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001 日本から離れて……

 サルヴェリア王国という国を知っているだろうか?


 北太平洋に存在し、日本とアメリカの間に存在する北海道くらいのサイズの島国である。

 気候は温暖湿潤。四季もあり、過ごしやすい国で有名だ。

 成田空港から6時間ほどで行けるため、近隣諸国と並ぶ日本からの観光客が多い国だったりする。


 そんな国に留学することになったのが俺、四条零児(しじょうれいじ)15歳だ。


「チキンorビーフ?」


「ビーフで」


 国際線の飛行機に乗り、まわりはサルヴェリアへ観光に来る日本人や帰るサルヴェリア人に混じって1人エコノミークラスの座席でくつろぐ。

 何回か乗ったことがあるとはいえエコノミークラスってやつはどうしてこう横幅が狭いのか……。新幹線とどっちが狭いんだろうな。

 あっちは6時間も乗ることはないのでまだ我慢できるが。

 少々イライラしてしまうのは座席の件だけじゃなく……この留学に対してのことだろう。

 はっきり言うと乗り気じゃない。昨日3年間通った中学を卒業したばかりだというのに。


「ふぅ……」


 味としてはそこそこなサルヴェリア航空の機内食を食べつつ……少し前のことを思い返していた。

 それは中学を卒業する1ヶ月前のことだった。


 東京で一緒に住んでいた父親に声をかけられる。


「零児、来月中学を卒業するんだってな」

「ああ、出張ばっかのくせによく知ってたな」


「そりゃ大事な息子のことなんだから当然じゃねぇか。じゃあ卒業後は悪いけどサルヴェリアの高校に行ってくれ」

「じゃあってなんだよ。え? サ、サルヴェリア? 外国じゃねーか!」

「おまえに頼みがある」


 出張に向かう予定の親父に突然そんなことを告げられる。

 地元の公立の高校に通うつもりだった俺は断固拒否した。

 しかし結局、俺は親父の口車に乗せられて、外国であるサルヴェリア王国の高校に通うことになってしまった。

 短期留学ならまだしも……まさか高校3年間まるまる行くことになるなんて……。

 せめて大学からにして欲しかった。


 時間のかかる手続きは父親がすでに終わらせており、いろんな人のツテを借りて大慌てで出国の手続きを終えて、こうして飛行機に乗ってしまっている。

 明らかに計画的だった。もっと早く言えよ……まったく。


 同じ学校に進学すると思ってた友人達も急すぎると言われ、涙ながらの餞別の品を貰うことになった。

 同じ気持ちだよ……。一緒に卒業旅行でライブとか行きたかったな。

 ま、今の時代スマホを使えばいくらでも繋がれる。

 実際フライト前にメッセージをもらったし、向こうの生活に慣れたら招待するのもありかもしれない。


「ふぅ……暇だ」


 食事を終え暇をもてあますことになる。


「サルヴェリアか……」


 目を瞑って静かに時間が過ぎるのを待つことにした。




 ◇◇◇



「どのような目的で来ましたか?」


 飛行機を降りて、大荷物を回収した後、入国審査のゲートへ行く。

 審査官が英語で聞いてくるが簡単な言葉なので動じることはない。


「留学です」

「OH!」


 サルヴェリア人の入国審査官に驚いた顔をされた。

 まぁそうだろう。黒髪で明らかに日本人にしか見えない俺がサルヴェリア語で答えたからだ。

 サルヴェリア王国では公用語として独自の言語、サルヴェリア語が使われている。


「お上手だね」

「ありがとう」


 言葉が通じればある程度意志疎通もしやすい。

 滞在期間や滞在先などを答えて、俺はゲートを出ることにした。


 10年ぶりのサルヴェリア国際空港か。幼い頃に行ったはずだがやっぱりほとんど覚えていないな。

 看板の指示に従って……出口に向かって進んで行く。看板は日本語でも書かれていたので分かりやすかった。

 第二言語ではないが広まっているだけはある。


 さてと……到着時間は確か連絡していたはずだ。

 空港の入口で迎えの人を探す。


「レイジ!」


 俺の名を呼ぶ声がしそちらに振り向く。

 すると金髪の外人女性が突然抱きしめてきた。


「レイジ~~、レイジがいるよぉぉぉ!」


 俺も年頃の男児。巨乳の女性に抱きしめられ、その感触がダイレクトに胸に伝わるとドキドキするんだろうかと思ったら……まったくしなかった。

 多分……この女性の匂いがそうさせているんだろう。


「ああ、もう……離れてくれ。母さん」

「もっと抱かせてよぉ。久しぶりなんだからぁ」

「久しぶりって毎週電話してくるじゃないか」

「会ったのは半年ぶりぶり!」


 こんなに騒ぐのだから人目につく……と思ったが視線の先はほぼ母さんか。

