表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

☆我が名はサンタクロース!☆

作者: 五十路

2018クリスマス短編、その2

 我が名はサンタ・クロース。


 神聖世界メリクリスからやってきた、冒険者だ。


 私は今、神の力によってチキューという世界に来ている。

 こうなった経緯を、まずは簡単に説明しておこう。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


 私は神聖世界メリクリスのデコレット王国を拠点に冒険者をしていたが、齢60を過ぎたあたりでレベル100に到達してしまった。

 レベル100というのは人間の限界と言われており、絶対にこれ以上にはならないらしい。


『言われており』とか『~らしい』と言葉が曖昧なのは、ここ500年以上レベル100に到達したものがいないため、言い伝えという情報しか無いからである。

 だから実際にレベル100に到達した時、私は達成感と落胆の両方を味わったものだ。


 レベル100になると、レベルどころか経験値が1つも入らなくなる。

 これは辛い。

『お前はもう成長しない』と、神に告げられたようなものだからだ。


 これでは向上心など消え失せてしまう。

 イヤ、技術や戦術などの面では、まだ成長の余地はあるのだろうとは思う。

 だが成長が目に見える明確なもので無くなると、そこに実感が湧きにくくなりモチベーションが下がってしまうのだ。


 それからの私の冒険者としての生き方は、ただの作業になった。

 依頼をこなし、アイテムを集め、魔物を倒す。

 ただそれだけの男に、私は成り下がった。


 たったの1でもいい、レベルが上がる方法があるのなら私はどんな挑戦でもするというのに……。


 私は様々な依頼をこなしながら、各地にある神殿で様々な神に祈った。

 レベルを100より上にアップさせる方法があれば、教えて欲しいと……。


 だが、どの神殿でも答えてくれる神などいなかった。


 …………


 諦めかけたある日、その声は聞こえた。

『あなたの願い、かなえてあげましょう』


 清らかな声とともに、私は光に包まれた。


 そして、チキューという名の異世界に、転移させられたのだ。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


 これがチキューに辿り着くまでの、経緯である。


 その後、清らかな声――おそらく神だろう――に言われた。

 これから私に試練を与える、と。

 試練を数多く達成すれば、レベルアップが可能である、と。


 その試練の内容は、4つの言葉で伝えられた。


 1つ『この世界の様々な人たちに、贈り物をすること』

 ただし贈り物は、私の現在持っている物だけに限定される。


 1つ『贈り物をもらった人に、感謝されること』

 この感謝の気持ちが、私に経験値として入ってくるのだそうだ。


 1つ『現地の人に、姿を見られてはならないこと』

 見られたらそこで終了となる、だが夢や幻のように思われたなら大丈夫らしい。


 そして最後の1つ『期限は明日の夜明け』

 つまりそれまでにどれだけの贈り物ができるか、である。


 これが試練の内容だ。


 面白い――贈り物を配ってレベルアップだと?

 やってやろうじゃないか。


 私は冒険者としての日々で、膨大な数の素材やアイテムを手に入れてきた。

 その全てをバラ撒いてでも、レベルアップしてみせようぞ!

 たとえ1だけでも、不可能であるはずのレベル100超えができるなら安いものだ!


