスは手を合わせ、広げた。

 手のひらの間に電流が発生し、どんどん強くなっていく。

 

「はああっ!!!」


 手を振りかざしてドラサに向けると雷のような破壊力を持った電流がドラスに向かい、直撃。

 辺りには雷で焼け焦げた煙が立ち込めた。


「なるほど……。噂だけの強さではないようですね……」


 ドラサは瓦礫から体を起こし、再び空に戻ってきた。


「ちっ」


 シャルスは舌打ちした。ほとんど効いてないらしい。


「こちらも本気を出すとしましょう」


 ドラサは煙を噴出し、人間体に変身した。


「さあ、行きますよ」


 ドラサは手を前に向け、太い水流を放った。


「こんなものっ!」


 シャルスは軽く避けた。

 が、その水流の中からドラサが現れた。


「いつの間に!?」


「フンっ!」


 ドラサは拳を握り、一撃を加えた。


「ぐっ!」


 シャルスは体勢を崩したが、すぐに立て直した。

 電気となって空間を瞬間的に移動し、ドラサの後ろに現れた。


「おりゃああっ!」


 蹴りをぶつけ、ドラサが怯んだ隙にシャルスは右手を向け、電流を思いっきり放出した。


「がふっ……」


 この近距離で直接流し込まれると、ドラサもさすがにダメージを受ける。


「だあああっ!」


 すかさず拳を打ち込んだ。


「が……。やりますね。さすがにノラス王子の姉というだけある」


「ノラスを苦しめたその罪、償ってもらう」


「罪?私は任務を遂行しているだけです。さて、もっと楽しみ……」


 ドラサが次なる手を考えた、その時。


「おい、ドラサ。ずいぶん苦戦してるようだな」


 地上から誰かが声を掛けてきた。


「主様!」


 ドラサが驚きの声を上げた。

 ドラサが向いた方には、鎧をまとった男が立っていた。

 頭には鎧はつけておらず、短髪の黒髪が見えた。

 鎧は黒で、ところどころに金色の装飾がある。


「ある……じ?くっ!」


 シャルスはその言葉をきき、反射的に電流を放っていた。


「おっと」


 男は手を前に出すと、瞬間的に氷の障壁が発生し、電流を防いだ。

 男が手を戻すと氷は消えた。


「いきなり攻撃とは物騒だな」


「お前……、誰た!」


「俺はスレード。貴様たちロンツの生き残りのことはよく知っている。ドラサ、こっちへ」


「はい」


 ドラサは地上へ降りて行き、スレードの横に立った。


「まさか、主様がおいでとは……」


 ドラサはさっきまでの様子とは違い、平服している。


「ずっと前に近くの砦には着いていた。戦いの音が聞こえたんだ。さて……と」


 スレードはシャルスを睨み、微笑した。

 その笑顔に、シャルスは恐怖を感じた。なんなんだ、こいつは。


「久しぶりに楽しめそうだ」


 スレードはドラサに手を置いた。


「魔龍合体っ!」


 シャルスは防ぐべく、先程と同じように手を合わせ、強力な電流を作りだした。


「だあああっ!」


 電流がスレードの方に向かっていった。

 が。

 スレードの体が水流と氷の竜巻のようなもので包まれ、それを防いだ。

 竜巻は次第に大きくなり、辺りには強い風が吹き始めた。


「ぐっ……まるで嵐だ」


 シャルスも身じろぎし、竜巻から少し距離をとった。

 その竜巻はやがて宙に浮き、球体になっていく。

 球体になった竜巻は今度は小さくなり、凝縮されていく。

 一瞬の静寂の後、竜巻は爆発のような突風が辺りに発生した後、消えた。

 そこには、魔龍合体を終えたスレードが立っていた。

 長髪となった髪。ドラサの青色の翼、角、尻尾も生えていた。

 鎧は色が紺色に近くなり、厚さは一見薄くなったようにも見える。

 しかし、圧倒的な余裕と、威圧感を放っていた。


「……行くぞ」


 スレードは身じろぎするシャルスを睨み、笑みを見せた。

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