015 世界最強の防犯システム②
「さくら、もうそんなに話せるようになったなんてすごいです!」
「フィアナちゃんもあいさつ上手になったなぁ」
さくらとフィアナは楽しそうに手を繋ぎ、話をしている。
所々お互いの母国語を使い、習得の成果を話し合っていた。
どちらも分かる俺からすれば習得した言語は大したことはないがお互いに通じ合えることに意味があるのだろう。
ちなみに基本的な会話はスマホの翻訳アプリを使用している。
「レイジ、今日は気持ちいい天気ですね」
「零児くん、この会社って日本のやろ! こっちにもあるんやなぁ」
でも俺にはそのまま母国語で声をかけるくるのだがこれがわりと面倒くさい。
会話に日本語とサルヴェリア語が入り交じり、頭の中で変換するのが大変だ。どっちか一方にして欲しい。
そして今日、3人で向かう所は市の大型ショッピングセンター。
「イヤンモール……ほんまにサルヴェリアにもあるんやなぁ」
「アジア圏にも出店してるってニュースでやってたからな」
日本で広まっているイヤンモール。
この企業はサルヴェリア王国にも出店がされていた。
見た目形は日本のものとそう変わりない。
ファッションから飲食に娯楽まで……あらゆるものが揃っている。
ここはサルヴェリア王国の中間層向けのショッピングセンターだ。
俺達が住んでいる街からバスで20分ほどなので交通の便もそう悪くない。
「しっかしまぁ」
突然さくらが声を上げた。
「めっちゃじろじろ見られんなぁ……。フィアナちゃんってやっぱ別格なんやな」
確かに男性女性共に俺達の横を通りすぎるたびにちらりと見られている。
さすがに例の世界一の件は1年前の話なので変に話しかけて来ることはないだろうが、目立つ存在なのは間違いない。
「なんか芸能人気分やわ」
気楽に言ってるけどな……。
「レイジ、さっきからみんなさくらの方見て黒髪かわいいって言ってますね」
「そうだな」
サルヴェリア語が分からないゆえにさくらはその好奇な視線が自分にもいっていることに気付いていない。
元来サルヴェリア人は日本人の……それも黒髪ロングの女性を好む気質を持っている。理由は後に分かることなので割愛するが。
その髪を持ち、容姿も端麗なさくらが目立つのは当然のこと。
フィアナとさくらでどちらも人を引き付ける。
「ほんと久しぶりの外やわぁ」
「なんだ、外に出てなかったのか」
「零児くんとフィアナちゃんと会って以来やで」
イヤンモール、王都サルヴェリア店の敷地の中に入る。
まだモール系の店はここしかないからかなり混雑してるな……。
2号店の話もあるって聞いたことがあるけど。
「お父ちゃんから学校始まってこの国に慣れるまでは1人では行かないようにって言われてるんよ。チビ達も絶対お母ちゃんと一緒じゃなきゃだめって」
「ああ、そういうことか」
「治安が良くないからって言われたんやけど……そうなん?」
「そりゃ日本より良い国はそうないからな」
店の入口まであと少しの所で……とたとた小さな子供が近づいてきた。
「ぼきんお願いします」
片言の日本語で喋る汚れた風貌の子供だ。
当然片言のため子供はサルヴェリア人で彩色の髪をしている。
「かわいいなぁ、ええよ」
さくらがカバンから財布を出そうとする。
「出すな!」
「へっ」
さくらの行動を制止し、サルヴェリア語でみすぼらしい子供に向こうへ行けと言葉をかける。
子供は日本人だと思ってた俺がサルヴェリア語が堪能と理解し、すぐさま向こうへ駆けだしていく。
「な、なにがあったん……」
「向こうを見てみろ」
俺が指で指し示す先、さくらはそれを見てぎょっとする。
同じように薄汚れた子供達がじっとこちらを見ていたのだ。
「さくらがお金を渡そうものなら即座にみんなで押し掛けてサイフ盗られてたぞ」
「……そ、そんなこと」
「ここは日本じゃないんだ。それを理解した方がいい」
こうやって物乞いされたり、サイフを盗られたたり……日本人が被害に遭うケースは増えている。
サルヴェリア王国は王族及び貴族が国を支配している。
現代においてマンガやアニメで出てくるような徹底的なカーストは消えつつあるが、貧富の差は日本とは比べものにならないほど大きい。
「だからあんたのお父さんも慣れるまで1人で出るなって言ったんだ。日本人はカモって思われてるからな」
「……そうやったんや」
「昔に比べたらだいぶよくなった……って聞くんですけどね」
「あくまで全体として……だろ」
貧民層はフィアナのような貴族家系の人間や俺やさくらのようなそこそこ裕福な中間層とはまた違った暮らしがある。
さらに俺達が通う予定のケスフェルエス王立学院も貧民層が通うことはほぼないと言われている。
このイヤンモールも実際の所、貧民層の入場を規制されている。みすぼらしい貧民層の人間を入れないように入口に警備員がいることがその証だ。
まぁ見た目で判断するからザルとも言えるけど……。
「どうにかできへんのかなぁ」
「子供の俺達にはどうすることもできねーよ。でもモールの中に貧民層向けの募金箱があるはずだ。そこに募金するくらいはしてもいいじゃないか」
「うん、ありがとう零児くん。そうするわ!」
フィアナとさくらは先にモール街の中へ入っていった。
「しかしまぁ……」
今もじっと俺達の方を貧民層の子供が見ている。
他にも観光客の日本人がいるが……狙われたのは俺達だけだった。
偶然か? それとも……。
ま、気にするだけ無駄か。
フィアナとさくらの後を追うことにした。




