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第82話 (一緒に世界を救いたいって思ったの)



◆◆◆視点変更 『第三者視点』◆◆◆



 櫓からイツカたちの戦いを見守っていた村人たちは、何が起きたか分からずにいた。


 ただ、その眼前で起きた事は、9つの風が吹き荒れ、衝撃波を伴う斬撃が軍勢を飲み込み、そして、今は村の正面の草原に、動くものが何一つなくなったという事だった。


「なん、だ……なにが、起きたんだ……?」


 村人の一人が、ようやくそんな言葉を漏らす。

 何かが起きたその草原を見て、『自分たちは助かったのだ』という事を認識するための時間の方が長かった。


「うそ……だろ……? 眞性異形ゼノグロシアが……全滅してる……!?」


「たった二人で……600以上の眞性異形ゼノグロシアを……!?」


「す、すげぇ……」


 彼らから口々に出るのは、ただひたすらの驚嘆の声。


「勇者様が今ここから跳び降りて……2分も経ってねぇんだぞ? それなのに……!」


「これが……世界を救う勇者様の力、なのかよ……」


「お、俺たち……勇者様の事……なにか、勘違いしてたんじゃ……」


 誰かがそう口にすると、村人たちはみなハッとしたような表情になって、一様に下を向いてしまう。


 勇者と言う人間が一体どんな存在なのか、どれだけの力を持った存在なのか。


 人知や常識を遥かに凌駕する力が存在し、それを想像する事もできなかった彼らが、勇者たるイツカを信頼できなかったことを、責められる者はいないだろう。

 当のイツカも、その誤解をもたらしたのが自分自身の不足から来るものであると考えている以上、決して気に病む事はない。


 全てはタイミングが悪かっただけの事。

 イツカが牛刀たる勇者の力を、鶏に振るう時がなかっただけの事だ。


 だが、それが出来なかった事で、村人たちには言いようのない気後れが生まれることになった。


 勝手に絶望して、どうしようもない状態に陥った自分たちが、世界を救う勇者に対してぶつけた言葉は、決して許されるようなものではない――彼らはそう考えてしまっていたようだった。


 それでも。


 イツカの評価を聞いていたリローヴィは嬉しそうに微笑んでいた。


(イツカ。今はまだ不安いっぱいかもしれないけど、イツカのしたことは一つ一つ世界に広まっていくんだよ。そして、そうやって、みんなの言葉が集まってくるのさっ)


 いずれ来る未来に、明るい展望だけを見据えて。

 一時の悲しみにリロが捕われる事はない。


(イツカなら大丈夫。誰かを助けようって本気になれるイツカだから、ボクもプルパもイツカのこと大好きで、一緒に世界を救いたいって思ったの。だから、これからもボクたちと一緒に、頑張ろうね……!)


 簡易魔方陣で、3匹の召喚獣を櫓の上に召喚しなおすリロ。

 彼女は3匹を優しく撫でて、彼らの活躍をねぎらっていた。




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