 よし、そうと決まれば早速出発だ。

 期限は明日の夜明けなのだから。


 …………


 まずは我が従魔『アカハナ』を呼び出そう。

「出でよ、アカハナ!」


 私の目の前にアカハナが現れた。

 アカハナはトナッカイという鹿型の魔物で、移動速度に関しては文句なし。

 しかも空まで飛べるという、私の自慢の従魔だ。


 そして今度は魔道具『空飛ぶソリ』を出す。

 この空飛ぶソリをアカハナに引かせて移動すれば、きっと大量の贈り物を配れるはずだ。


 そして贈り物は、この『無限のアイテム袋』の中に大量に入っている。

 大きくて嵩張るサイズの袋だが、ただの袋と思うなかれ。

 この白くてそこそこ大きな袋はその名の通り、容量が無限でかつ中に入れた物には時間経過が無いという優れものなのだ。


 そうだ。防具も整えておこう。

 このチキューという世界には、どんな恐ろしい怪物がいるか分からないのだ。

 例え贈り物の試練とはいえ、油断は禁物だ。


 私は無限のアイテム袋から、装備一式を取り出す。


 これは神血(しんけつ)(ころも)、神獣の毛皮に神獣の血を染み込ませた真っ赤な服だ。

 上下と帽子がセットになったこの服は、あらゆる攻撃ダメージを大幅に軽減する。


 準備はだいたい整った。

 やることはあと1つ。

 それは『分身のスキル』をつかうことだ。


 このスキルは、自分と度分の所有物を1日の間、なんと1000に分身させることが出来るものだ。

 もちろん空飛ぶソリやアカハナも、分身させることができる。

 しかも分身したところで、能力が下がることも無い。


 これが私の取って置きのスキル『分身のスキル』なのだ。

 私は無限のアイテム袋を肩に背負い、分身のスキルを使った。


 1000に分身した私は、贈り物をすべく出発する。

 もちろん、この私もだ。


 さて、どんな人が私の贈り物を待っているのだろう。

 私は今、年甲斐も無くわくわくしている。


「ふぉー、ふぉっふぉっふぉっ」

 いかんいかん、つい笑い声が出てしまった。


 見つかっては駄目だと言うのに、困ったものだ。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


 さて、記念すべき1人目は誰にしようか。


「ふぉーっふぉっふぉっ」

 私はわくわくして笑い声を上げながら、贈り物を送る人を探している。

 

 灯りの点いてる家は論外だな、住人が起きていては見つかってしまう。

 それにしてもこのチキューという世界の家は、箱を積み上げているような家が多いな……。


 私は1つの建物に目をつけた。

 周りの建物に比べて、暗くなっている窓が多い。

 その中の、周囲全ての窓が暗くなっている窓へと私は向かった。


『気配感知』のスキルを使う――よし、熟睡している気配が1つだけ。

 完璧だ。

 記念すべき最初の贈り物は、ここの住人にしよう。


 私はベランダへと降り立った。

 窓に掛かっている鍵を『開錠のスキル』で開け、中に入る。

 もちろん『気配隠蔽』と『隠密』のスキル使って、起こさないよう万全の注意を払いながら。


 寝室には1人の女性が寝ていた。

 そこそこ年配の。

 分かりやすく言うと、おばちゃん。


 私はこれから、このおばちゃんに感謝されるような贈り物をしなければならない。

 普通なら、寝ている相手が感謝するような贈り物を送るのは不可能だ。


 だが私は、他人の頭の中を覗くことができる能力がある。

 これでこのおばちゃんに感謝される贈り物など、簡単に探すことが出来るのだ。


 問題は私がそれを持っているかどうかだけだ。

 早速この女性の頭の中を覗いて、どのような物を望むか調査しよう。


 ……ふむふむ。

 ……なるほど。

 ……ほうほう。


 どうやらこの女性は『若さ』が欲しいようだ。


 若さか……。

 歳を重ねた女性には、よくある願いだ。


 すまん、残念だがさすがの私でも若返りは……。


 などとこの私がいう訳が無かろう!

 ふぉっふぉっふぉっ、その程度のアイテムごとき私が持っていないはずが無い!


 我が名はサンタ・クロース、数多の迷宮を踏破してきたレベル100冒険者なのだ!

 ということで、無限のアイテム袋から該当するアイテムを取り出そう。


『若返りの秘薬~』


 そう、これこそが多くの人類が追い求めた薬。

 権力者がありとあらゆる手段を用いて探すという、幻の薬。

 若返りの秘薬なのだ。


 その効果は……。


 もちろん若返りだ――なんと1歳も!


 ……。


 ショボいとか言うでない。

 そもそも若返りなどというものは、本来不可能なのだ。


 それを1歳も若返らせることができるのである。

 このような秘薬、存在すること自体が奇跡と言える。


 私は若返りの秘薬を枕元に置き、彼女の頭の中に贈り物のイメージを伝えた。

 彼女の頭の中から、感謝の気持ちが伝わって……ん? 感謝の気持ちが弱いな、何故だ?


