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第26話 「……名前……覚えててくれたんだし……」

「あ……プル、パ?」


「……」


 と、そこにいた女の子――プルパは、ばつが悪そうにそっぽを向いてしまう。


「……どうしたの?」


「……名前……覚えててくれたんだし……」


「……え」


 ……よく見れば顔がちょっと赤い。

 名前覚えてただけで、嬉しかったって事なのかな?


「もちろんだよ、プルパ」


「あぅ……」


 頬の紅潮が強くなる。

 困り顔のどんぐり眼で、ぶーたれたような顔がこの子のデフォみたいだけど、そのせいで逆に赤くなったらとってもかわいく見えた。


「……そうだ、体、大丈夫?」


 あたしはフードを目深にかぶったプルパの体をしげしげと見る。


 確か、プルパはその体を、あの巨像に砕かれてしまっていたはずだけど、そんな事があった後にも拘らず、二日しか経っていないこの状況でもしっかりその二つの足で立っていた。


「心配ないんだし……プルパは『複合生屍アンデッド・アッセンブル』なんだし……」


「アンデッド……アッセンブル?」


「心配なら……だ……だっこ、してみれば……いいんだし……」


 躊躇いながらそう言ってあたしに手を広げるプルパ。


「え」


「立ったまんまの抱っこじゃダメなんだし……ちゃんとしゃがんで、リロも抱っこできるようにならないとダメなんだし……」


「う……うむ……」


 あたしは言われるがまま、その場に屈むと、ゆっくりと手を広げたまま歩いてくるプルパを、抱き留めるように抱っこする。


「あー、プルパばっかりずるーいっ!」


「順番……なんだし……」


「ん……んん?」


 小さな女の子らしく柔らかい――ような気が一瞬したのに、しっかりと抱きしめてみると、どうにもごつごつした所があちこちにある。


 特にそれでふにゃふにゃな感じはないから、折れた骨はプルパの言う通り、もう折れたのが直ったんだろうけど……ってか……。


「あたしが触ってるのって、コレ……」


 プルパの背中に回した、あたしの右手が触るプルパの右の二の腕。

 それは、全くぷにぷにしておらず、異常に細くて……!


「むしろ骨そのものでは……!?」


「当たり、だし……」


 あたしからちょっとだけ離れて、ローブの右腕を捲ったプルパ。


「……ぅきゃああああああああ!!」


 ほぼ眼前ぐらいの場所でその右腕を見て、変な悲鳴を上げるあたし。


 あたしが触っていたプルパの二の腕は、完全に骨だけの状態で、その先とつながっていた。

 その残った肘から先も、所どころ内側の肉がむき出しになっていたり、骨が見えたりしている。

 ……緑がかったり紫色に変色している所は……腐敗してるんじゃ……?


「プルパの体は……どこも大体こんな感じなんだし……」


 薄く微笑むプルパのその顔は、してやったりと言う、いたずらっ子のような顔にも見えた。


「ご、ごめん……変な声上げちゃった……」


「いいんだし。普通の人間がこんなの見て驚かないはずがないんだし」


 包帯に巻かれた左目をさすっているが、確かそこも眼球がむき出しになってたっけ。

 正にプルパは、異世界ならではキャラだな……。


「お腹周りは、完全に剥き出しだし……背骨見えちゃってるんだし……」


「うぉ……想像したくない……」


「でも、おっぱいとか股間とかは割と完全に残ってるんだし……」


「はぁ」


「えっちな部分ばっかり残っちゃってるんだし……」


「困り顔で言われましても……」


 そのえっちな部分で……何をするというつもりか……。


「プルパは色んなアンデッドの特徴を持っているの」


「……アンデッドの、特徴」


「そう。ゾンビはもちろん」


「『ゾンビ』と『もちろん』と言う言葉がつながる日が来るとは思わなかった」


「スケルトン、ワイト、マミー、ヴァンパイア。この辺りの不死者の基本的な要素や性質は、その体に全て籠められているわね」


 知ってるアンデッド、オンパレードだな。


「その回復力が……プルパの体を維持してるんだし……簡単には死なないんだし……」


「そう、なんだ……」


「ちなみに、腐敗防止の魔法がかかってるから……匂わないんだし……」


「……。確かに……腐臭はしないね、あちこち変色してるみたいだけど」


 ううむ、それでいいのかと言われれば、あたし基準では首を傾げるところなんだけどね……。


「プルパは……職業は魔法使いになるのかな?」


「……使ってる力からすると、そうなるんだし」


「強力な魔術師よ。その理由は、プルパの体の、もう一つの特徴によるのよね」


「もう一つ?」


 アンデッドの混ぜこぜでも十分だと思うのに、まだあるか。


「プルパは、『魔王炉』と亜空間を経て繋がっているの」


「『魔王』……炉?」


「強大な魔力が常に練られている魔王の城にあると言われる入れ物よ。その魔力を使った魔法はこの世界のどんな魔術師も及ばない。……そういう意味では、プルパはリッチの特徴も持っていると言えるかもしれないわね」


「……凄いんだ」


「でも制御できないと、脳を魔力に乗っ取られちゃうんだし……小出しに使うんだし……」


「ああ、それが……」


 一昨日の戦いで起きた、プルパの異常ってわけね。


「うん……アレはごめん、だし……」


「大丈夫。あたしこそ、魔王様のタリスマン? だっけ? 壊しちゃってごめん……あの、直せる物ならあたしが……!」


「大丈夫なんだし。……まだお手玉できるほど持ってるんだし」


 プルパが懐から出した宝玉3つで、言葉通りお手玉を始めたり。


「そ、そうなんだ。良かった……」


 と僅かに安堵しつつ、そこまで話して、あたしは少し別の事へ考えをシフトさせる。

 色々聞きたい事があったはずだ。


 まずは……。




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