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第65話 「村のみんなに話してあげられないのが残念です」

「ひとまず、眞化人シンカビトの事についてはランに話す形でいいかな?」


「ルーン旅団長にだけ、ですか? お婆様にも伝えない?」


「うん。あの眞化人シンカビト、結構やばかったから、そんなものが裏の山の中にいるとか迂闊に村に広まっちゃったら動揺が広がっちゃうと思うんだよね。ランが大丈夫そうだって思ったら、ネイプさん越しに、村に話が通るんじゃないかな」


「そうですね、それでいいと思います。……ただ」


「ただ?」


「先ほどのイツカの戦いの事を、村のみんなに話してあげられないのが残念です。みんなまだ、勇者様のお力を信用してないみたいだから……」


「あはは、まぁ、それでも昨日の夜のことで、少しは打ち解けてくれたけどね」


「聞きました。パルティスとヴァイス副団長の指相撲勝負、私も見たかったです!」


「まー、雨降って地固まるの典型だったなー……あたしの真上の雨、結構な土砂降りだったけどね……」


 そんなことを言って笑い合うあたしたち。


「はー……でもみんな心配してるかなー。ランとか怒ってるかなー」


「ルーン旅団長さんは割と平然としてましたけど、ヴァイス副騎士団長さんはそれこそ自害しかねない勢いでショック受けてました……」


「責任感強いからな、ヴァイスさん。申し訳ないことをした……」


「でもルーン旅団長が耳元で何か囁いたら、急に大人しくなったんですよ」


「……ナニソレ? 何言ったか聞こえた?」


「いえ、さすがにそれはあんまりお行儀良くないですから……」


「そりゃそうだよね、詮索失礼」


「いえいえ」


 とまぁ、20分も歩いて戻った頃だろうか?

 やっとファバロ側の防御壁の門が見えてくる。


 と、そこにいたのは。


「……あれ? サット?」


 マキュリの呟きで良く目を凝らすと、門の辺りに人がいるのが見えた。

 眼鏡姿、それは確かにサットだった。でもなんか落ち着かない雰囲気みたいだけど……?


「サットー!」


「え? ……あ、マキュリ! 勇者様も一緒か! 良かった見つかって!」


「ごめんなさい、心配かけちゃって。……どうしたの?」


「ああ……パルティスを見かけなかった?」


「え?」


 あたしとマキュリは顔を見合わせる。


「見なかったけど……パルティスがどうかしたの?」


「さっきっから見当たらないんだ。この大事な時に……どこへ……」


「大事な、時? 何かあったの?」


「……眞性異形ゼノグロシアに、動きがあった。村が大きく包囲されてる……!」


「えっ!?」


「こっちの方にも回り込まれてないか、パルティスと一緒に見に来たんだけど」


「それは大丈夫だと思うよ。下山してる間に眞性異形ゼノグロシアは見てないから」


「そっか……ならまぁ、一安心か……」


 サットは胸をなでおろす。


 『他の物』は見たけど、それはここで言うべきかどうか。

 いや、やっぱりここはちょっと様子をみて――


「……いててて……おう、いたな、サット」


 と、山の木々を抜けて、大柄な男性がこちらに歩いてきた。


「パルティス! いたな、じゃないよ、どこ行ってたのさ!」


「見回りに決まってんだろ? お前こそどこ行ってたんだよ」


「パルティスをずっと探してたよ! 全く……ついでに僕も見回りをしてたけど、こっちはどうやら大丈夫そうだって」


 サットがあたしたちに顔を向けてきたので、マキュリが頷いてみせる。

 ……ただ、あたしはちょっと別のことが気になっていた。


「パルティス……胸をさっきから押さえてるけど、どうかした?」


「あ? ……ああ、いや、その……まぁちょっとぶつけただけだ、気にするなよ」


「……そっか」


 2m近い巨体。胸に怪我。


 あたしがさっきの眞化人シンカビトを最後に蹴り上げたのも、あいつの胸だ。

 偶然、だろうか?


 でもパルティスの肌の色は――日に焼けて土色に見えなくもないけど、アレとは違う気がするし、胸から肩も多分、そんなに盛り上がっては見えない、気が……。


 いや、でも、さっきの眞化人シンカビト、なんか普通の眞性異形ゼノグロシアよりゼノグリッターの盛り上がりが小さくて、服の上からじゃその盛り上がった部分が見えないんじゃないかな……?

 なんかカマかけて聞いてみるか……?


「で、状況はどうだ?」


「とりあえず勇者様と一緒に正門に戻ろう。ルーン旅団長たちがいるから、そう簡単に攻め落とされたりはしないと思うけど」


「ああ、ジルバもいるからよ。そう簡単に抜かれたりはしねぇだろうさ」


「うん。じゃ、行こう」


 聞きそびれた。

 まぁ……多分取り越し苦労って奴だと思う。


 ひとまず、あたし達もパルティスたちと正門側の防御壁に向かった。




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