 自分の母親に対してこう評すのは不本意だが、俺の母親は美しい。

 2人の子供がいるとは思えないほど若々しく、プラチナブロンドの髪は光輝いている。

 中学の時、クラスの連中に母親の写真を見せたら相当に話題になったくらいだ。

 若い頃、この国で最も美しい女性が選ばれるミス・サルヴェリアを受賞した由縁だろうか。


 だけどどんな美人で胸がデカくて、良い匂いがしたとしても母親臭のする女に興奮はできない。


 ベネーティア・リーベル・シジョウ。それが俺の母親の名前。

 つまり俺は日本人の父を持ち、サルヴェリア人の母を持つハーフである。

 日本語の出来ない母さんが毎週サルヴェリア語で電話してくるせいで語学能力はちゃんと維持されている。


 そのため、今回の留学も母の母国に住む形となるのだ。


「で」

「なぁに」

「さっきから母さんの後ろで縮こまってるのがシャロンか」

「ほら、シャロン。お兄ちゃんだよ~~」


「……」


 母さんの後ろからこれまた可愛らしい女の子が出てきた。

 豊富な量の金髪をツインテールにし、白い肌に可愛らしい顔立ち。胸の大きさは母さんにまったく劣らない。

 なんだ、こいつ……。本当に妹のシャロンか。


「なんでこんなデカくなってんだ」

「シャロンが日本に行かなくなったのっていつ頃だっけ」

「俺が中学になってからは全然来なくなったな。話もしてない気がする」


 母さんは半年に1度、俺の顔を見に日本に旅行に来ていた。

 1つ下の妹であるシャロンも俺が中学に入るまでは金魚のフンのようについてきたんだが、ある時を境に来なくなった。

 それから一言も喋っていない。


「ほら、シャロン。どうしたの?」

「……だってぇ」


 母さんは思春期に入ったからと言っていたが……昔はお兄ぃ、お兄ぃとうるさかった妹も成長期ってわけか。

 3年ぶりに会うとここまで変わるんだな。女子の成長が一番著しいのもこの時期だったか。


 シャロンは照れた様子で俺をじっと見ている。

 兄として振る舞ってやるか。


「また宜しくなシャロン」

「……ん」


「あの子すっげぇ……かわいいな」

「あの姉妹……やばくない?」


 シャロンは母さんの血を強く引いていて、ハーフだがサルヴェリア人にしか見えない。

 若々しく見える母さんと揃うとさながら姉妹って感じだな。

 代わりに俺は親父そっくりのためハーフだが日本人にしか見られない。


 世界一美形が多い国と言われているサルヴェリア王国の血を引いているのにむなしいもんだ。


「さっさと行こうぜ。飛行機で疲れたし寝たい」

「あ、レイジちょっと待って」


 出口に向かって歩こうとした所、母さんに呼び止められる。


「もうまもなく彼女が来るからちょっと待ってね」

「は? 彼女ってなんだよ」


「あ、来たよ!」


 シャロンが反応したためそちらに目を向ける。


 1人の女の子がスタスタとキャスター付きの旅行鞄を転がして近づいてきた。

 近づいてくるとその女の子の姿に目が離せなくなる。

 その女の子は母さんと前に立ち、ペコリと礼をした。


「お久しぶりです、ベネーティアさん、シャロン。また……お世話になります」

「よく来たわねフィアナ」

「フィアナ久しぶり!」


 母さんが挨拶としてフィアナと呼ばれた女の子に抱きつき、離れたと同じにシャロンも同じように抱きつく。

 シャロンの喜び方から関係性の深さが見える。


 それより……。


 その子が俺の方を向いて微笑んだ。


 その女の子はとんでもなく美しい女の子だった。

 輝くような銀の髪、白くシミ一つない瑞々しい肌。ぱっちりと大きな碧眼の瞳。

 手足は細く長く……とても綺麗な声をしていた。


「レイジ……」


 不覚ながらその子が俺の名を呼んだことで胸がドキリとした。

新連載となります。

ちょっと変わった外国のように見えますが日本のラブコメの舞台を外国にしただけなのでそのままの感覚で読んで頂けたらと思います。

舞台が変わった分の違いも含めて楽しんで頂ければと思います。


期待頂けるのであれば作者の今後の執筆活動のためブックマーク登録や下側の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」として入力を頂けるとそれが一番の作者に対する応援となります!


ブックマーク登録で2ポイント ☆1つで2PTで計10ポイントで 最大12ポイント入れることができます。

1人1人のポイントが大きな力となります。もちろん強制ではありませんがもし頑張れと思って頂けるなら応援をお願い致します!

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