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第1話 「竜種級の……『眞性異形』……!」


 ……事態は『控えめに言って最悪』。


 少なくとも10日近くもかけて踏破して、やっとたどり着いたこの場所に踏み出した最初の一歩がこれとは先が思いやられるってハナシ。


『GuuuuuuuuuuuuuuRuuuuuuuuuuAaaaaaaaaaaaaaaa!!!』


 空気がビリビリと振動するほどの咆哮。


 それを放つのは――


「こいつっ……どう見ても竜種級って奴だよね……っ!」


 長い旅路の果て、初めての邂逅ではあったけど、正直見間違えようがないその姿。


 およそ20mはあろうという見上げるような四足の怪物は、土煙の中から長い首をもたげてぐるりと周囲に視線を巡らす。そしてゆっくりとあたしの姿を捉えると、グルルルっ、と喉を鳴らした。


 深いグリーンの体表の、翼のある姿は、あたしもよく知ってる伝説の生物。

 ゲームやらアニメやらで、あまりにもお馴染みなアレ。……大体想像してもらったもので間違いはないと思う。日本とか中国の胴の長い蛇みたいなヤツじゃなくて、西洋の物語に代表される、トカゲ型のアレだ。


 ただ。


 違うのはその頭部だろう。


 大きく開く、ギザギザの歯の並んだ口はあるけど、目らしきものはない。

 鼻先から後頭部を経て、背中の真ん中あたりまでを……鈍く、そして歪に輝く紫の鉱物が、目の部位であろう場所まで含めて大きく覆ってる。


 ツルンとしたその鉱石を体の表面に出現させているのが、こいつらの最大の特徴。



「竜種級の……『眞性異形ゼノグロシア』……!」



 ……それがこいつらの総称だ。

 目下、この世界に住む人々の最大級の驚異――『眞性異形ゼノグロシア』。


 あたしの冒険は、この驚異を終わらせるためにある。

 そのために、『この世界に落ちてきて』7か月と言う時間をかけて世界を巡って戦いを繰り返し、こうしてこの複雑に入り組んだ山の迷宮を登り切って、この地へとやってきたんだ。


 ……ちらりと背後を見る。


 そこにそびえ立つは、あたし達の戦いの終点――魔王城。

 その禍々しさを湛えて空へと伸びる『邪悪』としか形容の出来ない――あたし的に言えばステレオタイプの魔王の居城に、あたしは僅かに安堵した。



 あたしの最後の目的たる存在は、どうやら斬る事を躊躇わずに済む存在らしいという事に。



 ……視線を戻――


「……っ……!?」


『GoooooooooURuuuuuuaaaaaaaaaaaaa!!!』


 開かれていた眞性異形ゼノグロシアの口が更に大きく開き、首をもたげている。

 そして……一気にその首で頭部を突き出し……あたしに食いつきっ……!


「……うぁっ!」


 即座に反応して、バック転で大きく回避。

 あたしの今の今までいた場所の地面を、眞性異形ゼノグロシアが齧り、削る。


 その様を見る限り、まともに食いつかれたらあたしなんか一瞬で丸呑みだ。

 デカいって事はそれだけで十分に脅威――


「……SiiiiiAaaaaaaaaaa!!!!」


「……いっ!?」


 一瞬の油断の隙をついて、再び竜の顎門あぎとが迫る……!


 いや、ホントに油断した。

 元々長い首だけど、それを目一杯伸ばし切って、それ以上伸びないと思ってたのに……ヘビみたいにその首が更に伸びて、あたしへと……!


「……ぜあああぁぁぁっ!!」


 我ながら――今度はよく反応できたと思うけど――超リアクションで右足を、無理やり横から振り切る……!


「……くぅっ……!!」


 あたしの足の甲が、めっちゃかったい竜の額を捕らえ――


「……ふぅぁぁあああっ!!」


 その質量差がありすぎるから蹴り飛ばせはしなかったけど、振り切った反動で、あたしは自分の体を大きく横っ飛びさせる……!


 がちんっ! とその竜の口が閉まるのを横目で冷や汗をかきながら見つめつつ、その長く伸ばされた首の横を回転しながら滑空して……!


「……つっうっ……!!」


 地面を一度転がりながら、辛うじて着地して地を滑る……!


『GoooooRoooUAaaaaaaaaaaa!!!』


「……まずっ!?」


 早いっ……!


 顔を上げた所で……既に竜はその重々しい頭をこちらに向けて……


『Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!』


 ……食らい付――!


「……しぃぃぃぃばらぁぁくぅぅぁぁぁあああああっ!!!」


「っ……!?」


 その雄たけびと共に、あたし達の右真横から突撃してくる黒い……ううん、白銀の影。


「づぁぁあああああああああっ!!!」


 大きくも、低くて重い金属音が響く。


 それはその重甲冑が、肩から竜の鱗と激突して生まれた音。

 眞性異形ゼノグロシアの頭部が弾け飛ぶ……!


『GaaaaaaaaaaaRuAaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!??』


 巨大な槌にぶん殴られたかのように、眞性異形ゼノグロシアは大きく左横にその巨体を傾けた。

 ……頭部の鉱石が僅かに砕け、キラキラと周囲に飛び散る。


「無事かぁっ! イツカぁっ!?」


「ジルバっ! 助かったよ、ありがとっ!」


 あたし達は互いの名前を読んで状況を共有する。



 ハインヴェリオン王国スタリット騎士団副団長、ジルバ・ヴァイス。


 怪力無双の重装騎士。中身は比較的細マッチョな方だと思う。

 この長い旅の間に大きな活躍をいくつも成した事で、騎士の中の騎士と呼ばれるようになった。


 実際立ち回りもけじめも一級品の騎士ってのは分かる気がする。……ちょっと頭は固いトコあるけど。

 でも間違いなく、あたしの旅の、頼れる仲間の一人だ。



 しかし、ジルバのその重い、重いはずの一撃でも、頭を吹き飛ばしただけじゃ、竜の全体重を吹き飛ばすには至らず……!


「あっ……!?」


『GoooooooooooooooooAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!』


 即座に体を捻って右の前足を振り上げる眞性異形ゼノグロシア……!

 それこそ巨大な槌のような前足で、うるさいハエを払うかのように、目の前の敵を薙ぎ払い……!!


「……どおおおおああああああっ!!?」


 再び、低い金属音。

 その時には黒い影――それは竜の太い太い前足――が、あたしの眼前をかすめるように凄まじいスピードで通り過ぎていた。


 それを目で追うと、視線の先では大柄な体が宙を舞っていて……!


「……ジルバっ!!」


 そのまま白銀のそれは、豪快に、弾みもせずに地面に叩き付けられて、重甲冑ごと体を沈めてしまう……。


「っ……!」


 ……血の気が引いた。


 あまりに巨大な相手だと、何気なく手を振っただけであの一撃になる事。


 強烈と言う言葉が陳腐に聞こえるぐらいの、人の想像を遥かに超える威力は――っていうかあたしの世界基準で想像していいなら、多分トラックぐらい易々と吹き飛ばすぐらいの力はあったと思う。


 ……そんなのを食らったら、いくらジルバでも……!


「……ジルバぁっ!!」




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