 何? 若返りの秘薬をもっと寄こせ?

 それは駄目だ、この若返りの秘薬はこれ以上は飲んではいけないのだ。


 既定の量以上を飲むと、秘薬が暴走して死に至ってしまうのである。

 奇跡の秘薬は、劇薬でもある――よくある話だ。


 私は彼女の部屋を後にする。


 次はもっと感謝されるように頑張ろう。


 ――――


「ふぉーっふぉっふぉっ」 

 私は次に贈り物をする人を探すべく、ソリを飛ばす。


 目についたのは、古い小さな一軒家。

 開錠のスキルを使って家に入ると、眠っていたのは高齢の男性――おじいさんだった。


 頭の中を覗くと……。


 ……ふむふむ。

 ……なるほど。

 ……ほうほう。


 どうやらこのおじいさんは『股間を元気にしたい』ようだ。


 股間を元気にか……。

 貴殿より若いが私もそれなりの歳だ、気持ちはわかるぞ。


 まぁ任せておけ。

 我が名はサンタ・クロース、幾万幾億の魔物を倒してきたレベル100冒険者なのだから!


 ……ふむ、股間を元気にするなら、やはりこれだな。

 私は無限のアイテム袋から、1つのアイテムを取り出した。


『オークの絶倫粉~』


 オークの絶倫粉――それはオークという歩く豚のような精力絶倫の魔物の睾丸を、黒焼きにして乾燥しすり潰して粉にしたものである。

 これを使えば丸一日の間、股間が元気ビンビンとなるのだ!


 効果の程は間違いない、私が保証する。

 どうしてそう言い切れるかだと?

 野暮なことを聞くでない……まぁ、アレだ、そういうことだ。


 私はオークの絶倫粉を枕元に置き、それをおじいさんの頭に伝えた。

 感謝の心が伝わってくる。

 気にするな、私の都合で贈り物をしただけなのだから。


 誰と使うのかは知らないが、頑張れよ。


 私は家から出た。

 とても清々しい気分で。


 あぁ、感謝されるというのは気分が良いものだな。


 ――――


「ふぉーっふぉっふぉっ」

 私の笑顔は止まらない。


 外に出て、また贈り物を渡す人を探す。

 あそこがいいかな?


 次に入った部屋に寝ていたのは、小さな女の子だった。


 何が欲しいのかなー?

 おじいちゃんに教えてくれる?


 おじいちゃんとか言ってしまったし……。

 まぁいいか、小さな女の子だし。


 ……ふむふむ。

 ……なるほど。

 ……ほうほう。


 どうやらこの女の子は『子犬』が欲しいようだ。


 子犬……?


 ちょっと困った。

 この無限のアイテム袋には、秘宝級のアイテムなら山ほど入っている。

 だが、子犬は入ってはいない……。


 だが大丈夫、代替品ならちゃんとある。

 我が名はサンタ・クロース、無限のアイテムコレクターと言われたレベル100冒険者なのだから!


 ……子犬の代わりなら、この辺りがいいだろう。

 私は無限のアイテム袋から、思い当たるものを取り出した。


『フェンリルの子供~』


 こいつなら、子犬みたいなものだろう。

 普通の犬よりも少しだけ巨大になるくらいだし、こいつで問題あるまい。


 子犬の頃から育てれば忠実な従魔となるので、安全かつ最高の番犬にもなる。

 このチキューという世界は平和なようだし、おとなしくさせておけばバレないだろう。


 眠っているフェンリルの子供を、これまた眠っている女の子の枕元へ置く。

 可愛らしく寝息を立てている1人と1匹を見ていると、つい頬が緩んでしまうな。


 実に微笑ましい光景である。


 いつまでも眺めていたいが、そういう訳にもいかない。

 今の私には贈り物を配るという、試練があるのだ。


 名残惜しいが、次に向かうとしよう。

 ちゃんと感謝もされたようだし、実にいい気分だ。


 では仲良くな。


 ――――


「ふぉーっふぉっふぉっ」


 私はまた外へ出て、次に贈り物を渡す人物を探している。

 よし、今度はあそこにするか。


 窓の外から気配を窺うと、若い女性の気配がする。

 ……なんか緊張してしまうな。


 イヤ、別にやましいことは何も無いぞ。

 やましいことは何も無いが、なんとなく緊張してしまうだけだ。

 うむ、不思議だ……。


 で、お嬢さんは何が欲しいのかな~?

