表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/102

第40話 「気になる事はあるのですが!」

 そんな行程を経ての、更に翌日。


「そろそろ到着致しますな」


 先頭を行くヴァイスさん。

 後ろのあたしたちに声をかけるけど、そんな状況なのに、イマイチ声にこの二日でよく感じられた張りがない。村が近づくと、逆にそれは顕著になった。


「……うぅぅむ……」


 なんか唸ってる。


「どうかしたんですか?」


「……ああ、いえ、大したことでは! 勇者殿のお気を煩わせるほどの事では……」


「じゃ、聞かなくていいわよ、イツカ」


「え」


 この二日で大分ランの、ヴァイスさんの扱いが雑になりつつあった。


「ああ、いや! 気になる事はあるのですが!」


 ……。まぁ、少々ウザいかもしんない。


「ヴァイスさん、あんまり畏まんないで下さいよ。ヴァイスさんが言いたいことあるなら、あたしも聞きたいですし」


「なんと……勇者殿にお話を聞いて頂けるとは、このジルバ・ヴァイス、感無量……」


「この先ずっとそれやるなら、溜息吐くたびに後ろから矢で射掛けるわよ?」


 そう言って弓に手をかけるラン。


「あ、いえ! そ、それでは……!」


 慌てたように気を取り直して、ヴァイスさんは語り始める。


「早馬が、帰ってこないのです」


「……早馬? 早馬って、伝令、とかですよね?」


「はい。この経路を女王陛下、騎士団長とラン殿が決めた際、目的地に入念な準備をするよう伝えるための早馬を騎士団から送っているのです」


「準備ってなんです?」


「まぁ、勇者殿の到来に際して守りを固めたり、目的の威啓律ヴァーチュー・因子アーカイブスに対して、先んじて儀式を施したりですな」


「あー、なるほど」


 ちなみに、そんな伝令を送って目的地がばれないかって心配を一瞬したんだけど、どうもフェイクの伝令もいくつか周囲の防衛力のある村に走らせてるから、容易には推測できないってことらしい。まぁ、これは後で聞いた話。


「勇者殿のお迎えのための、宴を催す準備を考えたい村もあろうかと存じますし」


「ぇ……。……宴とか、嬉しいんですけど、そんな大層な事してもらわなくても……」


「まぁ、少しは慣れたほうがいいわね。待ち焦がれた勇者の到来だもの。この先どこへ行ってもそんな歓待受けること、一度や二度じゃ利かないでしょうから」


「ぅぃー……」


 あたしの返事を聞いて、背中でランが苦笑いしたらしかった。


「でも……確かに、城からまっすぐにオビアス村に向かっているから、帰ってくる早馬には出会うはずよね」


「どっかで道草食ってるとかー!」


 元気よくリロが言う。


「いえいえ、そのような事は! ……実は早馬の任を買って出たのは、わが親友のゴルト・オールと言う者なのです」


「あ、お友達が、伝令役に?」


「ええ。私に負けず劣らずの騎士の誇りを持った男、このような雑事でも、勇者様のためならと勇んで出かけました。あの真面目一本気な男がおかしな寄り道とはどうにも考えづらく……こうして我々が向かっているのに、出会わないことが気がかりになったのです」


 ヴァイスさんが首をかしげる。

 この人が真面目一本気とか言うんだから、そのゴルトさんという人も中々の人なんだろう……。


「とりあえず村でそのあたりの話も聞いてみる必要があるわね。大丈夫だとは思うけど」


「……けど?」


「その騎士の方、オビアス村に辿り着いていない可能性もあるかもしれない」


「ぁ……!」


「なんと、そのようなっ……!?」


 ヴァイスさんが目を剥くが、口元に手を置いて、目をランから背けていく。


「い、いや、しかし……! それも、可能性というならば、ないとは……! くっ……無事でいてくれ、ゴルト……!」


 唐突に友達の心配を始めてしまうヴァイスさん。

 そんなの考えちゃったら気になるよね。あたしたちも早くその人の安否が知りたい。


 先頭のヴァイスさんの馬が少し早足になる。

 それも当然と、あたしたちもペースを合わせて着いていく。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