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016 世界最強の防犯システム③

「あ~~~~~~~」


 失敗だった。

 来るんじゃなかった。

 想像できたことなのに……なぜ俺は考えなかったんだ。


「女の買い物は長い」


「ん、レイジ。どうしました?」


「なんでもない」


 この2人、ファッション系の店舗に片っ端から入ってやがる。

 2人で互いに試着して、感想を言い合う。

 これがエンドレスで続くんだ。


 特にフィアナなんて容姿が良すぎるせいで店員がやってきて、店員がコーディネートしてるじゃねぇか。


「レイジ、どう思いますか」

「いいんじゃないか」


「零児くん、どう?」

「いいんじゃないか」


「絶対日本語とサルヴェリア語で同じ言葉で言うてるやろ」

「その通りやわ」

「発音がおかしい!」


 しらんがな。

 俺は東京に住んでたので関西弁のイントネーションは分からん。


「こんなにフィアナちゃんが可愛いいんやから気のきいたこと言えばいいのに」

「こんなにさくらが可愛らしいのですから気のきいたこと言えばいいと思いますよ」


「時々、言葉通じてんのかって思うくらい同じこと言うよな、あんたら」


 気のきいたことってさ……。

 じゃあ、正直に言えば2人ともどの服着たって可愛いんだよな。

 真顔で可愛いよって言えばいいのか。

 そんなこと気恥ずかしくて言えたもんじゃない。


「迷いますね……。レイジはどっちがいいと思います?」


 どの服がいいかと言われてもどれも可愛いんだからさ、全部買えよってなるんだよ。

 願望を言うなら露出の多い服を着ろってなるよな……。思い切って言ってみるか?

 いや、男がさらに寄ってきそうだし身持ち堅そうな服を選んでおくか。

 

 さらには何か知らんが店員さんが近づいてきて、耳元でボソリと言ってくる。


「正直に世界一かわいいよって言えばいいんですよ」


 そうだな。実際、1人は世界一かわいい女の子だしな。

 って余計なお世話だ。


 しかしまぁ……2人の可愛らしい子のファッションショーを見せてもらえるのは役得と言えるだろう。


「彼氏様」

「彼氏じゃないです」


 店員さんの声に素で返してみる。

 どっちの彼氏と思われたんだろうか。


「お待ちになっている間に宜しければこちらはいかがでしょうか」


 店員さんが紹介してくれた先はアクセサリー売り場だった。


「俺はアクセサリーはあんまり……。ってこれ女性物じゃないですか」

「麗しいお嬢様方に贈ってはいかがでしょう。ご年齢は高校生ぐらいですよね? 手頃な値段となっておりますので」


 商売上手な人だ。

 だが……贈る理由がない。


「さっきも言った通り、彼氏彼女の関係ではないので贈る理由はないですよ」

「ふふ、贈る理由などつじつまを合わせればいいのです。少なくとも信頼関係は築いておられるのでしょう? お客様方は親愛の関係が見えます。きっとお客様がプレゼントされれば喜ばれると思いますよ」

「ふぅ……。商売上手ですね」

「それがわたくしの仕事ですので」


 そうまで言われてしまうなら、乗ってやろうじゃないか。

 親父からもらったアレをどこかのタイミングで付けなきゃと思ってたし、ちょうどいい。



 ◇◇◇



 買い物を終えた2人。俺はショップの入口で待っていた。


「お待たせ!」

「お待たせしてごめんなさい」


「随分と買ったな」


 2人の手にはたくさんの買い物袋が下げられていた。


「サルヴェリアって物価安いんやな。ついいっぱい買っちゃったわ」


「日本と比べると安いよな。フィアナ、良いのは買えたか」

「はい、レイジに選んでもらった服も買ってきました。今度一緒に出かけましょう」


 それは楽しみだな。

 ……渡すなら今だよな。


 でも、躊躇してしまう。


「どうしたん零児くん。挙動不審やで」


 く、やはりそう見えるか。

 女の子にプレゼントなんてしたことねぇよ。

 どんな時だって緊張したことはなかったが……、やはり向いてないことはできないな。


 軽く息を吸う。


「フィアナ」

「はい?」

「その……店員さんから勧められてな。まぁ……その、なっ」


 気の利いた言葉が言えず、手に持ったそれをフィアナに無作法に向けてしまった。

 フィアナは包装されたそれを受け取り、開く。


「わぁ……ブレスレットですね」


「ああ」


「頂けるんですか? 嬉しい!」


 正直安物だし、貴族のフィアナからすれば大した品ではないと思う。

 でも店員さんの言う通りプレゼントすることに価値があるなら……。

 フィアナはさっそく腕に取り付けた。


「レイジからプレゼントなんて……すごく嬉しいです。でもどうしてまた……」

「ああ……。まぁなんつーか。気まぐれだよ。一応言葉の上での許婚って関係だし、贈り物くらいしねーと男として……っておい」


 フィアナはブレスレットを付けた両手で俺の手を掴んだ。

 その柔らかい手と温かさに顔が熱くなる。


「私は幸せです!」

「っ!」


 その顔は反則だ!

 直視することができない。

 くそ、アレを付けるのにちょうどよかったとか思わず、もっと良いのを贈ればよかった。


「と、特別な意味はない! さくらにも用意してるし、そんな喜ぶな!」

「は~い。今度は私からお返しを贈らせて頂きますね」


「言葉はわからへんけど、何かラブラブやなぁ。プレゼントえーなぁ」

「ああ、さくらもほらっ」

「へ?」


 さくらにも同じ包みのものを渡す。

 もともとそんな特別なプレゼントのつもりじゃなかったので片方だけってのは止めておいた。


「わたしにもくれるの?」

「ああ……。まぁ、同郷のよしみだし、学園でも宜しくなってくらいに思ってくれていい」

「わーい! 零児くん、ありがとうな! フィアナちゃん、おそろい!」

「おそろい!」


 フィアナとさくらは贈ったブレスレットを見せ合う。

 ちょっとだけ色が違うがちょうどよかったかもしれないな。


「零児くん、ありがとう。本当にステキなお友達に会えて良かったぁ」

「お、おお」


 何か気恥ずかしいな。さくらの笑みもまた可愛らしく、少し胸がドキリとしてしまう。

 くそっ、女性免疫がないのが恥ずかしいな。


「さくら。レイジとお揃いのブレスレット探しませんか?」

「ええよ! 探そう」


「ったくそんな必要はって……聞いてないな」


 再び、売り場に戻ってしまったのを見て、軽く息を吐く。まぁ……これで良かったのかな。

 少しだけ顔の火照りを冷やすため、トイレに行くと言い……2人から離れることにした。


 

 先のことを思うのであればここで彼女達から離れてしまったことが良くなかった。


次話からお話が転調します。


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