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007 日本人の女の子

「えっと……日本語でしょうか……それとも」


 日本語が分からないフィアナには目の前で泣いている女の子が何を話しているか分からない。

 分かるのはどっちも話せる俺だけだ。


 仕方ない。


「大丈夫ですか?」

「ひゃい!」


 頭を抱えていた日本人の女の子は後ろに飛び跳ねて俺の方を向いた。

 一色の淀みのない真っ黒な髪。前はパッツンと揃えられて、後ろ髪も同様だった。オタクの友人が言っていた姫カットというやつか。

 濁りのない黒の瞳、顔の作りから純日本人なのは間違いない。

 見た目も同い年くらいだな。


 女の子は震えていた。


「わ、わたし……サルヴェリア語わかりませーーん!」


 せめて英語で言えよ。

 ここで止まっても仕方ない。


「日本語は分かるからいいよ。日本人だろ?」

「あ……ああ!」


 俺の髪色を見て、同郷と思ったんだろう。

 女の子は安心したようにへたり込んでしまった。


「良かったぁ……わたし、助かるんやぁ」

「やっぱり迷子か?」

「はい、そうなんです……。わたし……昨日、王都サルヴェリアに引っ越してきて……探検しようと思ってここまで来たんです」

「それで帰り道が分からなくなったのか。スマホは? グーグルマップは海外でも使えるだろ」

「……スマホは家に忘れました」


 そりゃダメだな。

 英語ならまだギリギリ分かるかもしれないが、残念ながらサルヴェリア語はちょっと文字体系が違う。

 英語しか勉強してなかったら無理だろうな。


「あ、わたし……皆代(みなしろ)さくらと言います。えっと……次の4月から高校生になるんです」

「じゃあ、俺と同い年か。俺も4月からこの国の高校に通うんだ」

「ほんまですか!?  じゃあ同い年なら敬語もえぇかな」


「住所はあるのか」

「これなんよぅ」


 泣きべそかいてる皆代がメモを渡してくる。

 こっちは日本語で書かれてた。

 これをサルヴェリア人に見せても分からないだろうな……。


 ここから歩いて15分くらいか。

 わりと俺の家の近所じゃないか。


「えっと……」

「ああ、俺は四条。四条零児だ」

「四条くんやね! あの……そっちの方はもしかして彼女さん?」


 初対面で許婚ってことを説明するのは面倒くさい。

 姉や妹と言うのは違うし……。仕方ない。


「家族だよ。遠い親戚と思ってくれていい」

「ああ、そうなんや」


 皆城がフィアナに近づく。


「初めまして、わたし……皆代さくらいいます!」


 皆代は人なっつっこい子のようだ。外国人のフィアナにも気さくに話しかける。


「やっぱり日本の方ですか! 初めまして、とても綺麗な黒髪ですね!」


 そして皆代の動きが止まった。


「その子は日本語喋れないぞ」

「そーなんや。何喋ってるか全然わからへん……」


「レイジ! 私、さ……くら? さくらとお話ししたいです! 通訳してください!」


 えぇ、めんどくせぇ。

 そんなわけで通訳するハメになる。


「四条くんは零児って呼ばれてんの?」

「この国ではファーストネームで呼ぶものだからな」

「そうなんや。じゃあわたしも郷に従って零児くんって呼ぼうかな。……わたしもさくらでえぇよ」

「随分気安いな」

「わたしは友達作りは得意なんよ! ……そしてここで零児くんと友達にならないとわたしは家に帰れなくなります!」


 それが目的か。

 まぁ。ここで置いていったりしたらさすがにかわいそうだ。


 皆代……じゃなくさくらはフィアナの手を掴む。


「でも……この子めっちゃ可愛いなぁ。お姫様か何かなん?」

「フィアナは……。間違えられてもおかしくないかもしれんが」


「フィアナちゃん言うんや。名前までかわいいなんて無敵……。ん? フィアナ? この名前……どこかで。サルヴェリア王国のフィアナって」


 さくらはフィアナの名前を連呼し始めた。


「零児くん、フィアナちゃんの下の名前ってオルグレイス?」

「ああ……。なんだ知ってたのか。知り合いか?」

「零児くん、スマホ出して! はよ!」


 さくらの剣幕に俺は言われるままスマホを取り出して渡す。

 さくらが俺のスマホを操作をして、出た画面を俺に見せた。


「やっぱりそうや! この子、去年、【世界で最もかわいい女性】の1位に選出された子や!」


 さくらが見せてくれた画面には【世界で最もかわいい女性100人】という名目でたくさんの美しい女性の顔が写っていた。

 聞いたことがあるな。

 世界のとあるメディアが公開していて毎年、話題になってるって。


「大体は世界的な女優とか選ばれるんや。日本からも2,3人選出されてるけど……。去年はまったく無名のフィアナちゃんが1位に選ばれて……世界的に話題になったんや」


 スマホに表示されたフィアナの顔は本当に可愛らしかった。

 物憂げで儚い……そんな印象も見受ける。……綺麗だ。


 ページのコメントには納得の1位、奇跡の1枚、1000年に1人の存在。


 そして世界一の美少女。


「あんた、世界一だったのか」

「ふぇ?」


 フィアナはキョトンとした。

外国が舞台となると主人公と同じ日本人の存在は貴重。

そして方言キャラも出しやすくなるというわけです。関西弁キャラを使いたいのでやらせて頂きました。

作者は一応関西出身なのでほどほどに合ってると思います。あまりにコテコテにはしない予定。


通訳しまくるレイジくんの活躍に期待ください。



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― 新着の感想 ―
[良い点] お米炊子先生は元気にしているかな・・・・ と考えながらフィアナはどんな可愛い顔しているんだろうと想像しながら フィアナはお米炊子先生の小説を読んでいるのかなと 考えている。。。 [気になる…
[良い点] 新キャラが良い! ちょっと、おっちょこちょいなので、おそらく同級生で一波乱、いろいろありそう〜
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