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姉と弟

「あー……」


 やっぱり、こうなった、

 ノラスはため息をついた。


「そそそっそ、その方は……」


 いつも以上にあたふたしながらイルレが尋ねた。


「この人は、コルスタ・シャルス。……姉だ」


「お、お姉さん……?」


 イルレは少しほっとした自分が不思議だった。

 なんで、こんなもやもやした気持ちになるんだろうか。


「姉さん、離れろよ……」


「いいじゃないかぁ~。生きてたなんて思わなかった~!!!」


 シャルスはべたべたくっつき、傍目から見たら変態にしか見えない。


「おい、そろそろいいか」


 ハーカはいいかげん話を進めたいようだ。


「あ……」


 シャルスは顔を赤くした。ハーカたちに気づいていなかったようだ。

 あわててノラスを離し、クールな顔に戻った。


「えー……。き、君たちは?」


 まだ挙動不審なまま、シャルスは尋ねた。


「私はハーカ」


「イルレです」


「俺を助けてくれたんだ。この2人がいなきゃやられてた」


「やられてた?あの戦いの後、また戦ったのか?」


「ドラサと戦ったのさ」


「ドラサと!?」


 シャルスは驚いた。

 幹部と戦っていたとは……。

 

「それで、俺たちがここに来たのは、魔力を戻してもらうためなんだ」


「ん?もしかして、その戦いで魔力を使い切っちゃったのか?」


「うん」


「なるほどね。じゃあ魔力を受け取らないと。ついてきて」


 シャルスは手招きし、城門の中へ入っていった。


「あ、そうそう。お二人さん」


「「?」」


「ありがとう、ノラスを助けてくれて。たった一人の家族だから」


 シャルスは満面の笑みを見せた。




 4人は街を進んでいった。

 街はとてもにぎやかで、通りは人でごった返していた。

 そのおかげでノラスの顔をじっと見られる者はおらず、気づかれなかった。


「それで、魔力を受け取るのは誰からなんだ」


 ハーカが尋ねた。


「カイレ様にやってもらう」


「カイレ様?」


「この街で魔力の受け渡し手をやっている方だ。ノラスも小さいころに魔力を受け取った人だ」


「ここは、ノラスさんの出身地なんですか?」


 イルレが尋ねた。


「いや、そういうわけではない。ノラスは首都で生まれたんだ」


「まあ、小さいころはここで暮らしたけどな」


 ノラスが補足した。

 4人が大通りに差し掛かると、人々が大通りの前に止まっているのが見えた。


「おっと、少し止まってくれ」


 シャルスが手を広げた。


「これは?」


 イルレは初めて見るようだった。


「この街の守護をしてもらってるドラゴンのパレードだ」


 と、通りを豪華な馬車が通りすぎた。

 そこには女性が乗っていた。

 髪は腰くらいまであり、一房だけ横に結び、他の髪は降ろしている。色は黒。

 服は茶色っぽいワンピース・ドレスを着ている。

 身長はハーカより高いだろうか。高貴な雰囲気を漂わせ、民衆に手を振っていた。


「人間に崇拝されるなど……。情けない」


 ハーカは嘲笑した。

 そして、どんな顔をしているのか見てやることにした。

 人をかき分け、一番前に出た。

 するとちょうど、目の前を馬車が通り過ぎ、乗っているドラゴンと目が合った。


「な……」


 ハーカは驚きを抑えきれなかった。

 なんであいつがこんなところに。


「!?」


 馬車に乗っているドラゴンもそれに気づいたようだった。

 一瞬表情をこわばらせ、ハーカを見つめたが、すぐに元の笑顔に戻って過ぎ去っていった。


「ハーカ、どうしたんだ?」


「い、いや、なんでもない。さ、早くその……。カイレとかいう奴のところに行くぞ!」


「あ、ああ……」


 ここまで狼狽しているハーカを見るのは初めてだった。


「よし、こっちだ」


 ハーカの様子に気づいていないシャルスは通りを歩いていった。




「ここがカイレ様が住んでいるところだ」


 ついた場所は普通の家のような場所だった。


「ここが……」


 ノラスは意外さを感じた。もっと豪勢な建物だと思ったからだ。


「入りますよ、カイレ様」


 扉を開けると奥から白髪の老人が出てきた。白色のローブをまとっている。


「おお、シャルスか。そちらの方々は?」


「ノラスが生きてたんだ!それと、ノラスを助けてくれた人たち」


「お久しぶりです、カイレ様」


 ノラスは丁寧に挨拶した。


「久しぶりだな、子どものころ以来か」


「はい、なかなか顔を出せず……」


「いや、いい。お前は王族なのだから。それで、わざわざこの老人のところに何用だ?」


 というわけで、一向は魔力の件を話した。


「ふーむ、そういうことか……。やっかいな相手とやりあったもんだな」


「そこで、魔力を渡してほしいのです」


 シャルスが言った。


「良いだろう。別に断る理由もない」


「ありがとうございます!」


「とはいえ、時間はかかる。他の3人はせっかくだからニカアの街を回ったらどうだ」


「分かりました」


 シャルスが答える。


「では、ノラスはこっちに」


 ノラスとカイレは奥の方の廊下に歩いていった。いくつもの扉が見えた。

 一番奥の部屋に到着し、そこの扉を開くと赤の絨毯以外何もない部屋についた。


「ここが魔力を渡す場所だ」


 カイレにそう言われ、部屋に案内されると、ノラスはとても懐かしいような気がした。

 幼いころ、ここで魔力を受け取った記憶が頭のどこかに残っているようだった。


「では、この部屋の真ん中に座ってくれ」


 ノラスが真ん中に座ると、カイレは懐から木の杖を取り出した。


「では、始めるぞ」


「はい」


 カイレはノラスの肩に木の杖を当てた。

 すると木が赤色に弱く光り、少しづつ魔力が注がれ始めた。




 そのころ、シャルスたち3人は。


「ハーカ!?なぜここにいるのですか!」


 ハーカが、怒られていた。


「ちっ……。関係ないだろ」


「関係あります!どれだけ心配したか……」


 ハーカと言い合っているのは。

 さっきのパレードで見たドラゴンだった。

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