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爆炎と極氷

「ノラス、起きて」

 

「……ん」


 ノラスが目を開けると、シャルスが見えた。


「ノラス!!!」


 シャルスはノラスの上半身に抱き着き、歓喜の声を上げた。


「姉さん……」


「ありがとう……。私たちを助けてくれて」


「そんな、俺一人だけの力じゃないさ」


「それでもいい。あんなに小さかったノラスが、私を助けてくれたなんて……」


「……あ、ハーカとイルレは!?」


「ロインのところにいる。2人とも無事」


「良かった……」


 ノラスはすぐに立とうとした。


「ま、まって」


「え?」


「もうすこしだけ、このままで」


「……分かった」




 そのころ、城壁の上では。

 ロインとハーカが話していた。2人とも小さい龍の姿になっている。イルレは近くに座り込み、目を閉じている。


「……あなたが、あそこまで強くなっていたとは思いませんでした」


「ふん、貴様がこの街でのんびりしていた間、私は戦い続けていたんだ」


「またそんな言い方を……」


 ロインは怒ろうとしたが、飲み込んだ。


「ですが、私達はハーカ、あなたとその仲間たちに救われました。それは礼を言わねばなりません。ありがとう、ハーカ」


「……っ。今更褒めるな!」


 ハーカは顔を赤らめたらかと思えば壁の方に行き、向こうを向いて座ってしまった。




 しばらくした後、ノラスとシャルスがロインのところ、城壁の上へついた。

 ハーカは城壁の出っ張りによりかかり、座り込んでいた。

 イルレは近くのベンチに座り、まだ目を閉じていた。


「ハーカ、大丈夫だった?」


「……ああ」


 ハーカはそっけない態度でそっぽを向いた。


「……?」


 ノラスは少し気になったが、疲れているのかと思い特に何も言わなかった。


「……んあ」


 イルレが目を開けるとノラスがいた。


「ひゃ、ノラス王子!?」


「イルレも無事だったか」


「は、はい……。王子こそ、何事もなくて良かったです」


「うん。なんとか勝てた……、でいいのかな」


「はいっ!」


 イルレは力強く言った。


「そういえば、ノラスはこれからどうするんだ?」


 と、シャルス。


「これから、か。ガルアスを倒し続けるだけさ」


 ノラスはそう言った。ハーカと出会い進み始めたころからそれは変わらない。


「……私は、ノラスに戴冠式をしてほしいと思ってる」


「た、戴冠式!?」


 つまり、王になる、ということだ。


「ロンツ王国の復活を宣言できれば、こちら側の正当性は一気に増すんだ」


「そ、そんなこと言っても……」


 自分が王になることなど、しばらくは考えてもいなかった。

 もちろんまだロンツ王国があったころは少しは頭の隅にあった。

 しかし、ロンツ王国がなくなってからはそのようなことを考えることすらなかった。

 強いて言えば……。


「いいじゃないですか! ノラス王子から、ノラス王、ですよ!」

 

 こうやってイルレに、王子と呼ばれる時くらいだろうか。


「……まあ、なる覚悟は後でもできる。とにかく今は、戴冠式に必要なものを集めたんだ」


「必要なもの?」


「ああ。まずは戴冠式が伝統的に行われる街、カイアの攻略だ」


「カイア……か」


 カイアはしばらく北東にいったところにある。


「あと必要なのは王冠だ。これは首都コルスにある」


「……分かった。まずはカイアに行ってみるよ」


 自分が王になるにしても、ならないにしても、そこはガルアスの領域だ。奴らを倒せるなら構わない。


「……気を付けてね」


「ああ。もう大丈夫さ。俺たち3人が魔龍合体すれば、負けることなんてないさ」


 ノラスはイルレと、ハーカを見た。


「はいっ!」


「……できれば、合体なんぞしなくても勝ちたいがな」


 ハーカはそう言ったが、本気で嫌というわけではなさそうだった。


「じゃあ、ありがとう。姉さん」


「もう少しゆっくりしていってもいいのに」


「そんなわけにもいかないさ」


 ノラスはそういうと、ハーカはドラゴンの姿に戻った。

 ノラスとイルレはハーカの手に乗った。


「姉さん。本当にありがとう。またね」


「ああ!絶対、また会おう」


 シャルスは手を振った。


「ハーカ!」


 ロインはハーカに声をかけた。


「あなたも、無事でいて」


「……フン、貴様に言われるまでもない」


 ハーカは向こうを向いたままそう言い、飛んでいった。


「素直じゃない子」


 そう言いながら、ロインはハーカの無事を、祈っていた。




 そして、3人はカイアに向かっていった。


「そういえば、スレード……。あと、ドラサがニカアを襲うことはないのでしょうか」


「多分……、ないかもな。あいつらは多分、俺を目標にしてる」


「そうなんですか?」


「うん。おそらくだけど、こちらの位置がある程度分かるんじゃないかな」


「そんなことができるんですか?」


「うん。俺も良く知らないけど、特定の人物の魔力を感じることができる者もいるらしい」


「そんなことが……」


 と、街が遠くに見えてきた。


「あれがカイアか?」


 ハーカが言った。


「うん。着陸しよう」


 そのとき、強い風が吹いた。


「おっと」


 ノラスは少し体勢を崩した。


「降りるぞ」


 ハーカは特に気にせず、降りようとした。

 が。

 次の瞬間、ハーカは背中に大きな衝撃を受けた。


「ぐわあああっ!」


 一気に地面に叩き落とされた。


「……なんだ!?」


 ノラスは事態が分からなかった。だが、ハーカの手は消えていた。


「クソっ……。なんてことしやがる」


 ハーカは人間の姿に変身していた。


「ハーカ!」


「地面に落ちるギリギリで変身した……。多分イルレも無事だ」


「ノラス……王子」


「イルレ!」


 イルレは土煙のせいで汚れていたが、無事だった。


「こんなことをするのは……」


 おそらくガルアス……。だが、ハーカの聴力を持ってしても感知できないとは……?


「へーえ、やっぱりそう簡単には倒されてくれないか」


「誰だ!」


 土煙がなくなって、そこにいたのは……。

 少年、いや、子供ともいえるくらいだ。

 髪は銀色、短髪。

 黒を基調とした軍服を着ている。サイズもあっていて、おそらく特注のものだ。


「僕はミイン。おにーちゃんが、ノラスでしょ?」


 ミイン。そう名乗った少年は、可愛い笑みを見せた。


「……そうだ。お前、ガルアスだな」


「うん。僕はガルアスの第二幹部だよ」


「第…二」


 イルレもミインのことは知らないようだった。


「でもね、そんなことはどうでもいいの。僕は君、いや、君たちと戦いたかったんだ」


「なに?」


「ほら、早く魔力合体してよ!君を切り刻みたくて、たまらないんだ」


「……ハーカ、イルレ。手を」


「おい、こんな奴の挑発に……」


「ガルアスは何が何でも潰す!」


「……」


 ハーカは黙って手を出した。

 イルレは特に気にもせず、手を出した。

 ノラスたちを、沈みかけの太陽が、真っ赤に染めていた。

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