 お、おぢさんに教えてごらん?


 ……ふむふむ。

 ……なるほど。

 ……ほうほう。


 どうやらこのお嬢さんは『現金』が欲しいようだ。

 現金だと?


 なんと……。


 なんと正直なお嬢さんなんだ……!

 まぁ人間的にはロクなもんじゃ無いが。


 しかし困った。

 私はこの世界の現金など持っていない。


 何せさっきこのチキューという世界に、来たばかりなのだ。

 さて、どうしよう?


 解決策はすぐに思いついた、何故ならば――

 我が名はサンタ・クロース、知恵の神に匹敵するINTの数値を誇るレベル100冒険者なのだから!


 ……現金が無いなら、換金できる物を贈り物としよう。

 私は無限のアイテム袋から、これならという物を取り出した。


『ミスリルインゴット~』


 いまさら説明は不要だろう。

 ミスリル――魔法金属とも言われるこの物質は、希少価値が高く資産価値も高い。


 換金したなら、派手な生活さえしなければ10年は暮らせるだろう。

 さぁ!受け取るがいい!


 私はお嬢さんの枕元に、ミスリルインゴットを置いた。

 よし、これでこのお嬢さんにも感謝されて……。


 感謝が微妙だな……何故だろう?

 これでは足りないというのだろうか?


 なんと強欲な奴だ。

 このような強欲な輩は、どんなに金目の物を積んでも満足しない。

 私は経験として知っている。


 だからこれ以上の贈り物を、このお嬢さんにするつもりは無い。


 さらばだ!


 うむ、次だ次。


 ――――


「ふぉーっふぉっふぉっ」


 次はあの辺でいいか……。


 入った部屋には若――くもない男が寝ていた。

 ちょっと臭うぞ、行水くらいしろ。


 ゴブリンの内臓並みに臭うぞ。


 で、お前は何が欲しいんだ。

 とっとと吐け。


 ……ふむふむ。

 ……なるほど。

 ……ほうほう。


 どうやらこの男は『彼女』が欲しいらしい。

 また無理難題を……。


 諸々含めて女性に好かれる要素が無さそうなんだが……。

 せめて身ぎれいにしとけよ。


 まぁ、それでもこの私が何とかしてやるけどな。

 我が名はサンタ・クロース、どんな依頼も失敗したことの無いレベル100冒険者なのだから!


 なんとかする方法、それは――

 私は無限のアイテム袋から、これならという物を取り出した。


『惚れ薬……』


 をこの男に渡すのは……何か、飲まされる女性が可哀そうな気がする……。

 仕舞おう。


 代わりに何を出そうか。

 ふむ……もう一度頭の中を読んでみよう。


 ……ふむふむ。

 ……なるほど。

 ……ほうほう。


 彼女というより『夜の相手』が欲しいのか。

 だったら話は簡単だ。


 きっとこれで、この男は満足してくれるだろう。

 私は無限のアイテム袋から、これなら間違いないであろう物を取り出した。


『サキュバスの卵~』


 これを温めて孵すといい。

 サキュバスは成長が早いから、すぐに君の夜の相手をしてくれるようになるだろう。


 私は男の枕元に、サキュバスの卵をそっと置いた。

 何故だかもの凄く感謝されている気がする。


 そうか……君はそこまで……。


 私は目頭を押さえつつ、外に出た。

 頑張れよ。


 ……イヤ、すまん。

 頑張るな。


 サキュバス相手に頑張っちゃうと、死ぬかもしれない。


 適度に……適度にな。


 ――――


「ふぉーっふぉっふぉっ」


 私はソリで飛びながら、また家々を眺め始めた。


 今度はどこに侵入しようか……。

 おっと、これでは連続窃盗犯みたいだな。


 言い直そう。


 今度は誰に贈り物をしようか……。

 私は適当な窓に近づいた。


 この気配は――男の子のようだ。

 中に入ると、そこには10歳くらいの男の子が眠っていた。


 さて、君はどんな贈り物が欲しいのかな?

