第49話 「マキュリって巫女さんの割に」
「でも、勇者様が女の子で良かったっていうの、もう一つ理由があって」
「うん」
マキュリのおかげで少し気を取り直したあたしは、マキュリと一緒に村の中心へと戻る。
……その道すがら。
「もしも勇者様が男性だったら、私、こんな風に話せてないと思います」
「そりゃそうだよね。でもこの世界の人にしてみれば、また男の勇者が降臨! の方がしっくり来てたんじゃない?」
「うん。実際、女の子って聞いて私含め村のみんな、びっくりしてたから」
「ね。性別違うって、時々めんどくさい気持ち入っちゃったりするよね。男の子でカッコよかったりしたら、憧れだけで済まなくなったりもしちゃうかもしんないし」
「あ、あはは……そ、それはさすがに大それた考えかなー」
ちょっと顔が赤くなりつつも、そんな話も成立しちゃうマキュリ。
なんていうか、さっきので少し砕けて、ホント話しやすい。
学校の帰りみたいな錯覚すらする。
「……さっきも言ったけど、マキュリって巫女さんの割に結構アクティブだよね。マキュリだけじゃなくて、村の人もみんなそんな感じ?」
「うーん、私は結構、村の中でも異色かもしれないなー。私は巫女の修行のためにハインヴェリオン王国に2年ぐらいいた時期があって、先輩の方で比較的オープンな方がいらっしゃいまして。そこでちょっと染まっちゃったトコありますから」
「王国にいたってことは、都会デビュー、みたいな? ……あ、いや、ここが田舎とかそういうこと言いたいんじゃなくて」
「あはは、オビアスは田舎ですよ。村として結構閉鎖的だし。大人たちの反応見ててもお分かりになったんじゃないですか?」
「まぁ……確かにちょっとまとまってヒソヒソとか、それっぽかったかもしんない」
「ね。割と物分かりがいい方なのは、やっぱり私たちと年が近いパルティスとサットぐらいかな。後で紹介しますね」
年上で少し話が分かる人がいるなら、それはそれでありがたい。
もう、村の大人の人たちには、相当マイナスなイメージがこびりついちゃってるはずだから、そういうのちょっとでもなくなればなーと。
でも、『あのお婆さん』はそう簡単に変わってくれないと思うけど。
「はぁ、でも結構怒鳴られちゃったなー。マキュリのお婆ちゃんすごいね。迫力がドーンって」
「あ、はい。お婆様の事は、ごめんなさい……。お婆様は自分の話をさえぎられるのが大嫌いな方なんです」
「あ、そうなの?」
「はい。だからそれをするだけで、その人のことあっという間にキライになってしまうことも少なくないですから」
「そっか。あたしバッツリ切っちゃったよね、村長さんの話」
村の人たちの血の気が引いた顔も見たけど、なるほど、そういう事か。
「ね。お婆様は、自分の言葉にとても大きな自信を持っていて、それでいて、とても責任感の強い方です。そして村はお婆様がいるから今の村の形を作っていられる。ちょっと怖いですけど、そんなお婆様を私は尊敬してるんですよ」
「怖いけど、しっかりしたお婆ちゃんっていうのは分かる」
怖いけどって話で同調したあたしたちは、ちょっと笑い合ってしまう。
本当に統治に大切な権力なんて、そういう人にしかついてこないだろうしね。
ただ、それが逆に、村に閉塞感を生んでいる部分はあるかもしれない。
うまく村が回っているなら、それはそれでいいんだろうけど……。