 枕元のメガネは、ちょっとどかして頭の中を覗くとしよう。


 さて、君の欲しい物は何かな……?


 ……ふむふむ。

 ……なるほど。

 ……ほうほう。


 どうやらこの少年の欲しいものは『高い能力』のようだ。

 勉強も運動も苦手で、それが元でいじめにもあっているらしい。


 勉強も運動も苦手ということは、INT・AGI・STR辺りの数値が低いということだな。

 だとすると、最低でも3つのパラメータの上昇が必要か……。


 パラメータ上昇効果のあるアイテムは持っているが、これら全てのパラメータを大きく上昇させられるようなものは持っていない。

 特定のパラメータの数値だけを大きく上昇させるアイテムなら、山ほど持っているのだが……。


 ふむ……どうするか。

 そこで私は気付いた、贈り物の相手が少年だということに。


 よし、解決策は見つかった。

 この私に任せておきなさい。

 我が名はサンタ・クロース、世界最強と自他ともに認めるレベル100冒険者なのだから!


 少年ならば、これがいいだろう。

 私は無限のアイテム袋から、伝説級の秘宝を取り出した。


『成長神の祝福~』


 成長神の祝福というのは、レベルアップ時に上昇するパラメータの値が、なんと2倍になるという素晴らしい秘宝である。

 しかも効果が一生続くという、最高のアイテムだ。


 このアイテムは小瓶に封印された光という非常に珍しい物で、光を降りかけるという形で使用する。

 もちろん私も使用しているので、効果は確認済みだ。


 目の前で眠っているのは少年。

 少年なら大人になるまでに、大きくレベルアップして成長することだろう。


 私は慎重に少年の布団を剥ぎ、成長神の祝福を降りかけた。

 感謝の気持ちが伝わってくる。

 少年は感激屋さんのようだ。


 ……ついでだから、楽にレベルアップさせてくれだと?

 いやいや少年よ、そこは自分で努力しなさい。


 部屋を出ようとした時に、ふと気が付いた。

 押し入れに何かがいる!

 この私が気付かないとは、信じられん……。


 だが押し入れの中の存在は、少年同様寝ている様だ。

 飼っている動物か何かだろうか……?


 問題無いと判断して、私は外へと向かった。


 今回は、我ながらいい仕事をしたな。


 私は満足だ。


 ――――


 その後も私は、たくさんの贈り物をチキューの人々にした。

 大きな感謝、小さな感謝。

 たくさんの感謝を、私はもらった。


 何か不思議な気分だ。

 贈り物をしたはずなのに、私はたくさんの何かをもらっている。


 うっすらと空が白んできた。

 そろそろ試練の刻限が来そうだ。


 レベルを確認する。

 その数値は――104。


 見事に4つも上昇している。

 信じられない……レベル100でピタリと止まった成長が、こんな試練で上昇するなんて……。


 私は、許されるならこの試練に再度挑みたい。

 レベルが上昇するからという理由だけでは無い。


 贈り物をした時に得られる様々な何か。

 その何かで得られる、この不思議な気分。


「ふぉーっふぉっふぉっ」

 嬉しくて、ついつい笑ってしまうこの気分。

 

 この気分を再び味わってみたいのだ。


 ついに太陽の光が顔を覗かせた。

 同時に私の体が光に包まれる。


 神聖世界メリクリスへの、帰還が始まったようだ。


 そうだ! 神様にもう1度このチキューという世界に来れるよう、頼んでみよう。

 もしかしたらまた、試練に挑ませてくれるかもしれない。

 いや違う……私はまた絶対に、この世界で試練に挑んで見せる!


 私の体は光に包まれ、今にも消えようとしている。

 私はこの世界に、必ず帰ってみせるぞ!


 チキューの諸君、私の名前を覚えておくといい。


 我が名はサンタ・クロース!


 君たちに素敵な贈り物を届ける、愛と勇気のレベル104冒険者だ!

メリークリスマス♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